おわりに 「開示元年」を未来につなげるために必要なこと
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情報開示はスタートにすぎない
「なぜいま、人的資本経営を取り上げるのか」。率直にそう感じた読者もいるかもしれない。上場企業約4,000社を対象に、有価証券報告書における人的資本情報の開示が義務化されたのは今年3月。つまり、今年3月に決算を迎えた全体の約6割の上場企業は、6月までに有価証券報告書を提出済み。いまは、五里霧中のなか、「義務化されて初めての情報開示」を乗り切ったばかりのタイミングである。
だが当然ながら、開示は目的ではなく、目的を達成するための手段にすぎない。開示を通じて、人的資本経営の取り組みを改善、充実させ、企業として在りたい姿に近づくことが目的のはずだ。とはいえ、初めての開示の義務化を前にして、開示そのものが目的化していた企業は少なくないのではないか。
そこで、改めて人的資本経営の意義、そして今回の開示をスタートとし、改善につなげるために大切なことを考えてみたい。