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中原淳教授のGood Teamのつくり方 第16回 特別対談 中原 淳氏×田中 聡氏 「チームワーキング」を科学する!
「チームアップを科学する」というコンセプトからスタートし、日本の様々なチームを取材してきた本連載。
現場の知見を生かしつつ研究を続け、「チームワーキング」という新しい概念にたどり着きました。
ニッポンのチームに必要な「チームワーキング」とは。中原淳教授が立教大学経営学部助教の田中聡氏と語ります。
「どうしたらチームは機能し、成果を上げられるか」。本連載では、様々なチームを訪ね、古くて新しいこの難問について考察してきました。中原淳氏が連載と並行して取り組んできたのが立教大学経営学部データアナリティクスラボでの調査研究「大学初年次教育のリーダーシップ教育の効果性に関する研究プロジェクト」、及びその成果をまとめた書籍『チームワーキング』です。中原氏と共同研究者の田中聡氏に取り組みを振り返っていただきました。
手続きだけではチームは動かない
――連載を始めた経緯は。
中原:
私は2018年に東京大学から現職の立教大学経営学部に、研究室まるごと移籍しました。そこで始めた研究のひとつが、チームについての研究です。すでに本連載でご紹介していますが、同学部には、体験・実践的カリキュラム「BLP(ビジネス・リーダーシップ・プログラム)」というプログラムがあり、学生が少人数チームでリアルなビジネス課題の解決に取り組んでいます。1~4年次まで年間で約200チームが動いている計算です。「この環境を生かし、立教発でチームの研究を進めていければ」ということでプロジェクトがスタートしました。学生の行動や認知面の変化をモニタリングし、プログラムにおけるチームワークのデータを収集、分析するというものです。本誌の連載も、研究の一環として始めました。
――研究からわかったことは。
田中:
チームについての既存のセオリーでは、「チームを動かすには目標を設定し、タスクを洗い出し、活動計画を立て、役割分担することが重要だ」といった「手続き」が重視されます。ですが、我々はチーム活動のプロセス全体を分析し、「手続き」を踏みさえすればチームがうまく機能するわけではない、という結論に至りました。「チームは動き続けるもの、変わり続けるもの」という「動的な視点」を取り入れた概念「チームワーキング」にたどり着いたのです。
中原:
私も連載スタート時には「動的な視点」はもっていなかったんです。当初のコンセプトは「チームアップを科学する」でした。チームの立ち上げについての課題意識からスタートしたのです。途中から「何かが違う」ということになりました。データを子細に見ていけば、集団の声なき声が聞こえてきます。そこで生まれたコンセプトが「チームワーキング」です。
田中:
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プロフィール
立教大学経営学部助教。東京大学大学院学際情報学府博士課程修了。博士(学際情報学)。
インテリジェンスHITO総合研究所リサーチ室長・主任研究員・フェローなどを歴任。
立教大学経営学部教授。立教大学経営学部ビジネス・リーダーシップ・プログラム(BLP)主査、立教大学経営学部リーダーシップ研究所副所長などを兼任。
東京大学教育学部卒業、大阪大学大学院人間科学研究科、メディア教育開発センター、米国・マサチューセッツ工科大学客員研究員、東京大学講師・准教授などを経て、2018年より現職。
著書に『職場学習論』、『経営学習論』(共に東京大学出版会)、『研修開発入門』(ダイヤモンド社)、『マンガでやさしくわかる部下の育て方』(JMAM)など多数。
研究の詳細は、Blog:NAKAHARA-LAB.NET(http://www.nakahara-lab.net/)。Twitter ID : nakaharajun
取材・文/井上 佐保子 写真/松井一真、石山慎治