連載 人事徒然草 第3回 Only One か No.1 か?
SMAPの歌う「世界に一つだけの花」(作詞・作曲 槇原敬之) が大ヒットした。
花屋の店先に並んだ花は、このなかでだれが一番だなんて、争うこともしない。
“それなのに 僕ら人間は どうしてこうも比べたがる? 一人ひとり違うのにそのなかで 一番になりたがる? そうさ 僕らは世界に一つだけの花 一人一人違う種を持つ その花を咲かせることだけに 一生懸命になればいい……小さい花や大きな花 一つとして同じものはないから No.1にならなくてもいい もともと特別なOnly one” ※
「いいやろ!じいじ」と神戸に住む中2の孫娘に教えられた。孫たちには自由に生き、僣陛の花を咲かせてもらいたい、と心から願っている。そして、歌がヒットするにはそれなりの時代背景がある。バブル崩壊後の長引く政治・経済の混迷のなか、自分なりの価値観を見出そうとする若者たちのフィーリングにフィットしたのだ。
一生かけてOnly oneを探し出す、自らの個を確立させるというのなら大賛成! ではあるが、数多くあるOnlyoneのなかの一つでいいからNo.l を目指す生き方も残してもらわなければならない。
かつて私たちが生きてきた時代は単純明快であった。とにかく勉強する、勉強してよい大学に入る、大学でよい成績をあげればよい会社に入れる、会社で地道に努力すれば昇進と安定した生活が保証される、と皆信じていた。事実仲問たちも、まあ幸せな部類に入り充実した老後を過ごしている。
それがいま、官庁を含め将来の安定が保証される組織はなくなってしまった。これからの若い人たちに自分だちと同じ夢を見せてやれないことを申し訳なく思う。と同時に古い世代と訣別し逞しく生きようとする世代の誕生を心強く思っている。