OPINION3 入社や活躍につながるAI活用 採用は心を動かすことから始まる AI時代に見直したい採用の本質 名古屋 考平氏 フォワード 代表取締役社長
名古屋 考平氏
候補者のもとには、今日も多くのスカウトメールが届いている。そのなかで候補者に読み飛ばされる文面と、思わず返信したくなる文面の差はどこにあるのか。生成AI を使えば文章作成の手間は減らせるが、候補者の心に響き、納得感のある言葉までが即時に自動的に生まれるわけではない。AI を使って優秀人材の心を動かし、さらに入社後の成果につなげるには何が必要なのか。生成AI で採用支援を行うフォワード代表取締役社長の名古屋考平氏に、採用とその後の定着や活躍につながるAI 活用のポイントを聞いた。
[取材・文]=村上 敬 [写真]=フォワード提供
AI採用がうまくいく会社といかない会社の決定的な違い
ひと口に採用領域といっても様々な業務がある。求人票作成から書類選考、候補者選定、配信、日程調整、関係構築、面接、クロージング……。それぞれのプロセスでAIを活用する余地はあるが、なかでも向いているのは関係構築より前のプロセスだ。名古屋考平氏は次のように解説する。
「採用担当の業務負荷を分解すると、多くの企業は実際に候補者と会う前までのプロセス、つまり母集団形成に全体の8割近い時間を費やしています。これらの業務の負担が大きいため、外注する企業も少なくありません。ただ、外に出せるということは比較的定型的な業務だということ。定型的な業務はもともと自動化しやすいですが、生成AIの登場によって、採用業務のなかで多くを占める文章―― 求人票、スカウト文、候補者へのメール、オファーレターなど―― の作成が自動化できるようになった。これによる業務効率化の効果は大きい」
ただ、採用業務が効率化されても、自社に合う人を採れなければ意味がない。実際に名古屋氏が率いるフォワードにも「効率化したい」という相談より、「良い人が見つからない」「良い人を見つけても選考プロセスに進まない」といった相談が寄せられることが多いそうだ。
AI活用の成果が業務負担軽減のみにとどまっている企業と、AI活用を採用業務の質の向上につなげている企業には、どのような差があるのか。AIの使い方に違いがあるのかと思いきや、原因はその前の段階にあるという。
「AI以前に、そもそもどうやれば良い採用ができるかを考えることが大切です。どのような採用チャネルで採るのか。候補者に伝えたいメッセージは何なのか。これらはAIに関係なく検討すべきことですが、それらを曖昧にしたままAIを当てても効果は限定的です。AIはあくまでもツールにすぎません。まずは自社の採用の基本的な方針や考えを明確にして、そこにAIを適用していくことを意識した方がいい」
たとえば採用チャネルや媒体の選び方もそうだ。採用チャネルは、大きく4つに分類できる。マスに広く届ける「広告媒体」、狙った母集団に向けて接点をつくれる「スカウト」、採用担当の負担が少ない「転職エージェント」、受動的だがコンテンツを通して魅力を直接伝えられる「自社メディア」だ。
「近年はスカウトを採用チャネルの中心にしている企業が多いです。ただ、チャネルは採用の難易度と緊急度に応じて適切に使い分ける必要があります。採用市場に多く出ている人材を採りたいなら求人広告で目的は達せられますし、様々な条件があって採用の難易度が高い人材がほしいなら転職エージェントも効果的です。AIに聞く前に、まずは自社が今回の採用活動で優先すべきものを決めるべきです」
「驚き」が候補者の心を動かす
生成AIに投げかける前に人間の側で方針や考えを決めるべき理由は他にもある。生成AIは最適なチャネルや媒体を検討するといった壁打ちにも使えるが、もっとも出番が多いのは文章作成だ。ただ、単に文章を生成することと、人の心を動かす文章を生成することは別である。採用は「候補者の心を動かす営み」といえるが、生成AIの仕組みは人の心を動かすことと相性が良くないのだ。
「生成AIは、この言葉ならその次はこの言葉が続く可能性が高いというルールで文章を生成していきます。いわば中央値を出力する仕組みです。それゆえ短くて漠然としたプロンプトで問いかけると、『それはそうだよね』というありきたりの出力になりがちです」

