J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2013年10月号

ここから始める!ポジティブメンタルヘルス 第6回 マネジメントでの対策: 管理者教育に組み込むマネジメント・コンピテンシー

依然として悩ましい職場のメンタルヘルス問題。“未然防止”が重要になる今、人事部門がどう考え方を見直し、動けばいいかを、すぐ使える具体的なツールも含めて紹介する連載です。

難波 克行(なんば かつゆき)氏
中外製薬 人事部エンプロイーサポートグループ/統括産業医
1974年生まれ。岡山大学医学部、大学院卒業。2004年から富士ゼロックスの専属産業医、2008年から中外製薬の統括産業医として勤務。東京大学大学院客員研究員、医学博士。著書に『現場対応型 メンタルヘルス不調者 復職支援マニュアル』(レクシスネクシス・ジャパン)、『職場のメンタルヘルス入門』(日経文庫)がある。

TOMH研究会とは?
2009年に発足した、「東京大学Occupational Mental Health」研究会。研究と実践領域の専門家が集まる。鍵となるテーマを検討・追究し、研究と実践の橋渡しを通じて、働く人全てのメンタルヘルス向上と、専門職のレベルアップに役立つノウハウの蓄積を行う。

[イラスト]=NLshop/shutterstock.com

いきいきした職場づくりと上司のマネジメントは不可分

今月も上司の行動について取り上げます。健康的でいきいきした職場をつくるための最も重要なキーパーソンは「上司」だからです。先月号でも取り上げた通り、上司のマネジメントスタイルが職場の雰囲気や部下の行動にも影響し、職場内のいじめやハラスメントにも関連があることがわかっています。また、職場で日常的に発生するさまざまな問題に対し、上司が適切なマネジメントを行わないでいると、問題が長期化・悪化し、メンタルヘルスやハラスメントなどに関し、深刻な事態が生じる可能性があります(図表1)。しかし逆に、適切なマネジメントが行われれば、問題の長期化や深刻化を防ぐことができるかもしれません。では、職場のさまざまな問題を防ぎ、職場をいきいきと活性化するためには、上司はどのようなマネジメントを行えばよいのでしょうか。また、そのようなマネジメントを促すために、会社はどのような施策を行えばよいのでしょうか。考え方と具体策をいくつかご紹介します。

健康いきいき職場をつくるマネジメント・コンピテンシー

英国の安全衛生庁(HSE)では、職場のストレス対策やメンタルヘルス対策の一環として、上司の行動が部下に与える影響に着目した研究を行っています。その活動の中で、職場のストレスマネジメントのために必要な上司のコンピテンシー(行動特性)が特定され、4つの領域で、合計12の項目にまとめられています(図表2)。以下に解説しましょう。

領域1.誠実さ、気分のコントロール、思いやり

○部下に対して誠実である職場をいきいきと保つ上司は、いくら部下が年下であっても、担当業務の経験が少なくても、相手を一人の人間として尊重し、親愛の念を持って接します。また、部下の前では、職業人として良い見本やロールモデルであろうと努めます。部下に対して誠実で正直に接し、業務の指示を含め、一貫した話し方をします。つまり、言うことをコロコロ変えたりしないということです。部下を含め、他人の陰口や悪口も決して口にしません。

○部下の前で落ち着きを保てる職場のストレスマネジメントができる上司は、締め切り前や期末などのプレッシャーを感じる状況でも、気分や態度を一定に保ち、落ち着いて行動します。あわてたりパニックになったりせず、部下にストレスやイライラをぶつけたりもしません。また、他人からの指摘や改善提案を、自分への批判や皮肉と解釈せずに冷静に受け入れます。

○思慮深いマネジメント部下には、先々の計画を前もって立てられるように、現実的な締め切りを設定して仕事を割り振ります。また、部下にポジティブなフィードバックを行い、やる気や自発的な行動を促します。仕事を丸投げにしたりせず、必要な時は問題解決にかかわります。かといって、仕事の手順などについて自分のやり方は押しつけません。部下のワークライフバランスにも理解を示します。

領域2.業務のマネジメント

○計画的なマネジメント仕事の目的をはっきりと伝え、仕事の行動計画を立てさせます。定期的に部下の業務量などを把握し、仕事を最後まで見届けます。仕事の手順を見直し改善するとともに、部下にも進捗状況の把握や業務手順の改善を行うよう勧めます。先々の仕事にも優先順位をつけて取り組み、問題になりそうなことがあれば、前もって手を打っておきます。チームが忙しくて余裕がない時には、追加の仕事をむやみに引き受けないよう調整します。

○問題の解決業務上の問題が発生したら、チームの上司として状況を把握し、速やかに対応し、責任を持って決断。そして合理的な解決を行います。

○仕事のアサイン部下に仕事をアサインする時は、適切な指導・助言を行いながら、業務遂行に必要な責任や権限を与え、部下に仕事を任せるようにします。部下に相談された時には、適切に判断したり決断したりします。部下が積極的に仕事にかかわれるよう、十分な情報や指示を与えたりします。また、定期的なチームミーティングを開き、組織の中で何が起きているかを常にメンバーに伝えるようにします。

領域3.難しい問題のマネジメント

○コンフリクトに対処する職場を「健康いきいき職場」に保つことができる上司は、職場でコンフリクト(意見や利害の不一致から生じるさまざまな問題)が生じたら、それを仲裁し、対話を通じて協調的に解決しようとします。どちらかに肩入れしたりせず、客観的な公平な態度で解決に当たります。対立を恐れて先送りにしたり、なあなあにしたりせず、議論や口論がエスカレートしないうちに問題を解決します。

○組織の資源を活用する

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