J.H.倶楽部

無断転載ならびに複製を禁じます。なお内容は取材・掲載当時の情報です。

月刊 人材教育 2017年05月号

人材教育 The Movie ~映画でわかる世界と人~ 第55回 「ぼくたちのムッシュ・ラザール」川西玲子氏 時事・映画評論家

「ぼくたちのムッシュ・ラザール」
2011年 カナダ 監督・脚本:フィリップ・ファラルドー

川西玲子(かわにし れいこ)氏
1954年生まれ、メディア・エンタメ時評。中央大学大学院法学研究科修士課程修了(政治学修士)。シンクタンク勤務後、企業や自治体などで研修講師を務めつつ、コメンテーターとして活動。著書に『映画が語る昭和史』(武田ランダムハウスジャパン)、『戦前外地の高校野球 台湾・朝鮮・満州に花開いた球児たちの夢』(彩流社)等。



『ぼくたちのムッシュ・ラザール』
提供:ニューセレクト/ザジフィルムズ
販売元:アルバトロス 価格:3800 円+税 好評発売中
牛乳当番のため早めに登校した男子児童シモンは、教室で首を吊った女性担任の姿を見てしまう。生徒たちの心のケアと後任探しの対応に追われる学校に、アルジェリア移民のラザールが代用教員として採用される。アカデミー賞外国語映画賞ノミネート、ジニー賞(カナダ版アカデミー賞)主要6部門受賞。
©micro_scope inc.2011 Tous droits reserves

昨年来、シリアを中心とする難民と移民の問題が、世界をにぎわせている。この映画はこれらの問題を、哲学的なテーマを通して間接的に描き、第84回アカデミー賞外国語映画賞の候補作になった。

日本ではこの問題が、他人ごとのように受け止められているように見える。しかし実際には、日本でも水面下で在留外国人数が増え続けている。グローバル化を叫ぶからには、この現実から逃げられないだろう。だが日本はそのノウハウを持っていない。

トランプ大統領が入国制限を出した時、いち早く「受け入れる」と宣言したカナダも、実際にはいろいろな問題を抱えている。この映画は難民問題を、学校を舞台に丁寧に描いたものだ。こういう重層的な脚本が書ける力量には圧倒される。

○傷ついた生徒たちと向き合う

物語はモントリオールの小学校で、担任の若い女性教師が教室で首つり自殺をし、その遺体を生徒が発見するところから始まる。教師が自殺した理由は分からない。その後任が見つからずに困っていたところ、アルジェリアで教師をしていて、永住権を持っているという男性が応募してくる。

その男性バシール・ラザールは、バルザックの小説を題材に書き取りをするような、異色の授業を行う。ケベック州はフランス語圏で、アルジェリアもエリートはフランス語を話す。共にフランスの植民地だったからだ。ラザールは生徒と心を通わせようと尽力するが、生徒たちは担任の自殺で傷ついていた。特に、遺体を見てしまったシモンとアリスは不安定になっていた。

シモンは担任とトラブルを起こしており、それが自殺の原因だったのかもしれないという罪悪感を抱いていた。アリスは母親がパイロットで不在がちであり、胸に悲しみを抱え込んだままでいる。シモンからばかにされているチリ出身の生徒も、祖父を軍事政権下の弾圧で失っていた。

こちらはJ.H.倶楽部会員限定記事です。
ご入会後、続きをお読みいただけます。

残り:704文字

/

全文:1,407文字

【入会・年会費無料】

J.H.倶楽部は人事の仕事に役立つ特典が満載です!

  1. 総数2000本以上の人事の実務に役立つ記事(※)が閲覧可能
    ※専門誌『Learning Design』(旧『人材教育』)の記事
  2. 新サービス・お役立ち情報(調査報告書・ホワイトペーパーなど)の先行案内
  3. 会員限定セミナーへのご招待/講演動画・配布資料の閲覧
  4. 興味関心に沿った必読記事を、メールマガジンでお知らせ!