J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2014年09月号

ID designer Yoshiko が行く 第87回 カギは「3つの壁」。引力あるプレゼンのコツ

寺田 佳子(てらだ よしこ)氏
ジェイ・キャスト執行役員、IDコンサルティング代表取締役、日本イーラーニングコンソーシアム理事、IT人材育成事業者協議会理事、eLP(eラーニングプロフェッショナル)研修委員会委員長、熊本大学大学院教授システム学講師、JICA‒NETIDSeminar講師、ASTD(米国人材開発機構)会員。著書に『学ぶ気・やる気を育てる技術』(日本能率協会マネジメントセンター)など。http://yoshiko.teradalive.net

ある大学の工学部2年生に、「プレゼンテーション」の講義を始めた。「ロボットの設計に熱中している、あのいかにもシャイな若者たちに、プレゼンの講義ですか?」と戸惑ったが、指導教授としては「黙々といいモノを作るんだから、そのいいモノと、それを作った自分を、もっとアピールできるようになってほしいんだよねぇ」という親心らしい。

どうやら、「お、も、て、な、し♪」でオリンピック招致を勝ち取った、あのファッショナブルなプレゼンが教授のアタマから離れないらしい。「お手元の資料をご覧くださいませ型」プレゼンでもなく、「パワーポイントのアニメーションってすごいでしょ型」プレゼンでもなく、プレゼンター本人が魅力的に見えて、聴き手がその人のファンになってしまうような「引力のあるプレゼン」のコツを教えてほしい、とまことにハードルの高いご所望である。

しかし、日本人のプレゼン下手には定評がある。よく言えば「慎み深くて謙虚」、正直に言えば「感情表現に乏しく何を考えているのかわからない」というのがグローバルな評価である。説明する前に「空気」を読んで物事を進めるのが「デキる人材」という思い込みと、「黙っていてもよいモノは売れる」という「モノづくり信仰」から、改めてプレゼンしなくてもなんとかなってきた歴史のせいかもしれない。

しかし、今や「空気」を読むだけではダメで、「モノづくりのプロは、モノの魅力を語るプロでもあるべきだ」と言われる時代。だから、ここらでひとつプレゼン力を、という教授の想いなのである。

 3つの壁をクリア

せよというわけで講義を始めると、シャイな彼らを「引力のあるプレゼンター」に変身させるには、3つの大きな壁があることに気がついた。

まず最初にして最大の壁は「恐怖の壁」。緊張した面持ちの学生に、「プレゼンの学習は筋トレと一緒!アタマを鍛え、表情筋を鍛え、声帯を鍛え、全身を鍛えなければ、身につきませーん!」と気合を入れてもシーン。「質問は?」といってもシーン。これはなかなか手ごわいぞ……と思っていたら、1人がこうつぶやいた。

「この講義を受けたら、みんなの前でプレゼンしなくちゃいけないのかなぁ?」「はぁ!?」

「泳ぐためには、まず水に入らなくてはならない」(デール・カーネギー)の名言通り、プレゼンするには人前に立たねばならない。だが、そもそもそれが恥ずかしい、怖いという人が多い。「欠伸と緊張は伝染する」と言われるが、プレゼンターが恐怖で緊張すると、聴く側も緊張し、会場はなんとも居心地の悪い空気に包まれてしまう。

この気まずい「恐怖の壁」、どうしたら壊すことができるのか。そこで学生に「プレゼンが怖い」理由を聴くと、「話すことを忘れるのが怖い」「上手く話せないのが怖い」「質問に応えられないのが怖い」など、なんと「話し方」に関することばかりなのだ。

しかし、アメリカの心理学者アルバート・メラビアンによれば、「聴き手が注目しているのは、ボディランゲージが55%、口調が38%、内容はわずか7%」。つまりプレゼンターが話すことよりも、どんな表情や動作、声なのかに興味があるのだ。

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