連載 ユニオンルネッサンス 第9 回( 最終回) Part 1 法政大学ビジネススクールイノベーションマネジメント研究科教授、同研究科長藤村博之氏に聞く 労働組合は、社会をより良く変えていく 大きな力を持つことを思い起こしてほしい
労働組合という人事サイドとは別の観点から、これからの仕事や働き方のあり様を模索した本連載も、今号で最終回を迎える。 Part 1では、これまでの総括の意味を込めて、企業経営・人事制度に造詣が深く、かつ労働組合とも接点を持つ法政大学ビジネススクール教授の藤村博之氏にご登場いただき、現在の労働組合の現状と将来展望について話をお聞きした。
雇用環境の変化に対応できない労働組合
バブル崩壊後から10 年あまりの間に働く人たちの雇用環境が大きく変化したと言われています。具体的にはどのような変化が起きているとお考えですか。
藤村
最も変化したのは企業の採用計画マす。正社員をマきるだけ抑制し、有期雇用の従業員を増やす方向へと変化しています。もちろん、第一次オイルショツク直後も正社員の採用が抑制されましたが、その後、80 年代に入って日本経済の好転に伴って正社員を増やす方向に戻っていきました。しかし、最近では正社員と非正社員との垣根がどんどん低くなっており、正社員よりも非正社員の方が多い職場も増えるなど、あえて正社員にこだわる必要がないのではないか、との認識が生まれています。
もちろん、正社員と非正社員との間に違いはあります。例えば、何か起きるか予見できない仕事に期間や時間が限定されている非正社員を就業させることは困難ですし、予見不能な仕事、場合によっては就業時間を超えて対応しなければならない仕事は正社員が担つているのが実情です。つまり、正社員と非正社員との間の垣根が低くなる一方で、正社員の負荷が増えているという変化が生まれているのです。
このほかには、正社員の雇用が不安定になっていることがあげられます。従来は、そこそこの大企業に勤めていれば定年まで雇用は確保されると考えられていましたが、いまやそうした考え方は全くの幻想です。最近、企業の不祥事が相次ぎ、不祥事を起こした企業は倒産や事業縮小に追い込まれていますが、そのことによって正社員の雇用も非常に不安定なものになったといえるでしょう。
慟く人の状況が変われば、働く人々で構成される労働組合も変化が求められます。ところが、実際にはなかなか時代対応ができないでいるのが現実です。
藤村
日本の労働組合は正社員を中心に組織化しており、正社員の数が減れば当然、組合員の数も減っていきます。事実、組合の組織率は年々減り続けていますが、こうした事態になっていても非正社員の組織化は進んでいません。
これには、有期雇用の人たちを組織化すると、その人たちの組合員費を低く設定せざるを得ず割が合わない、あるいは雇用形態の違いからなかなか有効な対応策を見出せないなど、いろいろ理由があげられています。
ただ、私から見れば怠慢以外の何物でもないと思います。なぜなら、組合員数の減少は組合の収入減を意味しており、本来であれば組合員費によって生計を立てている専従役員はもっと危機感を強めて対応しなければならないからです。