J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2017年02月号

SPECIAL INTERVIEW 現場起点の“店舗・本部ぐるみ活動” 成功のヒケツとは

福岡トヨペットは福岡県内に約40店舗を構える自動車販売ディーラーである。自動車販売台数が低迷する中、他の多くの自動車販売会社が志向しているように、従来の新車重視の突撃型の「訪問型営業」から、点検・車検などのサービス入庫を軸として顧客に店舗に来てもらう「来店型営業」へと販売スタイルを変革してきた。
また、顧客に愛され続ける会社になるため、「ES」「CS」「業績向上」の3つを実現する会社として、店舗を起点としたさまざまな改革に取り組んでいる。
改革を進める中で、その軸となっているのは“店舗・本部ぐるみ活動”と呼ばれる全員ミーティングと“本部支援担当者”と呼ばれる本社スタッフの存在である。


中尾潤一氏
福岡トヨペット 代表取締役社長

●店舗・本部ぐるみ活動とは

―“店舗・本部ぐるみ活動”とはどのような活動ですか。また、これを始めた背景は?

中尾氏

当社で行っている“店舗・本部ぐるみ活動”とは、各店舗で2週間に1回店舗の店長とスタッフ全員が集まり、店舗が抱えている課題を話し合い、解決策を店舗自らが考え、実行していくためのミーティングです。

もともとこの業界は、上が決めたことをきちんと実行する文化が根強く、販売店はメーカーから言われたことを、販売店の店舗は本部から言われたことを粛々と実行することで成果が上がってきました。

当然ながら当社も、10 年前の社員の意識は、「本部のメンバーが変われば言うことも変わるだろうから、その時言われたことをやっていればいい」という感じでした。

しかし、市場環境が変わり、お客様のニーズや要望が多様化する時代になりました。そのため、現場がそれらに臨機応変に対応していかないと売れませんし、お客様に愛されるお店づくりも難しくなります。

必要な情報は全て現場が持っています。現場が自ら考え実行しなければなりませんが、従来のスタイルのように上が「現場起点で考えろ」などと言っても、現場は変わりません。ですから、スタッフが自ら考え、自分たちで改善していくための仕組みとして、私がトヨタ自動車にいた時から各販売店に支援・導入してきた手法の“店舗・本部ぐるみ活動”を活用しました。

●機能させる3つのポイント

―形としては普通のミーティングのようにも見える“店舗・本部ぐるみ活動”をどのように活用し、機能させていったのでしょうか?

中尾氏

ポイントは3つあります。まず、改革を成功させるために必要なのは、“幹部が一枚岩になる”ことだと考えました。

社長と専務が違う方針を伝えれば、部下は困ります。まずは「この点は絶対にないようにしよう」と当時の社長と何度も話し合って、その他の幹部にも何度も方針を伝え、浸透を図っていきました。

2つめは、サービスと営業のワンフロア化です。来店型総合営業の基本的な考え方として“お客様は店舗全員のお客様である”という意識を持ってもらいたかったのですが、当時、サービス入庫のお客様はサービス部門のスタッフが担当し、新車の商談をご希望のお客様は営業が担当するという意識もあり、サービスと営業の間に高い壁がありました。そのため、事務所のレイアウト変更を行い、サービスと営業のフロアを一緒にして、顔をきちんと合わせることのできる店舗にしました。この改善は費用もかかることなので、店舗のスタッフは幹部や本社が本気なのだと感じてくれたと思います。

3つめとして、導入当初は店舗側にも、①ミーティングの時間が取れるだろうか、②意見が出るのだろうか、③本当に活動を自分たちで進められるだろうか、という不安がありましたので、店舗を支援する役割を担う「本部支援担当者」を設置しました。本部営業部門はもちろんのこと、人事・経理・総務などの社員も含めて、本部の人間が1人1店舗を担当し、必ず“店舗・本部ぐるみ活動”に参加し、店舗の支援を行ったり、相談に乗ることができる体制をつくりました。

また、当時は、本部があまりにも現場が何を考え、何をしているのかを知らなかったため、それを理解することが大切だと思い、ミーティングに必ず参加させるようにしました。

この3つが“店舗・本部ぐるみ活動”を行うための最初の基盤でした。

●推進時の工夫

―この活動の導入について、本部支援担当者、および店舗から抵抗はなかったのでしょうか?

中尾氏

最初は、本部の人間にとっては、自身の業務以外のことが増えるので、不平不満もあったかと思います。しかし幹部が、「店舗ミーティングは何を差し置いても最も重要なことだ」ということを伝えていきました。

また、店舗側は、本部が来ると監視されているというイメージもありました。これは、本部がわざわざ遠方から1時間かけて来るのだからミーティングをやめることができないというプレッシャーにもなり、“店舗・本部ぐるみ活動”の継続につながっています。要するに、本部担当者が、毎回必ず店舗・本部ぐるみ活動に参加することは、意図的に店舗にプレッシャーを与えて本部の本気度を形で見せるという目的もあったのです。

一方で、本部支援担当者には管理という視点ではなく、あくまでも店舗の課題や困りごとをきちんと把握する場であるという意識づけを徹底しています。

本部はコストセンターです。本部のお客さまでもある店舗が、本部の仕事を評価してくれることによってプロフィットセンターにもなりえると思います。現場が困っていることをいち早く察知し、解決に向けた支援をすることが本部の役割なのです。

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