J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2014年03月号

OPINION 1 なぜ、今、内製化なのか 研修開発のイニシアチブを人事が握る

この数年、研修を企業で内製化する動きが進んでいる。『研修開発入門』(ダイヤモンド社)を上梓する中原氏は「研修内製化へ向かうのは必然」と話す。その理由と、人材開発部がすべきことを聞いた。

中原 淳(なかはら じゅん)氏
東京大学教育学部卒業、大阪大学大学院人間科学研究科、米国・マサチューセッツ工科大学客員研究員等を経て、2006年より現職。著書に『職場学習論』『経営学習論」(ともに東京大学出版会)など。今春に新刊『研修開発入門』(ダイヤモンド社)、『マネジャー育成を科学する(仮題)』(中央公論新社)など。最近は、Yahoo!個人でのサイトもオープン。

[取材・文]=井上 佐保子 [写真]=株式会社Trinity

──昨今、研修内製化が盛んです。

中原

実は「研修内製化」という言葉自体が少し変なのです。英語にはこれに当たる単語はありません。また、この概念もグローバルな人材開発の観点からは説明しにくいものです。というのも、研修を内製するのは当然のことだからです。

そもそも研修の目的は、競争優位をつくること、組織のコアコンピテンス(中核的知識・技術)を維持・継承することです。競争優位という観点からは、他社とは差別化したコンテンツデリバーが求められます。競合他社も購入可能なパッケージ研修を導入することは論理的矛盾です。組織のコアコンピテンスは、自社や自社の技術のことをよくわかっている自社社員にしかできない、というのは自明です。もちろん、内製化に不向きな研修もあります。しかし、基本は内製です。ところが、不思議なことに日本では、研修による人材育成は比較的軽視される傾向がありました。むしろ研修というと、あまり検討されることなしに「外側から購入すること」が前提になっている場合もありました。これが今、見直されつつあるのだと思います。

──なぜ、「今」なのでしょうか。

中原

一番の理由は、2008年のリーマンショックを端に始まったコストカットだと思います。ただ、これはきっかけに過ぎず、本気で人材育成に取り組むのであれば、先ほど述べたように、早晩、内製化の方向へ行くことになったと思います。やはり自社の知識や専門性に合った研修を自社で開発することが基本ですから。これを後押ししたのが、2000年以降、人材育成に関するさまざまな情報が流通するようになったことでしょう。ファシリテーションやコーチングなど、研修講師だけが持っていた技術や知識がネットなどで入手可能になったことは、内製化の広まりに一役買っていると思います。

──内製化をしやすい背景があったということですね。

中原

くどいようですが、リーマンショックがなかったとしても、日本企業が研修を「競争優位」の源泉をつくる手段として本気で位置づけるのであれば、おのずと、その開発の方向性は内製化だったと思います。内製化が注目されているのには、コスト削減だけではないメリットがあるからです。一番大きいのは「教えることで学ぶ」効果でしょう。後輩指導で先輩社員が成長するのと同じで、現場で活躍する社員が講師として登壇することで、学習する組織としての風土が醸成されていきます。

また、研修を自社で開発することで、部署を越えた人と人とのつながりが生まれる、開発のプロセスを通じて自社への愛着が芽生える、いわゆる組織コミットメントが増す、など組織開発的なメリットもあります。また自社内にあるナレッジや共通言語を伝えることで組織文化が強化される、といった効果も期待できます。

研修内製化=コストゼロではない

──副次的効果も期待できる、と。

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