J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2013年11月号

グローバル調査レポート 第3 回“日本人らしい”グローバル・リーダー育成のススメPDI Ninth House A KORN/FERRY COMPANY

第3回のテーマは、「日本人グローバル・リーダー育成」についてである。元PDIジャパンの社長として10年にも及ぶ日本人リーダーの育成経験を持つケイ・L・コッター氏は、「グローバル・リーダーシップには実はスタンダードがあるが、日本ではあまり教育されていない」と語る。事実、諸外国とのリーダーシップを比べた調査結果を見ると、日本人リーダーの課題が浮かび上がる。では、どうしたらいいのか。コッター氏がデータとともに、具体策を述べる。

ケイ・L・コッター(Kay L. Cotter)氏
イリノイ工科大学で産業組織心理学博士号取得。1990 年パーソネル・ディシジョンズ・インターナショナル(現PDI NinthHouse, A KORN/FERRY COMPANY)入社。アセスメント部門を率い、世界各地で同サービスの拡大に貢献。2003年、PDIジャパン代表取締役社長に就任。2013年、本社のヴァイス・プレジデント&プリンシパル・コンサルタントに就任。
www.pdinh.jp

1“日本人らしい”グローバル・リーダーとは

グローバル・リーダーと聞いて、どんな人物を思い浮かべるだろうか? 自信に満ち溢れ、リーダーシップを力強く発揮しながら組織の成長を牽引する多国籍企業のCEOたちであろうか?

確かに、グローバル企業の経営層に優れたグローバル・リーダーが多数活躍しているのは事実である。しかし、だからといって日本人を欧米的なグローバル・リーダーに育成するという考えは全くナンセンスである。大事なことは、海外の優秀な人材と張り合おうとするのではなく、日本人の良さを活かし、“日本人らしい”価値を提供しながら求められる成果を出すことではないだろうか? 日本人は日本の文化で、欧米人は欧米の文化で強みを発揮できるように育てられてきた。特に日本は、さまざまな点において他国とは異なるユニークで特別な文化を有する国である。文化の違いを乗り越えるのは容易ではない。私自身、日本においてその違いを経験しているのでよくわかる。

ただ、“日本人らしい”といっても、前提としてグローバル・リーダーシップのスタンダードを身につけておくことは必須である。これは全世界共通のスキルであり、どの国のリーダーも学んでいる基本事項である。ところが、私が見聞きする限り、日本人リーダーはこれを学ぶ機会に恵まれていないようである。自社のトップ人材を海外に送り込みながらも成功できなかったりするのは、この要因が大きいといえよう。

そこで本稿では、異文化において成果を達成する必要のある日本人リーダーを対象に、グローバル・リーダーとして身につけるべき基本要素の一端を紹介したい。

2欧米との比較でわかる日本人リーダーの強みと課題

まずは、現状の日本人リーダーの強みと課題を示しておきたい。私たちPDI Ninth House(以下PDI NH)は世界中で年間何千人ものリーダーに対してアセスメントを実施している。蓄積されたデータの中から日本と欧米のリーダーのアセスメント結果を抽出し、コンピテンシー(行動特性)ごとの平均点を比較した(図表1)。

ここで示された日本人リーダーの強みは、「オープンなコミュニケーションを促す」である。私が接してきた日本人リーダーも総じて傾聴スキルに優れており、私も大いに学ばされた。いわゆる“根回し”などインフォーマルなものも含め、コミュニケーションを重視し、少数意見にも耳を傾けようとする傾向がある。これには、民主的なプロセスを通じて人々を一定の方向に導いていくという強みがある。しかしその一方で、自分の考えだけでは意思決定することをためらう、あるいはスピードが遅くなりがちになるという、ドラスティックな変化を導くうえではマイナス面も包含しうることには注意が必要である。

この他の日本人リーダーの強みとしては、「適応性を示す」「部下を育成する」「部下を動機づける」「人間関係を構築する」などの対人スキルがあり、欧米のリーダーと同等かそれ以上の能力があるという結果が示されている。

3グローバル基準と異なる日本人の力点の置き方

その他のコンピテンシーを見ると、日本人リーダーがさらに飛躍するための課題が示唆されている。

特に「創造的に思考する」「現実的な計画を立案する」という点では欧米と比べて大きな差が生じてしまっている。他にも「信頼を築く」「顧客のニーズに応える」「戦略的に行動する」「業務遂行を管理する」「意欲を示し率先して取り組む」「財務データを活用する」「チームワークを築く」という、主に結果志向や思考系のスキルに課題が見られる。

これらの中で、これまで日本人の得意分野とされてきたコンピテンシーですら欧米のリーダーよりも低くなっているのはなぜなのだろうか? 大きな要因としては、日本人が重視するポイントがグローバル基準と合致していないということが考えられる。たとえばチームワークでいえば、日本では個人の弱みを組織でカバーするといった集団的なアプローチの意味合いが強いように思うが、欧米では、一人ひとりが違う仕事をしながらも、全体として大きな成果を達成するための目線合わせや協働関係の構築が重要視される。顧客ニーズの追求に関しても、商品やサービスの品質や精緻さを極めることではなく、いかに顧客とそのニーズを理解し、バランスよく対応するかに力点を置くのがグローバル基準なのである。

また、結果志向については、特に声を大にして申し上げたい。日本企業は人に業務をアサインしても期待される成果を本人にきちんと伝えないことが多いようだ。また、日本人リーダーは上から下りてきた業務は責任を持ってやり遂げるが、結果やその影響に対して責任を負うことを極端に避ける傾向がある。さらに、プロセスを大事にし、ディテールにこだわるものの、結果についてシビアに評価することが少ない。どんなにデータをきれいに整理した資料を準備しても、“So what? ”の視点が欠けていては価値がないように、結果やインパクトを問われない仕事に意味はない。結果志向については、すぐにでも改善すべきである。

4グローバル・リーダー育成のフレームワーク

それでは、日本人がグローバル・リーダーとしてのスタンダードを身につけるためには何が重要であろうか?私たちは、①「グローバル・リーダーシップ・コンピテンシー」、②「異文化アジリティ」、③「アダプティブ・マネジメント」という3つの視点から捉える必要があると考えている(図表2)

①グローバル・リーダーシップ・コンピテンシー

コンピテンシーとは、リーダーシップを効果的に発揮するうえで必要となる行動スタイルを定義したものだ。その理解と実践はあらゆる能力開発施策の基盤となる。そのため、日本人リーダーは先に挙げた苦手分野等について、すぐにでも行動スタイルを変更することが望ましい。

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