CASE2 キリンホールディングス 企業だけが選ぶ採用から、学生からも選ばれる採用へ 人による面接の課題を「AI面接官」で解消 AI導入が創出した時間で候補者との対話を強化 木俣大樹氏 キリンホールディングス 人財戦略部 人財開発担当 採用担当
「AI が面接をする」と聞くと、機械的に応募者をふるいにかけるイメージを抱くかもしれない。
しかし、キリンホールディングスが2026年卒の新卒採用から導入した「AI 面接官」は、候補者の可能性を公正に見極めると同時に、候補者との対話に向き合う時間を生み出すためのものだ。企業が選ぶだけでなく、学生からも選ばれる採用へ―
そうした同社の取り組みを、人財戦略部の木俣大樹氏に聞いた。
[取材・文]=増田忠英 [写真]=キリンホールディングス提供
多角的な評価の難しさと面接官ごとのブレが課題に
キリンホールディングスでは、技術系・事務系合わせて10コース以上のコース別で新卒採用を行っている。その背景を、同社人財戦略部の木俣大樹氏はこう説明する。
「市場や世界の動きが目まぐるしく変わっていくなかでイノベーションを生み出し続けるには、社員一人ひとりが専門性を高め、多様性を持つことが重要だと考えています。そこで新卒からコース別で採用し、若いうちから専門性を高められる環境を整えています。そのうえで、同じ専門性のなかでも複数のロールを経験したり、複数の事業会社や事業領域に携わったりすることで幅広い経験を積み、多様性を高めながら成長してほしいと考えています。コースによって求められる能力スキルや特性は異なりますが、キリンホールディングス全体として将来のグループ経営人財候補に求める人財像は共通しています」

採用の選考フローはコースごとに異なるが、書類選考、一次面接、二次面接、最終面接の4段階が多くのコースに共通するパターンだ。このうち、一次面接に2026年卒の新卒採用から導入されているのがAI面接官である(図1)。
学生が記入したエントリーシートの内容を踏まえてAIが一人ひとりと面接を行い、従来より多角的な評価軸で候補者を分析し、その結果を選考の判断材料としている。AI面接は、おおむねすべてのコースに導入されている。
AI面接官導入の背景には、人が行う面接ならではの課題があったという。
「多様な人財を採用するために多角的な評価をしてきましたが、限られた面接時間のなかで人が判断できる評価項目には、どうしても限界がありました。また、人が面接する以上、面接官ごとに一定のブレ幅が生じてしまうという課題もありました」
こうした課題の解決策として選ばれたのがAI面接官だった。AIなら、限られた時間のなかでも人より多くの評価項目を客観的に見ることができ、しかも一律の基準で判断するため、面接官ごとのブレも生じない。こうしたAIならではの強みと、これまで人が培ってきた評価基準を掛け合わせることで、これまで以上に多様な人財採用の精度向上につなげたい―― それが、AI面接官導入の出発点だったという。
検証と調整を繰り返し評価ロジックの精度を高める
評価ロジックの土台となったのは、経済産業省が提唱する「社会人基礎力」だ。「前に踏み出す力」「考え抜く力」「チームで働く力」という3つの能力(12の能力要素)から構成される、職場や地域社会で多様な人々と仕事をしていくために必要な基礎的な力である。

