連載 WAVE 宮崎太陽銀行 CSを切り囗に組織文化を変革 「テイラーメイド・バンキング」を目指す
さまざまな企業でCS (顧客満足:Customer Satisfaction) の重要性が語られ、CS を切り口にした業務改革、組織内の意識改革も数多いが、真のCS に到達するには、トップの推進力と全社を巻き込んだ地道な取り組みが必要だ。宮崎太陽銀行(本店・宮崎市)は、CSを「テイラーメイド・バンキング」という言葉に置き換え、仕組みや業務の革新から個々の行員の意識・行動変容を促す活動として推進させている。お客さま満足を目指し、地元に根ざした新しい銀行の形を模索し始めるものだ。 トップ自ら推進役として旗を振る菊池銑一郎頭取に伺った。
店頭サービスで全国トップに
今年1月、日経金融新聞と日経リサーチが合同で実施した金融機関店頭サービス調査で、並みいる大手銀行や全国の地銀、郵便局を尻目に、宮崎県を基盤とする第二地銀、宮崎太陽銀行が総合でトップに立った。この訓査は、都銀から地銀、証券会社、郵便局などの全金融機関の店頭(窓口)における商品説明や接客姿勢、店内の設備などを抜き打ちで調査し、それを点数化して評価したもの。商品説明や接客姿勢などのお客さま対応ときめ細やかなコンサルテーションセールスの実践が、同行の総合トップにつながった。
今年2月24 日付の日経金融新聞に掲載された金融機関店頭サービス調査の結果を報じる記事は、同行にとってはうれしい驚き。同行の顧客や地元マスコミなどの関心を呼ぶことにもなった。
というのも、同行では2001 年4月から2年間、「改革21 」と呼ばれる経営計画をスタートさせ、その重要な柱として「本物のCS の実現」を掲げ、同年9月には行内にCS 推進室を設置。CS に対する収り組みを本格化させていた。そして、先の調査は、その活動の方向性と成果が評価される結果と受け止められたからでもある。
「CS に対する取り組みは始まったばかりで、まだまだ道半ばです。しかしながら、金融機関店頭サービス調査総合トップは、行員1人ひとりが実践しようとしている当行のCS の取り組みが誤っていない、という確信を深めたと思います」
宮崎太陽銀行の菊池銑一郎頭取は、このように受け止めている。
「テイラーメイド・バンキング」とは何か
CS 、顧客満足度そのものは、漠然とした言葉だ。それは「何かCS なのか」「何を実践することがCS を向FI させるのか」を、主体的に捉え、自らに問うことを前提としなければ、CS を語ることはできない。
菊池頭収は、「『当行にとってのCS の実践とは何か』を突き詰めるなかで生まれたのが『テイラーメイド・バンキング』というコンセプトです」と語る。つまり(どこにでも売っている)既製服を売る衣料品店ではなく、お客さま1人ひとりのニーズや状況に合わせて洋服をつくる町の仕立屋( テイラー)のような銀行になるということである。
いまから10 年前の銀行業界は、例えば、1年ものの定期預金金利に示されるように、全国津々浦々提供するサービスが同じであった。菊池頭取の言葉を借りれば、都銀から地銀まで、どの銀行も「同じ製造元から仕入れた同じ規格の既製服を売っていた」ということになる。
しかし、金融の自由化、規制緩和が進むなかで、銀行自らが独白の金融商品を開発し、顧客に対して、他行と差別化を図れるオリジナル性を訴求できるようになった。これにより、銀行間の競争も、新たな様相を呈するのは、必然の流れでもある。
一方、情報化時代を迎え、顧客の金融知識も豊富になり、金融商品に対するニーズも、それに伴って多様化・複雑化してきた。