J.H.倶楽部

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Learning Design 2020年09月刊

特集│OPINION 1 三菱UFJ リサーチ&コンサルティング With & Postコロナの人材マネジメント 課題と解決に向けて 人事とマネジャーがすべきこととは

2020年6月、三菱UFJ リサーチ&コンサルティングが発表したレポートでは、「コロナ起点の人材マネジメントの課題分類と対応する施策」が整理されている。
マネジャーのマネジメントスタイル転換の方向性と、人材マネジメント課題解決における人事部門の役割や各施策を進めるうえでの注意点とは。執筆者2名に話を聞いた。

三城圭太氏 三菱UFJリサーチ&コンサルティング 組織人事戦略部 チーフコンサルタント
中山尚美氏 ヒューマンキャピタル部 チーフコンサルタント

三菱UFJリサーチ&コンサルティング
三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)のシンクタンク・コンサルティングファーム。
東京・名古屋・大阪を拠点に、民間企業向け各種コンサルティング、グローバル経営サポート、国や地方自治体の政策に関する調査研究・提言、経営情報サービスの提供、企業人材の育成支援、マクロ経済に関する調査研究・提言など、国内外にわたる幅広い事業分野において多様なサービスを展開している。
資本金:20億6,000万円 従業員数:約950名

[取材・文]=田中健一朗・編集部 [写真]=三菱UFJリサーチ&コンサルティング提供

『With&Postコロナの人材マネジメント概論』概略

三菱UFJ リサーチ&コンサルティングは2020年6月、『With&Postコロナの人材マネジメント概論

働き方が大きく変わる中で人事部門が実施すべき3つの取り組み』※というレポートを発表(以下『概論』と略す)。コロナ禍における人材マネジメント上の課題を、①「社員の安全」、②「生産性の維持・向上」、③「基盤強化の維持・最適化」の3区分で整理。そして、それらの施策を着実に行うために人事部門が取り組むべきこととして提言を行っている。

数カ月先の予測すら立てることが困難なWithコロナ時代。同社で『概論』を執筆(4月)・発表(6月)した際と、状況はまた変化した。

そこで本稿では特に「コロナが企業の人材マネジメントに与える具体的な影響」に焦点を当て、執筆を担当した三城圭太氏と中山尚美氏に、ポイント解説と、執筆後の思索や追加提案を聞いた。
https://www.murc.jp/wp-content/uploads/2020/05/cr_200602.pdf

人材マネジメントにコロナが与える具体的な影響

『概論』では、コロナ起点の人材マネジメントの課題分類(先の3区分)に対し「“急場しのぎ”の施策」と、さらに推し進めた「With&Post コロナの施策」を提示している(図1)。

「執筆時点では、コロナ流行が数カ月で収束する見立てもあったため『“急場しのぎ”の施策』がいったん一段落した後で、各企業が『With&Postコロナの施策』に取り組んでいくイメージをもっていました。ただ昨今の感染状況も踏まえると、あるタイミングから一気に『With&Post コロナの施策』に移行するわけではなく、図1左例の施策を継続しながら、企業の課題意識に応じて、図1右例の施策で優先順位の高いものから取り組んでいくイメージに近いと思います。また、コロナ環境下だから取り組むというより、コロナ以前から重要だった人事課題(たとえば、『人が育たない』『人事運用が硬直的である』など)を含めた統合的な取り組みや優先度判断が重要になると認識しています」(三城氏)

また、特に「生産性の維持・向上」を実現するうえでは、経営・人事部門と現場マネジャーがそれぞれの役割分担のなかで責任をもちながら、互いに連携して施策を推進する必要があるという。それぞれの項目について、次のように説明する。

場所・時間にとらわれない柔軟な働き方の実現

柔軟な働き方の実現に向けては、緊急事態宣言中に人事部門主導でテレワークなどの制度やツールを整備した企業が多い。一方、テレワークを前提としたワークスタイルを実現するためには現場のマネジャーの意思や働きかけが不可欠である。

「たとえば、『直接対面で会話をしなければ発言の機微がわからない』、『会社に長時間いた方が成果が上がる』といった思い込みをミドルマネジャーがもち続けていれば、テレワークの積極活用は進みません。特に、マネジャーがそれを成功体験として認識している場合、なおさら根底の意識を変えることは難しいはずです」(三城氏)

パフォーマンス重視の評価・処遇

テレワークにおける評価・処遇については、成果やそれに紐づくプロセスを明瞭に評価する必要性から、人事部門で「ジョブ型」への転換を推進する企業も出てきているが、これも「制度を変更したからといって、すべて解決とはいかない」と三城氏。

「ジョブ型云々という話以前に、リモート環境下では、業務の中心人物となるマネジャーが、メンバーに対して的確なジョブアサインをし、計画的な進捗管理を行うことが重要です。評価をするうえでもこれまで以上に、事実の収集や丁寧なコミュニケーションが求められます。

また、目に見える実績を軸とした評価を志向するのであれば、個々のメンバーの職責に対する期待値設定や、『どうなれば実績が出たといえるか』という評価判断のインディケーター(指標)を明確にする必要があります。そのためには、メンバーを評価するためのデータの蓄積方法・管理方法も人事と現場マネジャーで議論して検討しなければなりません」

新しい働き方に即した組織マネジメントと人材育成

また、テレワークでは、常に机を並べて仕事をすることはできない。当然ながら、人材育成においてはOJTの仕方を含めた「マネジメントスタイルの転換」も求められる。

「テレワーク環境のマネジャーには、目標設定などのプランニングやそのタイムリーな修正、期待値の設定、緻密な分業、仕事の意味づけや、それをメンバーに伝達することが求められます。それには、これまで以上に思考力やワークデザイン力(タスクの分解やメンバーそれぞれの力量にあった最適なアサイン等をする力)が必要になります」(三城氏)

身近にいての指導が難しいテレワークでは、生産性が上がらない人も出てくる。どう対応すればよいのか。

「上司や先輩が丁寧にケアをする必要があるように思われますが、テレワークでは限界がありますので、指導・育成の概念ややり方も今後、変わってくるでしょう。すでに様々なラーニングツールや新技術がありますので、グループウエアやチャットなどをうまく導入・活用し、聞きたいときに聞けたり学べたりできる環境をしくみとして用意すると、状況に即した転換ができていくのではないでしょうか」(中山氏)

人事・人材開発部門、マネジャーがすべきこと

では、刻々と状況が変化するなか、人事・人材開発部門や現場マネジャーが今後、コロナ起点の人材マネジメントの課題解決のために具体的にすべきこととは。『概論』では、人事・人材開発部門がすべきこととして次の3つが提言されている。

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