J.H.倶楽部

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Learning Design 2018年09月刊

連載 中原淳教授のGood Teamのつくり方 第2回 ニューフェースの多様な経験を活かせ!

ある日、チームの7割が「新しい人」になってしまったら?
未経験者ならではの「強み」を活かす“チームアップ作戦”を取材しました。

中原 淳氏 (Jun Nakahara)
立教大学経営学部教授。立教大学経営学部ビジネス・リーダーシップ・プログラム(BLP)主査、立教大学経営学部リーダーシップ研究所副所長などを兼任。東京大学教育学部卒業、大阪大学大学院人間科学研究科、メディア教育開発センター、米国・マサチューセッツ工科大学客員研究員、東京大学講師・准教授などを経て、2018年より現職。
著書に『職場学習論』、『経営学習論』(共に東京大学出版会)、『研修開発入門』(ダ
イヤモンド社)、『駆け出しマネジャーの成長論』(中央公論新社)など多数。
研究の詳細は、Blog:NAKAHARA-LAB.NET(http://www.nakahara-lab.net/)。Twitter ID : nakaharajun

取材・文/井上 佐保子 写真/宇佐見 利明 イラスト/ asuka sachiko

理想の結婚式を実現する異色なチーム

山梨県小淵沢の星野リゾート リゾナーレ八ヶ岳は豊かな自然に囲まれた滞在型高原リゾート施設。高原の景色を楽しめるリゾートウエディングも人気で、最近は新郎新婦や参列者が結婚式前後に滞在する宿泊型ウエディングが増えているそうです。

ここで四季折々の魅力に合ったウエディングのコーディネートと当日の進行を手がけるのが、30名ほどのブライダル部門の担当者。中でも新郎新婦とコミュニケーションをとってニーズを引き出し、イメージ通りのウエディングを実現させるコーディネーターは、カギとなる存在です。

新郎新婦にとって、結婚式は失敗のできない大事なイベント。最近はウエディングに関する情報が氾濫しているためか、要望が二転三転することもあり、コーディネーターには核となるニーズをきっちりかつ細やかに把握するコミュニケーション能力と、イメージを共有するための想像力が必要とされます。また、大きな式ともなれば、社内外50名以上の関係者との連携も大切な仕事です。

現在(2018年5月)、リゾナーレ八ヶ岳でコーディネーター業務にあたっているのは14名。しかし、そのうち9名がバンケットやフロントなど他部署からの異動や転職などで入ってきて半年程の「新しい人たち」。また、以前からいた5名のうち3名も1、2年目で、ベテランは2名しかおらず、なんと「7割超が新人」といいます。おまけに、このチームを率いるディレクター、永田淑子さんも半年前に異動してきたばかり。果たして、永田さんはこの「7割新人チーム」をどのように“チームアップ”しているのでしょうか。

ブライダル予約進行ユニットディレクター永田淑子さんと人事総務担当の目黒雄子さんにお話をうかがいました。

あえて未経験分野にアサインする

中原:

ご自身も含め7割が新しい人という状態では、最初はオペレーションを回していくだけでも大変だと思いますが。

永田:

はい。でも、私自身悲観はしていませんでした。さまざまな経験値があるスタッフがいれば、むしろ面白いことができるかも?! と逆にワクワクしていたのです。

苦労もありましたが、チーム発足時から、「いろんな経験者がいてよかったな」と感じることが多かったです。宿泊担当だったスタッフは、チェックイン後の流れを把握しているので、「お話をするのはこのタイミングがいいですよ」といった投げかけをしてくれましたし。バンケット会場を担当していたスタッフは「この人数ならこちらの会場がいい」などと提案をしてくれます。

中原:

へぇ。皆さん、意外にコミュニケーションはスムーズだったんですね。以前はどんなチームだったんですか?

永田:

私が来る前は、みんなひとりで黙々と自分の業務をこなしていたそうです。ベテラン勢が多かったこともあり、他の人とコミュニケーションをとる必要があまりなかったのですね。ですが、7割が新しい人という今の状況では、何事につけ、話さないと仕事が進まない。相談し合って一つひとつ解決するしかないのですが、そのたびに、多様なスタッフがいることが強みになっていると感じます。

中原:

では、それぞれの経験を活かした役割分担をなさっている?

永田:

そうするとみんな自分の得意分野しか深められないので、担当からあえて外すようにしています。宿泊率を上げる企画を考える担当には、宿泊の経験のある者ではなく、新人スタッフをアサインする、といった具合です。

中原:

なるほど。あえて異業種の人をアサインすることで、分からないことが明確になるうえ、詳しい人に尋ねるようになるからコミュニケーションが生まれる。しかも、明確になったことは、マニュアルに落とし込んでいくことができる。「経験がない」「分からない」も強みとなるんですね!

分からないことを分からないと言える組織

中原:

しかし、分からないことをその都度聞けば、密にコミュニケーションをとらなくてはならず、仕事が滞ることもありそうですが?

永田:

一時的に苦しくなるのはしかたないと思っています。でも、将来的には楽になるし、自分たちが楽になればその分、お客様へのサービスも向上し、いいサイクルが回るよ、という話をメンバーにはしています。

中原:

分からないことを聞きやすくするための工夫などはありますか?

永田:

まず机の上のものを全部なくしました。ファイルが山のように積まれていて、そもそもお互いの顔が見えないという問題がありましたので。

心理的な部分では、メンバー向けの研修に私も参加し、率先して質問しました。「分からないことを聞いてもいい。むしろ、それを隠すことのほうが悪い」という雰囲気をつくりたいな、と。

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