J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2017年05月号

CASE 2 三井住友海上火災保険 “きれいなキャリアシート”は書かせない 43歳、仕事人生のハーフタイムに 自分と向き合う意味

三井住友海上火災保険は、33歳、43歳、50 歳時の社員を対象に、自らのキャリアを考えさせる研修を実施している。
中でも重視しているのが、43歳時に行う2日間のプログラムである。
「社内異業種交流」ともいえるほど多種多様な“同級生”が集い、互いの強み・弱みや今後のキャリアについて深く語り合うことで、仕事をするうえでの気づきや、成長に向けたモチベーションの向上につなげている。


大西康弘氏 人事部 部長(能力開発担当)兼 能力開発チーム長
髙﨑隆浩氏 人事部 能力開発チーム 課長

三井住友海上火災保険
1918 年設立。MS&ADインシュアランスグループの中核事業会社として、「グローバルな保険・金融サービス事業を通じて、安心と安全を提供し、活力ある社会の発展と地球の健やかな未来を支えること」を経営理念に掲げ、世界トップ水準の保険・金融グループの実現に向けた挑戦を続ける。
資本金:1395 億9552 万円、正味収入保険料:1兆5074 億円(2015 年度)、従業員数:1 万4691名(2016 年3月31日現在)

[取材・文]=崎原 誠 [写真]=編集部

●導入の背景 ボリュームゾーンを活性化

三井住友海上火災保険は、今から7年前の2010 年、43歳の総合職を対象としてキャリア研修を導入。自らのキャリアを振り返り、今後の在り方を考えるプログラムである。

その後、多様な社員の役割拡大をめざす全社改革「役割イノベーション」の一環として、人事体系を改定。総合職・一般職という職種区分を廃止し、「全域社員」「地域社員」という、転居転勤の有無以外の差をなくした体系に改めたことを受け、2013 年度から地域社員も対象に加えている。

また、2013 年度から33 歳時、2014年度からは50歳時にもキャリア研修を開始。現在は、入社2年目研修で初期キャリアを考えることから始まり、ほぼ10 年の節目ごとに、自らのキャリアを振り返り、将来について考える機会を設けている。そもそも、同社は、どうして43歳で自らのキャリアを考えさせることにしたのだろうか。

「この層は、当社にとって一番のボリュームゾーンに当たります。ボリュームゾーンの社員に働きがいを感じて活躍してもらわないと、会社は成長しません。50代以降も能力を発揮して活躍してもらうために、モチベーションを高める施策が必要と判断しました」(人事部能力開発チーム課長・髙﨑氏)

2013 年度をピークに研修対象の全域社員は減少に転じたが、今でも合計で約400人が在籍している。

同社で初めてライン長ポストに就くのは、30 代後半~ 40 代初めが標準的だ。43歳は、そういった時機にも重なり、参加者の全域社員のうち、3分の1がライン管理職である。もちろん、それ以降に昇進することもあるが、当然、ポストには限りがある。昇進することだけに価値を求めず、各々の立場で活躍してもらう必要がある。

43歳という年齢には、もう1つ意味がある。22歳で就職して定年後再雇用を含め65歳まで働くと考えると、ちょうど中間地点に当たるのだ。

「“折り返し地点”という捉え方もありますが、引き返すのではなく、新たなところをめざしてもらう必要があります。前半戦を振り返って後半戦に備える、サッカーの“ハーフタイム”のような捉え方です」(髙﨑氏)

●43歳時研修の内容 自らのキャリアを考えさせる

43歳時研修の1回の受講者は100人程度。自身の今後に目を向けさせるプログラムとなっている(図1)。

「この年代は、人を指導する立場になっている人が大勢います。マネジャーであれば自分の組織を見ていますし、そうでなくても誰かを指導していることが多い。普段は自分以外の人のことばかり考えていますので、開講メッセージでは、『この2日間は自分のことだけを考えてください』と話します」(人事部部長〈能力開発担当〉兼能力開発チーム長・大西氏)

初日の前半には、人事制度や退職金・年金などお金の話、自社の人員構成の将来予測などの他、出向制度についても説明する。同社の出向には、戦略的出向と転籍前提出向とがあるが、両方の制度をしっかりと説明する。

「かつては、出向に対して暗いイメージもあったと思いますが、他の職場で働くことは、本人にとってプラスになりますし、当社にとっては、出向先企業等との関係強化を図れるWin-Winの制度です。先輩社員の実例を示し、正しく理解してもらいます」(髙﨑氏)

「管理職になることだけに価値を置いている人や、出向を後ろ向きに捉えている人に、視野を広げてもらいます。実際に転籍前提出向になるのは50 代が中心なので、43歳時点で話をしてもピンと来ない人が多く、伝え方は課題の1つですが、早めに心構えを持たせます」(大西氏)

■社内異業種交流による気づき

初日の後半以降は、キャリアに関する考え方を理解したうえで、自分自身のキャリアについて考えさせる。

「Will 、Can、Must(やりたいこと・できること・やるべきこと)の3つが重なる“ありたい自分”を広げられるよう促します(図2)。また、これまでを振り返ってもらい、自分がどんな時にやる気になるか、モチベーションの源泉に気づいたり、予想される環境変化を踏まえ、その中で自分がどうなっていきたいか考えてもらいます。交流分析も行い自分の強み・弱みにも光を当て、自己理解・他者理解を深めます」(髙﨑氏)

特に重視しているのがグループワークだ。事前課題や個人ワークをしたうえで、受講者同士で互いの考えをシェアする。1グループの人数を5~6人に抑え、全員と深いやり取りができるようにしている。

「グルーピングにもこだわっています。全域社員も地域社員もおり、役職も、ラインの課長から担当までさまざまです。できる限りいろいろな方が、まんべんなく混ざるようにするのです。同じ社内でも、経てきたキャリアは多様ですので、いわば、“社内異業種交流”を体験してもらうためです。管理職なら管理職同士、地域社員なら地域社員同士を組み合わせる方法もありますが、そうすると、考えは深まるものの、視野が広がりません」(髙﨑氏)

さまざまな“同級生”の多様な考え方に触れ、研修の終盤には、どのグループも非常に活性化するという。

「お互いに、仕事上の利害関係がないようにしていることが大きいですね。また、ライン長は地域社員の話を聴き、『部下はこんなことを考えているのか』と思ったり、逆に地域社員は、『自分の上司もこう考えているかも』と思ったりと、さまざまな気づきがあります。『2日間、自分のことだけ考えてください』と言いながら、実は、職場のコミュニケーションや職場づくりのヒントが得られるようになっています」(大西氏)

■想いの花束

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