J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2017年02月号

外国人材の心をワシづかみ! 日本発のマネジメント 第9回 THE FIRST 90 DAYS~海外拠点着任後の90日間行動~

世界の人材争奪戦において遅れをとる日本。
打開策は現地の人々のより深い理解、そして日本企業ならではの育成、伝統にある―。
異文化マネジメントに精通する筆者が、ASEANを中心としたグローバル人材にまつわる問題の解決法を解説します。

河谷隆司(かわたに たかし)氏
ダイバーシティ・マネジメント研究所代表取締役。異文化マネジメントコンサルタント。マレーシア16 年半在住。マレーシア戦略国際問題研究所研究員等を経て現職。著書に『WinningTogether at Japanese Companies』他多数。
ネットテレビ番組Japan Spiritキャスター。www.diversityasia.com

Antikwar/Shutterstock.com

3カ月で環境に同期する

先月号で、「海外勤務は成長の大きなチャンス。この数年間を活かさなくてはもったいない」と述べ、具体的な自己啓発のコツを示しました。今回は、「海外勤務生活をどうスタートさせれば人生の転機となるか、組織に貢献できるか」について考えたいと思います。まずは、赴任して3カ月間に取るべき「最初の90 日間行動」を紹介しましょう。

「最初の90日間行動」はハーバードビジネススクールの教授、マイケル・ワトキンズ博士の同名の著書『TheFirst 90 Days』(Dr. Michael Watkins, Harvard Business School Press 2003)による考察を基にしています。

この考え方の前提は、「現地のことは現地の様子を見ながら少しずつ慣れていく」といったやり方では現実に合わない、というものです。赴任者や長期出張者は、ますます“VUCA”(Volatile流動的、 Uncertain不確実、 Complex複雑、Ambiguous 曖昧)になるビジネス環境や対人関係の中に入っていくわけですから、そのVUCA環境に、自分の意識と行動を同期させる必要があるのです。

海外勤務への移行プロセス

早速、図1で海外勤務への移行プロセスの全体像を見てみましょう。受け入れ拠点への初出勤の日から最初の90日間は「価値の消費」段階です。この期間は、赴任者にとって現地組織に自分の価値を“提供”するのではなく、時間、手間などによって“消費”する時期といっていいでしょう。住居の手配に始まり、車の免許取得、PCの使い方から社内のさまざまな規則や仕事の仕方に慣れていく段階です。

本人のアウトプットが始まるのは、90日を過ぎる頃。いよいよ「価値の創造」の時期に入ります。現地式の仕事の進め方と自分の進め方のアライメント(刷り合わせ)が機能し始め、成果が出てくる段階です。

消費の3カ月と創造の3カ月の終わる6カ月目(180日目)がいわゆる損益分岐点(breakeven point)。ここからが、本当の意味での貢献のスタートとなります。

注意したいのは価値創造の4カ月目半ば以降です。図1の3カ月目半ばから始まる点線をご覧ください。これは、現地文化への適応がうまくいかず、パフォーマンスが下降線を描くことを示しています。例えば、「日本では成績抜群だった営業マンが、思うように成果を上げられない」、「リーダーシップを発揮していた研究者が、多国籍の研究開発チームをまとめられない」などです。

そこで、図の上部の点線にある「アライメント」が重要になります。パフォーマンスが下降線を描かないようにするためには、状況が変化するたび、周囲の協業相手とゴールや相互の期待などを刷り合わせる必要があります。

図の下部の点線は「リーダーシップ・オーディション」です。マネジャー以上の役職で現地に赴く赴任者は、その行動を常に周囲からチェックされています。これがオーディションの意味です。「この人はリーダーとして合格か不合格か」という審査を日々、受けている、ということです。厳しいですが、期待に応えられないリーダーは不合格と見なされるのが現実です。

そうこうしている内にも、周囲のスタッフの気持ちは上がったり、下がったりしています。グリーンの矢印で描かれた「当事者意識の高揚と喪失」の通りです。当コラムで繰り返し述べてきましたが、日頃からやや突っ込んだ雑談を交わしつつ、スタッフを応援したいものです。

◆ 1カ月目:アライメント・ミーティングの実施

最初の30日が最も重要です。この期間にやることは「アライメント・ミーティング」です。自分と相手(上司・同僚・部下・客先など)の状況を刷り合わせ(アライン)、シナジーを生み出すための協働ポイントを確認します。じっくり観察しながら慣れていくのではなくて、刷り合わせをしようという明確な意図を持ち、そのための会話を申し出ましょう。その際、具体的に誰とどのような内容の会話をするのか述べます。

①上司と

着任後の数日以内に、上司に30分~1時間ほどの時間をもらい、お互いのミッション、ゴール、期待、懸念事項などを刷り合わせます。離日した時に描いていた自分のミッションやゴール意識を述べて、相手との一致点やズレを確認しましょう。「上司の好む報連相のスタイル」、「上司は自分に対し、どこに注力して助けてほしいと考えているのか」、「2人の連携プレーはどのようにするのが最も好ましいのか」などを刷り合わせていきます。

話を終える頃には、「やって良かった」という安堵感を両者共に感じることでしょう。このように仕事を始める前の段階できちんと改まった場を設け、話し合うことが、誤解の芽を摘み、後々の業務効率を大きく助けるのです。

②メンバーと

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