J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2017年11月号

CASE 2 COMPASS 学びの時間効率を上げる! “個人に最適な問題”を処方し続ける AI型学習

私の先生は、人工知能―そんな時代がとうとう現実のものになった。
世界初の人工知能型教材を手掛けるCOMPASSでは、
AI型タブレット教材を使った学習教室を運営する。
現在は小中学生向けの算数・数学を展開中だ。
人が指導するよりも格段に習熟速度が速まるという、その手法を尋ねた。


神野元基氏
CEO

COMPASS
2012 年設立。基礎的な勉強を最速で終わらせ、未来を生き抜く力を学ぶ機会を創出することを目的に、AI 型学習教材『Qubena』の開発、サービス提供を展開する。
資本金:2億6000 万430 円(資金準備金を含む)、従業員数:26名(共に2017年9月26日現在)

[取材・文]=田邉泰子 [写真]=COMPASS 提供、編集部

●概要 AIが最適な問題を選ぶ

中学数学1年分のカリキュラムを、速くてわずか2週間で習得できるプログラムを提供する学習教室があるという。どれだけ指導力の高い講師が揃っているのかと思いきや、カリスマ講師の姿はない。子どもが手にするのは1台のタブレット、授業をナビゲートするのは、AIだった……。

東京都に本社を置くCOMPASSでは、世界で初めての人工知能型教材「Qubena(キュビナ)」を開発、算数・数学の教育サービスを提供している。全国の学習塾や大手予備校が採用している他、私立の学校や一部の公共教育の現場でも補習授業に試験的に導入するなど、注目を集めている教材だ。またCOMPASS自体も直営校「Qubenaアカデミー」でQubenaによる授業を行う。

この教材を開発した同社CEOの神野元基氏は、特徴について次のように語る。

「従来の学習と最も異なるのは、一人ひとりに対し最適化された問題を、常に提供し続けられること。学習のムダが少なく、スピーディーな授業を行えます。講師の指導能力に依拠しない点もユニークなところといえます」

講師のいない授業とは、にわかに想像し難いが、AIを使った学びとは、果たしてどのようなものなのか。同社の例から、最新事情を探ってみた。

●授業の進め方 それぞれのペースで問題を解く

現在Qubenaアカデミーでは、小学4年生~中学3年生を対象に、講座を開く。1コマ50 分の授業が週2回、合計、月に8回の通学が原則だ。教室は土日を除き、夕方から1日につき4コマ開講している。生徒は部活やその他の習い事など自分のスケジュールに合わせ、あらかじめ通学日を予約しておく。個別指導なので、学年を問わずさまざまな子どもたちが、同じクラスに集まる。

教室にやって来た生徒は、席に着くと、かばんからタブレットを取り出す。それぞれアプリを起動し、準備ができた人から問題を解き始めていく。

授業中は実に静かだ。みんなタブレットに表示される問題を黙々と解いていく。易し過ぎもせず、全く歯が立たないわけでもない、手応えのある問題に意識を集中させる。

カリキュラムは、公立の学校でも使われる標準的な教科書に準拠している。だが、どのタイミングでどの学年のカリキュラムに取り組むかは、子どもの習熟度次第だ。そのため、中学生の内容に取り組む小学生もいるという。

問題は一問一答式で、答えは記述式。ミソは解答欄とは別に設けられた、途中式を書くスペースである(図1)。

「解答の内容、解答にかかった時間、解答に至るプロセスといった情報は全てAIが解析する際の貴重な情報源になります。AIは子どもの理解度を測り、次の出題を決めます」

1次方程式で分数の扱いに不安があれば、小学算数の関連単元に戻ることもあるし、慢性的な弱点を狙って出題されることもある。

「“最適な出題”の決め手は、子どもが分かっていないところの把握と難易度の合致にあります。したがって、『ここは問題ない』とAIが判断すれば、スキップする項目もあります」

タイピングは一切必要とせず、タブレットペンで答えを書き込む。作図問題では、画面上に定規やコンパスツールが現れ、紙に作図する時の環境がそのまま再現される。

50分が経過すれば、その日の授業は終了。当日チャレンジした問題の類題が宿題として出る。子どもたちは各自、自分専用のタブレットを使い、解答する。誤答した問題と似たパターンを集中して出すなど、出題内容も個別対応だ。もちろんその処方も、AI が出す。

効果測定には、日本数学検定協会が実施する実用数学技能検定(数検)を用いる。Qubenaアカデミーでは、月に一度試験日を設け、対象となる会員に受験を促す。ちなみに、中学3年生レベルに当たる数検3級の合格率はおよそ8割。学習期間は週2回の通学で2カ月、合格者は当該学年よりも低い中学1、2年生が多く、中には小学生もいるという。

●学習のフォロー ジェネレーターが良き理解者に

未習の単元となれば、さすがに講師の出番だろうと思うかもしれないが、答えはNoだ。子どもたち自身が、それぞれタブレットでアニメーション解説を確認し、演習に移る仕組みである。

ただし、講師の代わりにAIが直接指導するわけではない。解説などのコンテンツは、同社の教材開発部門が制作する。

「AI の役割は、あくまで“最適なコンテンツを判断すること”。我々はその判断に基づいて、子どもたちが理解できる解説をつくります。本人のレベルに合った内容なら、解説を見ても分からない、ということは滅多に起こりません。生講義は必要ないのです」

そのため教室に講師はいないが、学習をバックアップする役割の、「ジェネレーター」が常駐する。生徒の学習状況がリアルに分かる「Qubenaマネージャー」(図2)をチェックしながら、必要に応じて子どもたちをフォローする役割だ。

「Qubenaマネージャーには、学習の進捗や正答率、解答の状況などがリアルタイムに表示されます。問題が表示されてから一定時間が経過しても解答がないといった場合も、アラートを出してくれます。そうした時はジェネレーターが生徒の側に行き、様子を確認します」

ジェネレーターが最も必要とされるのは、「全体の正答率が著しく下がった」「宿題をやらない」など、学習態度に“異変”が感じられた時だ。彼らは子どもたちの話を聞き、異変の要因を探る。大抵は、日々を過ごす中で生じた出来事やストレスが、意欲の低下を引き起こしている。

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