J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2013年10月号

グローバル調査レポート 第2回 アジア・アセアン各国の人事課題の現状

あらゆる業種でグローバル化への対応が迫られる中、アジアに展開する企業にとっても、リーダーシップを発揮できる人材の確保は急務だが、なかなか良い方策が打ち出せていないのが現状だ。そこで、アジア各国から見えてきた人事課題について、さまざまな観点から比較・調査したレポートを紹介する。

阿部 英太(あべ ひでた)氏
ヘイ・コンサルティング・グループ コンサルタント
海外のコンサルタントと日々協業し、主に国内外の大手企業を中心としたグローバル人事制度導入プロジェクトを手掛ける。専門はコンフリクト・マネジメント。

1.アジアへの投資熱と企業内「南南協力」の広がり

日本企業の海外展開への熱意は、2008年のリーマンショック以前よりも明らかに高まっている。特に過去10年を見ると、2002年末から2007年末の5年間に比べ、2007年末から2012年末までの5年間のほうが、アジア諸国への日本からの直接投資が伸びている(図表1)。リーマンショックによる世界経済の冷え込みによって、日本企業も少なからず打撃を受けたはずだが、それにもかかわらず、アジアへの投資熱はむしろ高まっているのだ。しかし、国ごとの投資意欲には差がある。対タイやマレーシアは、投資の伸びがほぼ一定であるのに対し、シンガポール、インドネシア、インド、ベトナムへの投資が加速している。複数のアジア諸国に事業展開をする日本企業の中でも、展開する国ごとに戦略上の位置づけを明確に定義し、その特徴に応じた投資を行うことが当然となりつつある。ここ最近、企業のグローバル人事担当者と話をすると、「ベトナムに対するタイの戦略的な役割はこうだ」といったように、各展開拠点間で責任や役割分担が明確になされているケースをよく聞く。その背景には、アジア各国の拠点への日本からの支援の限界がある。アジアといっても、その対象国は広い。本稿で触れるタイ、インドネシア、ベトナム、マレーシア、シンガポール、ミャンマー、中国、インドだけでも、それぞれの置かれた状況や経済状況が全く違う。これら進出国ごとのニーズに、日本だけで対応するのは非現実的であるため、比較的早く進出した拠点がその経験やノウハウを活かし、後発拠点に対して支援を行うような協力関係が進展していった。開発援助領域では、途上国の中で、「ある分野において開発の進んだ国が、別の途上国の開発を支援する(中略)一分野で進んだ途上国同士が援助をし合う※1」、いわゆる「南南協力」が有効な援助手段として広まっているが、これと同様に、日本企業のアジア拠点の間でも、企業内での「南南協力」が広まっているのだ。

2.国ごとに大きく異なる人事・組織面での課題

ここで、人事・組織面でのアジア各国の課題についても触れたい。社内の担当コンサルタントへのヒアリングを通じ、よく聞かれる課題を挙げた。

●タイ:日本企業は、仕組みとして人材を育成する施策を打たず、特定の人材に長い期間頼る傾向がある(そして、後継者危機に直面する企業がこの数年のうちに急速に拡大する)。●インドネシア:採用・リテンション(人材定着)は継続的な課題であったが、近年の経済好調の影響で、ますます難しい課題となっている。転職することで収入が増えるという考えがあるため、現在の高い離職率は低下しない見通し。●ベトナム:平均年齢が30歳以下と圧倒的に若く、管理職が務まる人材の採用・リテンションが困難。●マレーシア:サービス産業の雇用増加、および外国人労働者の雇用規制強化に伴い、スタッフ・ワーカーレベルの確保が難しくなっている。●シンガポール:地域統括の役割が求められるケースが増加しているが、そのノウハウ・経験を有している人材が少なく、適正人材の採用が難しい。●ミャンマー:報酬などの人事情報が体系的に集計されていないため、近隣企業との情報交換の段階。●中国:日系企業では、中国における実力主義の報酬体系への不適合が発生している。「離職率は常に抑えるべきだ」といった本社や現地幹部の「低離職率」信奉が、コア人材の流出や組織の不活性化を導いている。ローカルスタッフの問題解決力や、駐在員のマネジメント力育成のニーズが高まる。●インド:日本企業に関しては、事業や組織の規模が小さい企業が多いので、制度を通じたマネジメントが難しい。よってマネジャー個々の力量が重要なポイントになることに加え、求める人材の設定におけるミスが多い。

各国の社会状況が人事・組織課題にも色濃く表れているのである。たとえば、タイでは日本と同様、将来的な高齢少子化の懸念がある一方、ベトナムの年齡中央値は28.7歳※2(タイは35.1歳。ちなみに日本は45.8歳)であり、進出企業は若くしてマネジャー職に就いた人材の経験不足を気にしている。人を扱う人事・組織領域は、このような社会状況や文化などに大きく依存するため、課題への対処に本社ができることはおのずと限られる。したがって、本社主導の中央集権的な人事・組織マネジメントよりも、「現場」に近い拠点間の「南南協力」が活用されているのではないかと考えられる。

3.リーダーシップスタイルの違いへの理解が求められる

リーダーシップについてはどうか。国ごとの違いはあるのだろうか。結論から述べれば、各国ごとの平均的なリーダーシップの特徴はある。

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