J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2014年03月号

人材教育 The Movie ~映画でわかる世界と人~ 第18回 『さあ帰ろう、ペダルをこいで』

川西 玲子(かわにし れいこ)氏
1954年生まれ、メディア・エンタメ時評。中央大学大学院法学研究科修士課程修了(政治学修士)。シンクタンク勤務後、企業や自治体などで研修講師を務めつつ、コメンテーターとして活動。著書に『歴史を知ればもっと面白い韓国映画』『映画が語る昭和史』(旧・ランダムハウス講談社)等がある。


『さあ帰ろう、ペダルをこいで』DVD発売中 ¥5,700 税
発売元:エスピーオー
販売元:エスピーオー
国家の歴史に翻弄され離ればなれになった祖父と孫が、失われた記憶と絆を取り戻すため、ドイツから故郷ブルガリアへと自転車で旅をする。第12回ソフィア映画祭最優秀ブルガリア映画賞と観客賞のW受賞に輝く、心温まる物語。
© RFF INTERNATIONAL, PALLAS FILM, INFORG STUDIO, VERTIGO / EMOTIONFILM and DAKAR, 2008 All rights Reserved

明治維新以降、日本はヨーロッパを手本にして近代化への道を歩んできた。戦後日本は、アメリカ文化の圧倒的な影響下で経済発展したが、それでも70年代までは、ヨーロッパに学ぼうという気持ちがあった。ヨーロッパ言語の学習者も多かった。だが今や日本人にとって、欧米とはアメリカのことでしかない。外国語と言えば英語である。もはやヨーロッパは、日本にとってあまり意味のない地域なのか。私はそうは思わない。むしろ日本人は今こそ、ヨーロッパの動向に関心を寄せる必要があると思う。日本は今さまざまな点で、ヨーロッパに近づいているように見えるからだ。世界に先駆けて近代化と経済成長を成し遂げたヨーロッパは、労働力不足や高齢化、若者の就労対策など、日本が直面している問題にずっと以前から悩まされてきた。NHKや経済誌などが、「アジアの時代だ」「アジアで勝て」と繰り返すのも、日本がアジアで唯一、ヨーロッパ化しているからではないだろうか。だがそのことは必ずしも、衰退を意味するものではない。『さあ帰ろう、ペダルをこいで』は、表現といい俳優たちの多様な顔といい、まさに汎ヨーロッパ的な、メイド・イン・EUの映画だ。統合に向けた長年の努力の賜物であり、EUが新しい文化を生み出していることがうかがえる。共通の文明的土台を持ちながら、新しい文化どころか、政治的対話すら途絶えている東アジアの現状を思うと、考えさせられるものがある。

ヨーロッパ 東と西

物語は東西冷戦中、親と共にブルガリアからドイツに亡命した少年の、成長後の話である。青年となった彼は車で帰郷中、交通事故に遭って両親と記憶を一緒に失う。そんな青年を心配した祖父が、迎えに来て故郷に連れ帰り、記憶を取り戻させようとするのである。話はその道中と過去を、行き来しつつ進んでいく。

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