J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2017年02月号

OPINION1 “パフォーマンス・マネジメント”のあるべき姿とは 評価や業績のみに目を向けず、 全体をシステムとして捉えたマネジメントを

GEなど欧米の先進企業が、パフォーマンス・マネジメントの変革を進めている。
この動きは、日本の人事担当者にとっても、決して無視できないだろう。
しかし、パフォーマンス・コンサルタントとして多くの企業を見てきた中原孝子氏は、「日本企業はパフォーマンス・マネジメントの捉え方に問題がある」と警鐘を鳴らす。
そもそも「パフォーマンス」とは何か。そのマネジメントとは、何を指すのか。
欧米企業の動向にも詳しい中原氏が解説する。


中原孝子(なかはら こうこ)氏
CPLP(Certified Professional in Learning and Performance)ATD 資格認定パフォーマンス コンサルタント
インストラクショナル デザイン 代表取締役/ATD ジャパン 副代表

岩手大学卒業後、米コーネル大学大学院にて教育の経済効果、国際コミュニケーション学等を学ぶ。米系製造販売会社、シティバンク、マイクロソフトにてトレーニングマネジャーとして活躍後、2002 年5月インストラクショナルデザインを設立。効果的な研修設計と効果測定、パフォーマンスコンサルティング手法による人材開発設計などを行う。ATDインターナショナルメンバーズネットワークジャパン副代表。

[取材・文]=崎原 誠 [写真]=菊池壮太

「パフォーマンス」とは?

まず、「パフォーマンス」というものをどう捉えるべきか説明しよう(図1)。個人を起点に考えると、初めにインプットとしての行動があり、プロセスを経て、その行動の結果としてアウトプット(途中成果物)が生まれる。アウトプットの蓄積により創られた価値(提供価値)をアウトカム(成果)、アウトカムの集積がリザルト(業績)となる。

ビジネス分析からパフォーマンス分析をして解決策を実行・評価していく「HPI(Human Performance Improvement)」などに代表されるパフォーマンス論では、この一連の流れ全体をパフォーマンスと捉える。つまりパフォーマンスとは、最終的な業績のことだけを指すのではなく、業績を生み出すまでの行動を含むプロセスもパフォーマンスの一部と捉えるのだ。

「コントロール」から「マネジメント」へ

パフォーマンス=業績と捉えてしまったり、「パフォーマンス・マネジメント」を「業績評価」と捉えてしまうと、パフォーマンスはマネジメントできないものになってしまう。なぜなら、結果が出てしまってからでは、目標に対する発展的な解決策としてのマネジメントではなく、結果の検証と評価しかできなくなってしまうからだ。

そもそも「マネジメント」は、「コントロール」とは違う。日本語ではどちらも「管理」になってしまうが、マネジャーの役割は、部下の能力を引き出し、活躍できる環境をつくること。無理やりやらせてコントロールすることではない。

ここ数年のビジネスシーンでは、スピードや多様な成果定義が求められるようになり、このインプットからアウトカムまでのプロセスを「年次人事評価」によって一元的に管理することがそぐわなくなってきた。そのことが、欧米の先進企業における相対年次評価によるレーティングの廃止や、頻繁なチェックインによる日常的なフィードバック、継続的なコミュニケーション重視など、発展的にパフォーマンス目標達成を支援するシステムとして、いわゆる“パフォーマンス・マネジメントの変革”に舵が切られた背景にある。

GEは、新しいパフォーマンス・マネジメントの仕組みを「パフォーマンス・ディベロップメント」と呼んでいる。マネジャーは、アウトプットを生み出すために部下の行動を支援し、アウトプットが出ていなければ、行動を見直すべきか、プロセスが間違っているのか、あるいは最終アウトカムのために必要と考えていた途中成果物としてのアウトプットを修正する必要があるのかを考え、必要な施策を打つ。結果だけを見るのではなく、全体をマネージするのが、パフォーマンス・マネジメントだ。

システム内のマネジャーの役割

次ページ図2 に、パフォーマンス・システムの全体像を示した。まず、外部環境を踏まえ、戦略目標や経営目標が決まる。それらの目標を実現するために、各組織は自部門や自分たちの組織機能の責任領域に応じた組織目標を設定する。それを受けて、マネジャーは、部下の特徴・長所や成長期待を考慮して、個人としての成果目標と達成すべきアウトプットを合意する。そして、途中成果物としてのアウトプットを出すためのアクションプランを部下にも考えてもらい、部下のコミットメントと、インプットとしての行動を引き出す。

マネジメント過程(進捗確認)で思うように成果が出ていなければ、どのような要因(情報や知識、スキルの不足、資源の問題、モチベーションの阻害要因)が成果達成の障害になっているのか、場合によっては、業務プロセスの改善、組織の仕組みや制度、組織文化の課題も視野に入れ、改善策を検討、支援する。この一連の流れがパフォーマンス・マネジメントであり、マネジャーは、組織のパフォーマンスと個人のパフォーマンスをつなぐ重要な役割を担う。

このシステムを機能させ、パフォーマンスの達成を導くためには、さまざまな条件を満たす必要がある。上司や会社は、業務遂行の必要性を説明し、明確な目標を示し、優先順位を定め、必要な資源を提供する。本人に期待される成果の共有と合意、必要な行動を起こすための教育や情報を与えたり、モチベーションの維持・向上のためのコミュニケーションをとったりする。

曖昧な成果定義や、自分の貢献がどのように評価されるのかが不明瞭な場合、達成感や成長実感が得られないため、十分な成果達成と継続的なモチベーション維持を図ることができない。そのため、どうすればどう評価されるかを明確にし、インセンティブの仕組みを設けることも欠かせない。

頻繁なコミュニケーションを

つまり、重要なことは、マネジャーがいかに頻繁なコミュニケーションをとり、かつ、適切なタイミングでフィードバックするかだ。

私がかつて在籍していたマイクロソフトでは、週1回30 分以上、「One onOne」と呼ぶ上司と部下の1対1のミーティングを行っていた。これはマネジャーの義務であり、この時間が取れないことはマネジメントができていないと見なされることでもあった。

パフォーマンス状態をお互いに把握し、キャッチアップするために行うのがOne on Oneだ。これは状況を確認し、相談を受け、コンサルティングやコーチングをしてパフォーマンスを出すための場なのだ。

こうした取り組みは、他の欧米企業でも行われているところが多い。年次評価を廃止する動きがあるのは、各個人による成果達成ではなく、多様な人材の組み合わせによるチーム成果が求められるようになったからである。相対評価によって社員を格づけするような人事評価制度では、社員同士が競争相手になってしまい、チームのパフォーマンスが高まらない。また、「目標の達成度」で評価されるならば、なるべく自分が成果を達成しやすい分野で業務をするほうが有利に働くため、組織内での多様性やモビリティーが失われ、結果として硬直した組織になってしまう。そこで個人に対する相対評価をなくし、かつ、チームへの貢献度が評価されるような仕組みが実践され始めているのである。

人事担当者にとって、年次評価をなくすというのはキャッチーな話題だが、こうした背景を理解せず、評価の部分だけに目を奪われると、対応を見誤る恐れがあるのではないだろうか。

各工程で明確な指標を持つ

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