J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2014年03月号

CASE.2 ソフトバンクグループ 社内認定制度にまで! 熱い想いを持つ社員と人事が二人三脚で内製化に取り組む

ソフトバンク(本社:東京都港区)では、人材育成を目的とした企業内大学ソフトバンクユニバーシティの半分の研修を内製化。社内講師認定制度も設け、年齢・職種を問わず多彩な講師が活躍している。なぜ内製化に成功できたのか。理由を探った。(同社の研修内製化については本誌2013年7月号TOPICにも掲載。)

     源田 泰之 氏 人事本部 人材開発部 部長    武田 健佑 氏 人事本部 人材開発部 人材開発2課 課長

ソフトバンク
1981年設立。インターネットを事業基盤に、ソフトバンクモバイル、ソフトバンクBB、ソフトバンクテレコム、ヤフーをはじめ約1,300社のグループ企業を有する純粋持株会社。経営理念である「情報革命で人々を幸せに」をもとに事業を進め、2010年に発表した新30年ビジョンでは「300年成長する企業」をスローガンに掲げた。
資本金:2,387億7,200万円、連結売上高:3兆3,783億円(2013年3月期)、社員数:187名、連結:2万4,598名(2013年3月現在)

[取材・文]=熊谷 満 [写真]=本誌編集部

●背景能力ある社内人材を活かせないか

「その時の光景が忘れられない」。現・人事本部 人材開発部長の源田泰之氏は、営業の第一線から人事に異動となった後、企業内大学ソフトバンクユニバーシティ(SBU)のリーダーシップ研修を担当した。依頼したのは著名な外部講師。しかし、目の当たりにしたのは「リーダーシップが講師ご本人から全く感じられない」という驚きの事実だった。「リーダーシップのない方がリーダーシップを教えられるのだろうか。そんな素朴な疑問を持ちました。もちろん、名選手は必ずしも名監督にあらずで、教えることと実践することは違うのかもしれません。しかしいずれにせよ、あれが研修内製化のきっかけになりました」

では、リーダーシップのある人間はどこにいるかと考えた時、「自分の周りにいる。また、約2万人を有するグループにはさまざまな能力を持つ人材が在籍している。彼らの経験とノウハウを伝えることができれば、今まで以上に内容の濃い研修になるのではないか」── 源田氏のこの着想が研修内製化の第一歩となった。

当時、ソフトバンクでは研修をほぼ全て外部に委託していたため、源田氏たちにとっても研修は「受けるもの」であり、「するもの」ではなかった。全くの手探り状態だったが、それでもとにかくやってみようと、源田氏は人事の仲間と一緒に研修を開発してみることにした。ノウハウがない最初のうちは、外部ベンダーの力も少し借りた。最初につくったのは「プレゼンテーション研修」である。ソフトバンク社内には、ビジュアル等を駆使して相手を惹きつける独特の“プレゼン文化”が存在する。まずはそれをノウハウ化することにしたのだ。開発に携わり、講師役にもなった人材開発部課長の武田健佑氏は「本当に受講者が集まるのか、満足してもらえるのか。不安はすごく大きかった」と振り返る。研修初日は緊張しながらの登壇だったが、フタを開けてみると大成功。受講者アンケートにも好意的な声が圧倒的に多かった。それを追い風に、2009年から本格的な研修内製化をスタートさせた。

●研修のコンセプトソフトバンクらしさを注入

現在、SBUにおける研修全80コースのうち、およそ半分を内製研修が占め(図1)、キャリアデザインやメンタルヘルスなど、特別な資格や知識が必要なもの以外は外部研修会社に依頼していない。

内製している研修メニューには「目指せ!プレゼンの達人“SB”流プレゼン作成ワークショップ」「発想トレーニング~ideaPicnic」など、いずれも実践的でオリジナリティ溢れるものが多い。ちなみにideaPicnicとは、ある社員が学生時代から行っている発想法のワークショップで、非常に人気があるという。人材開発部では、研修内製化をきっかけに「ソフトバンクらしい研修とは何か」について部内でとことん話し合ったという。その結果、社風を反映した「より実践的で即効性の高い研修」というコンセプトが生まれた。

そこで外部講師もファンドマネジャーや上場企業の副社長といった現役実務家に依頼。彼らによるファイナンス研修やリーダーシップ研修などは極めて実践的な内容となる。「ご自身のこれまでのビジネス経験で、最も葛藤した事例を挙げていただくなど、現場に則した内容をお願いしています。当事者のお話は説得力が違うし、引き込まれますね」(源田氏)現在、内製研修、外部研修共に参加者が増え、満足度も従来の研修より高くなった。「SBU全体が活性化している」と源田氏は手応えを感じている。

●研修のつくり方講師と人事が二人三脚で設計

では実際、どのようにして研修を内製化しているのだろうか。研修内製化を決めた半年後、人材開発部では講師を社内から募集し認定する「ソフトバンクユニバーシティ認定講師(ICI※)制度」を設けた(制度にした理由は後述)。公募は年1回。自由テーマで募集する場合と、専門テーマで募集する場合がある。専門テーマの場合は応募条件(英会話なら海外赴任経験がある等)を設定する。その他、「あなたにこのテーマを」と、人事が直接スカウトする場合もある。応募者には書類選考と面接があり、その後、模擬研修による試験を行い、合格すると晴れて社内講師として認定される。認定後は、登壇に向けて具体的な研修内容の設計や、デリバリースキルのトレーニングが行われる。

同社の場合、研修内容は講師に丸投げするのではなく、人事が一緒になってつくり上げていくのが大きな特徴だ。まず現状の課題と、研修によって得られるゴールイメージを講師と人事が共有する。そこからお互いに話し合いを重ね、実際のワークなどに落とし込んでいく。その間、およそ3カ月。しっかりと時間をかけ、まさに二人三脚で研修をデザインしていく。「少なくとも3回は模擬研修をしてもらい、人事がフィードバックして内容のブラッシュアップを図ります。その過程では、実際に私たち人事が自ら研修をつくり、講師として登壇した経験が生きています」(武田氏)

コーチングなど一般的な研修の場合は、内容が属人的になるのを避けるため、基礎部分を人事側が構成し、それに個々人の経験や事例などをアレンジしてもらっている。人材開発部では今まで蓄積したそうしたノウハウを、2014年1月、『研修デザインの方法』としてまとめ、さらなる共有・浸透を図っている。ただし、せっかくいい研修をつくっても、それを上手に伝えられなければ効果は半減する。社内講師は当然ながら教えるプロではない。「デリバリースキル」が課題となるが、それについてはどうだろうか。

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