J.H.倶楽部

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Learning Design 2021年01月刊

私のリーダー論 皆が“事業家”として 挑戦し続ける社風を絶やさない

2022年に創立100周年を迎える東急。
鉄道、商業施設、ホテルなど、その事業範囲は広いが、東京有数の大都市・渋谷を「世界のSHIBUYA」にすべく、大規模再開発を行っていることで知られる。
2018年度からの中期経営計画では、持続可能な成長を目指す基本方針としてサステナブルな「街づくり」「企業づくり」、そして「人づくり」を掲げている。
具体的にはどのような人材育成を行っているのか、髙橋和夫社長に聞いた。

髙橋 和夫(たかはし かずお)氏
東急 取締役社長 社長執行役員

生年月日 1957年3月1日
出身校 一橋大学 法学部
主な経歴
1980年 東京急行電鉄 入社
1991年 東急バス 出向
2009年 東急バス 常務取締役
2010年 東京急行電鉄 執行役員 人事・労政室長
2011年 東京急行電鉄 取締役 執行役員経営管理室長
2016年 東京急行電鉄 取締役 専務執行役員経営企画室長、仙台国際空港 取締役
2018年 東京急行電鉄※ 代表取締役社長 社長執行役員 
※2019年9月2日に「東急」に社名変更
現在に至る

企業プロフィール
東急株式会社
1922年、目黒蒲田電鉄として創業。
1942年東京急行電鉄、2019年東急に社名変更。
「美しい時代へ」をグループスローガンに掲げ、鉄道事業を基盤とした「まちづくり」を事業の根幹に置きながら、様々な領域で事業を展開している。
資本金:1,217億円(2019年3月31日現在)
連結売上高:1兆1,642億円(2020年3月期)
従業員数:1,491名(2020年6月30日現在)

取材・文/村上 敬 写真/山下裕之

グループ全体で雇用を維持し、乗り越える

─コロナ禍で経済も影響を受けています。現在の経営課題を教えてください。

髙橋(和夫氏、以下敬称略)

世間ではコロナ禍が追い風になっている企業が全体の15%、影響がない企業が20%、ダメージを受けている企業が残りの65% と言われています。当社は様々な事業を展開しており、東急ストアのように生活インフラとして地域のお役に立てている事業は好調です。また、インターネット事業も巣ごもり需要を受けて、健闘しています。

一方で、鉄道やホテルなど、人を集合させるような事業は大きな影響を受けています。鉄道は10月時点で前年の75%ほどしかお客様が戻っていませんし、東京の大きなホテルは30%ほどの稼働率です。鉄道は今後もしばらく100%には戻らないでしょう。当社は他社に比べ定期利用の戻りが遅いのですが、テレワークをしている方が他の沿線より多いからではないかという仮説をもっています。

理由はともあれ当面は元に戻らないとすると、ビジネスモデルや事業構造を変えて損益分岐点を下げなくてはいけません。そのための施策を上期中に整理をして、目下着手しています。人件費の圧縮は決して容易ではありませんが、雇用の確保は絶対条件として、たとえばホテルの人材に東急ストアで働いてもらうなど、人材の流動化を図りながらグループ全体での最適化に努めているところです。

─経営環境が激変する時代に求められるのは、どのような人材でしょうか。

髙橋

やはり環境変化にすばやく適応できる人材でしょう。そのためにも生産性の高い働き方が重要だと考えています。生産性の高い働き方に向けては自律性が欠かせません。当社はコロナ禍の前から経営計画の重点施策において「働き方改革」を打ち出し、テレワークを推進するなど、働き方の多様化を推進してきました。

具体的には当社沿線を中心にサテライトオフィスを設けて、2年前でも十数%がテレワークを行っていました。コロナ禍でピークは80%、いまは50%がテレワークですが、今後も状況に応じた柔軟な働き方が選択できる環境を整えていきたいと思います。

コロナ禍で必要なのは「対話する力」

─貴社は、社員に求める実践的な行動として「5つの行動」――考える、すばやく動く、対話する、やり抜く、学習する――を定めています。なかでも髙橋社長が重視しているものはあるでしょうか。

髙橋

特にいまは「対話する」ことです。先ほども述べたとおり、当社ではコロナ禍以前からテレワークを推進するなど働き方改革を進めており、すでに一定程度定着しています。ですが、働く場所や時間、働き方が多様化するとともにコミュニケーションロスが生じやすくなることは事実です。私たち経営層やマネジメント層はそうしたロスが起きないようにチームのメンバーやステークホルダーとの「対話」を大切にしなければなりません。加えて、私自身は必要があるときは対面で会話をする機会を設けるようにしています。直接、指示や方針の意思を伝えることや、逆に社員の声に耳を傾けることで、お互いの肌感を共有することも大切だと考えています。

─髙橋社長は社員の皆さんとは具体的にどのようなコミュニケーションをとっていますか。

髙橋

会社のキーパーソンは課長クラスです。なぜならお客さまにもっとも近い立場にある管理職、実務リーダーだからです。日常の業務で直接的な確認はできないため、コロナ禍前までは課長クラスの社員と定期的にランチミーティングをして意見交換をしていました。いまは食事をとりながら話をすることは難しいので中断していますが、いずれまた再開するつもりです。

その分、最近は部門長クラスやグループ各社のトップと個別に会うようにしています。誰も経験したことのないこのような状況下では、トップ同士のコミュニケーションが薄くなると、それぞれの組織や会社の全体感や一体感が損なわれてしまう可能性があります。皆が同じベクトルに進んでいけるように、個別に丁寧にコミュニケーションをとることを大切にしています。

次世代リーダーは“運転席に座らせて”育てる

─中期経営計画の中のサステナブルな「人づくり」――人材育成についてお聞かせください。まず次世代の経営人材はどのように育成していますか。

髙橋

人材育成のベースはOJTです。画一的なリーダー像は存在せず、一人ひとりが個性を生かして築くものです。また、経営はこういうものだといくら机上で学んでもらっても、実践する場がないと本当の意味で身につきません。当社では、将来の経営を担うことを期待する人材には、比較的早期にグループ会社のトップマネジメントを経験させています。経営に携わりすぐに目覚ましい成果を出せる人は多くはありませんが、その会社の事業や人のことがわかっていくにつれて、自分なりに会社を成長させる方法も見えてくるものです。小さな車でも運転席に座らせる、つまり実際に企業経営に携わり、大きな責任を背負いながら苦労することは、いずれ優れた経営者になるためには不可欠な経験です。

私自身もこれまでに40年間のサラリーマン人生のうち、半分の20年間は関係会社に身を置きました。若いころには若いころなりの、立場が上がればそれ相応の経験を積むことができますし、人それぞれに適切なタイミングがあります。ですから、やはり画一的に制度化するのは良くない。肝要なのは一人ひとりの特性を理解し、より大きな成長につながるような育成ビジョンをもつことでしょう。

─グループ内に多数の会社を擁しているのは、人材育成の観点からも強みになっていますね。

髙橋

そうですね。ただ、グループ各社はそれぞれ自立して事業を展開しています。将来に向けた育成の目的だけで人材を送るのではなく、しっかりと経営ができる人材を送るということが大前提です。

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