連載 新しさは足下にあり 第5 回 世阿弥に学ぶ経営
経営書としても読める「風姿花伝」
古典といわれる書物は、何も教養としてばかり読むものではなく、現実のこの世を突破していくのに必要な知識を授けられる実用書としても有効です。
経営を学ぶにしても、欧米の最先端の経営書も意義あるものではありますが、わが国の古典をじっくり読んで、そのなかから経営の要点をつかみ取ることも大切なことと思います。
なぜなら古典とは、真理が記されたものだからです。
能楽で名高い世阿弥の伝書「風姿花伝」も経営書として読むとなかなか得るところの多い古典です。
世阿弥はこの書物のなかで、能楽の要諦を花を借りて説いているのですが、読みようによっては経営の要諦を説いているとも読めます。
「そもそも花というに万木千草において四季折節に咲くものなれば、その時を得て珍しきゆえに、もてあそぶなり」
花というものの性格は、四季折々の変化のなかでその四季に応じて咲くもので、時の移り変わりを象徴するかのようなものなのだ。
したがってそこに一時心を引きっける珍しさがあるため、人々から愛されているのだ、というのです。
そう言われてみればその通りで、一年中咲き通す花などマンネリになり珍しくも面白くもない。その時の季節にタイミング良くその季節の花が、それもある期間咲くから良いといえます。