J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2016年12月号

寺田佳子のまなまな 第12回 明治大学 副学長 牛尾 奈緒美さんに聞く 「私らしく」挑む勇気

今回のお相手・牛尾奈緒美さんは、アナウンサーを経て大学教授になり、現在は明治大学で副学長を務めるという華々しい経歴の持ち主。
新しい世界に踏み出す度に、悩みに正面から向き合い、「私らしく」挑戦を続けてきたと言います。
専業主婦から転身を果たした理由、見えてきたものとは―。

寺田佳子(てらだよしこ)氏
ジェイ・キャスト常務執行役員、IDコンサルティング代表取締役、日本イーラーニングコンソーシアム理事、IT人材育成事業者協議会理事、熊本大学大学院教授システム学専攻講師、日本大学生産工学部非常勤講師、ATD(タレント開発協会)会員。著書に『学ぶ気・やる気を育てる技術』(JMAM)など。https://www.facebook.com/YoshikoTeradaBook

牛尾 奈緒美(うしおなおみ)氏
明治大学副学長。情報コミュニケーション学部教授。慶應義塾大学文学部卒業後、フジテレビジョンに入社しアナウンサーとして活躍。1989 年に退社後、慶應義塾大学大学院経営管理研究科に入学しMBAを取得。同大学大学院商学研究科博士課程修了後、明治大学専任講師に就任し、准教授を経て現職。著書に『女性リーダーを組織で育てるしくみ』(共著・中央経済社)など。

「私が副学長になるなんて…」

2016 年4月に、明治大学の副学長に就任した牛尾奈緒美さん。それまで、同大学の情報コミュニケーション学部教授、ジェンダーセンター副センター長として活躍してきたが、副学長となると、責任の重さも、社会的な影響力も大きく変わる。

副学長にと言われて、どんなお気持ちでした?

「えっ! まさかこの私に副学長のオファーが来るなんて、ってひたすらびっくりでした」

思いがけない申し出に「目が点」に。いろいろな方から推薦があったと言われても、「そうなんですかぁ……」と、消え入りそうな返事しかできなかった、と牛尾さん。それまで懸命に取り組んできた研究やゼミ生の指導を思いつつ、「このうえに副学長の仕事をするって、物理的に可能なのかしら? そもそも副学長の仕事って、どんなものなのかしら?」とたくさんの「?」が頭をグルグル回っていたのだから、当然と言えば当然である。

そんな時、ハッと我に返る言葉をかけられた。

「女性活躍推進について研究しているあなたが、こんなチャンスに勇気を持って挑戦せずにいるのは、おかしいのではないですか?」

―た、確かに……。

『女性は、責任ある役職を敬遠しがち。せっかくチャンスが来ても、挑戦する前に私には無理、と躊躇してしまう。そんなふうに、自分で自分に枠をつくるのはやめましょう!』

講演でこう女性に語りかけているのは、この私だ。なのに、自分自身が「やっぱり無理……」と逡巡するのは、確かに、おかしい。

「痛いとこ、突かれちゃったなぁ」

心の中で苦笑しながら、牛尾さんは明治大学での18年間の年月を想った。

―そういえば、18 年前に講師として採用された時、「あなたも、いつかは教授ね!」と周囲に言われて、やっぱり「えっ」とびっくりしたっけ。当時は教授なんて、はるか彼方の遠~い存在だった。それが、講師、准教授と、ひとつずつ上ってきて、気がつけば今、その教授になっている。

ということは、「そんなバカな」と思うことも、やるべきことを地道にやっていけば、私なりに実現できるのではないかしら。この18 年間で女性教員も増えた。その女性たちに、「家庭を持ち、子どもがいても、責任ある役職で頑張っている先輩がいる」と思ってもらえたら、それでいいのではないかしら。

「そうだわ! 今までのように、私らしくやればいいのね」

こうして、牛尾さんは明治大学の副学長としての一歩を踏み出した。

辞めたからこそ、できること

それにしても、牛尾さんのキャリアは、女子の「憧れ」を全部詰め込んだような華麗なものである。大学卒業後、フジテレビに入社して「女子アナ」になり、「ニュースキャスター」として脚光を浴びた。しかしその華やかな職場をあっさり5年で退職し、結婚して「妻」となり、「母」となり、大学教授という「先生」になった。

順風満帆に夢をかなえてきたように見えるが、「とんでもない! 新しい世界に一歩踏み出す度に、思いっ切り悩み苦しんできたんです」

まず、仕事を辞めて専業主婦になった時、気づいたことがある。

―あら私、「お嫁さん」になっちゃった。「奥さん」になっちゃった。子どもが生まれたら、きっと「○○ちゃんのママ」になっちゃう。「私」がなくなっちゃった……。

「結婚して初めて、日本社会における女性の立場について真剣に考えましたね」

今まで頑張ってきたのは、この座を得るためだったのか。そう自分に問いかけた時に、何か違うのではないか、と思い始めた。

憧れの「専業主婦の花道」を行く先輩からも、「なぜ、アナウンサーのような恵まれた仕事を辞めちゃったの?もったいない!」と不思議がられる。そのうえ、「欧米では、大統領夫人や経営者夫人も、弁護士や医者、大学教授という職業を持っているのが当たり前。日本もいずれ、そうなるわよ」と言われる。

―やっぱりそうか。でも、私、アナウンサー辞めちゃったし……。

フリーアナウンサーとして復帰することが現実的な選択かもしれない。しかし、牛尾さんは「、それは嫌だ」と思った。そんなに安易に戻るくらいなら、初めから辞めたりはしない。アナウンサーを辞めたからこそできる「私らしい」仕事が、きっとあるはずだ。

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