新連載 人事徒然草 第1 回 私は成果主義者です… … 『虚妄の成果主義』への反論
某日、拙著のある読者から「私も成果主義者です」という書き出しのメールをいただいた。成果主義の考え方に賛成!
という意味で使っておられるのであるが、無政府主義者(アナーキスト)、共産主義者(コミュニスト)、菜食主義者(ベジタリアン) はあっても、「成果主義者」には違和感がある。哲学でも思想でもない経営システム(英語ではmerit-based pay system と訳している) の提唱に過ぎないのに「主義者」とは呼びにくい。
ところが、成果主義者は存在しなくともアンチ成果主義者は大勢いるようだ。さしずめ『虚妄の成果主義』の著者、高橋伸夫東京大学教授はその代表であろうか?
この本を読むと欲求不満になる。どの成果主義が良い、悪いとあれこれやり出すと結局アンチ・ジャイアンツが、巨人の試合しか見ないように成果主義で紙数が尽きてしまう。「とにかく成果を拠り所にしようとする制度改革のすべてが間違い」と、成果主義についてはいっさい言及しないまま、問答無用で切り捨ててしまう。そして成果主義が登場するのは、業績が悪化し出した企業と無能で将来を展望できないトップの下からである、とまで酷評されると、こちらも“成果主義者”の血が騒ぎ出す。
高橋教授は「話題にしたいのは成果主義ではなく、先達が築き上げてきた日本型年功制の素晴らしさの方なのだ」と断言する。そして「昔のままの年功制でも成果主義よりはましだと思っているが、しいて運用上の改善点をあげれば」として次の3点を例示する。
(高橋教授の主張)