J.H.倶楽部

無断転載ならびに複製を禁じます。なお内容は取材・掲載当時の情報です。

月刊 人材教育 2016年12月号

巻頭インタビュー 私の人材教育論 自ら学び、建設的に議論し合う 創造的な組織で2020 年へ

売り上げの8 割近くが海外市場で、7000人を超える従業員のうち日本人は既に4 割程度―。
グローバルな戦いの中で勝ち残っていくため、アシックスは思い切った構造改革に取り組んできた。
2020 年東京オリンピック・パラリンピックのゴールドパートナーとなり、海外市場でのさらなる飛躍をめざす尾山基社長に、今後の人材開発について聞いた。


尾山 基(Motoi Oyama)氏
アシックス 代表取締役社長CEO

生年月日 1951年2月2日
出身校 大阪市立大学 商学部
主な経歴
1974 年 4月 日商岩井 入社
1977年 4月 ドイツ語研修生として渡独 
1982年 1月 アシックス 入社
1991 年 2月 ウォーキング事業部マーケティング部長
1997年 1月 第一事業本部ウォーキング事業部長
2001年 7月 アシックスヨーロッパB.V. 代表取締役社長
2004年 6月 取締役 マーケティング統括部長
      兼)アシックスヨーロッパB.V.
        代表取締役社長
2005年 4月 取締役 海外担当
      兼)マーケティング統括部長
      兼)マーケティング部長 
      兼)アシックスヨーロッパB.V.
        代表取締役会長兼CEO
2007年 8月 常務取締役 海外担当 
      兼)経営企画室担当 
      兼)マーケティング統括部長
      兼)アシックスヨーロッパB.V.
        代表取締役会長兼CEO
2008年 4月 代表取締役社長
2011年 4月 代表取締役社長CEO
現在に至る


アシックス
故・鬼塚喜八郎氏が当時不足していたスポーツシューズの生産販売を決意し独立。1949年に神戸市で鬼塚商会を創業する。翌年、バスケットボールシューズ第1号発売。1977年、オニツカ・ジィティオ・ジェレンクの3社が合併し、現社名に。
2015年12月31日現在、世界に39拠点を擁する。
資本金:239億7200万円、連結従業員数:7263人(2015年12月31日現在)、連結売上高:4284億9600万円(2015年12月期実績)

インタビュー・文/竹林篤実
写真/大島拓也

新中期経営計画の手応え

―2016年1月から始まった新たな5カ年計画の手応えはいかがでしょうか。

尾山

「ASICS Growth Plan(AGP)2020」では、「2020年12月期の売上高7500億円以上」を目標としています。そのうち20%にあたる1500 億円は、直営店と自社運営のEコマースによる「Direct to Consumer(DTC)チャネル」でまかなう予定です。立ち上がりとなる今年度の売り上げは、米国での取引先の破たんやブラジル経済の変調、為替変動の影響などを受けて、当初計画を少し下回る予測です。ただアジア地区は好調で、第2四半期終了時点で中国などは前年対比50%以上の伸びを示しています。韓国でもパートナーショップとのビジネスの見直しを進めており、今後の成長が期待できます。利益面については、目標を堅めに設定していたこともあり、計画を上回っています。

―健康志向の高まりが追い風なのでは。

尾山

中国市場での売上拡大は、まさに国の健康増進政策により国民の健康意識が高まっていることを受けたものでしょう。アジアは富裕層が増えるにつれて、人々の健康意識が高まっているため、今後もスポーツ市場の拡大基調が続くと見ています。

一方で、特に欧米でスポーツとファッションの境目がなくなってきています。結果、当社のブランドでいえば「オニツカタイガー」や「アシックスタイガー」のような“街履き”として使える、カジュアルで汎用性の高いスニーカータイプの需要が伸びているのです。こうしたニーズをつかむため力を入れているのが、スポーツライフスタイルカテゴリーです。

―今後の課題は、先ほどのDTCチャネルでの売り上げ拡大、ですね。

尾山

前回の5カ年計画も、スタートして2年ぐらいは緩やかな伸びながら、後半3年間の追い上げにより売上目標を達成しました。今回も2018年ぐらいからが勝負と捉えています。

主力のランニングカテゴリーでは、ニューヨークシティマラソンをはじめとして欧米の主要なマラソンで50%前後のシェアを確保しています。DTC事業については、今のところ目標を全売り上げの20%に設定していますが、いずれ上方修正を見込んでいます。伸びしろは非常に大きいと思いますね。

―AGP2020の最終年には、ゴールドパートナーである東京オリンピック・パラリンピックが控えています。

尾山

創業者の鬼塚喜八郎は、スポーツによる青少年の育成を通じて社会の発展に貢献することを志して起業しました。「健全な身体に、健全な精神があれかし」との創業哲学は、近代オリンピック創設の信念と原点が同じです。彼が生きていれば日本で開催されるオリンピックは全力で支援したいと考えたはずです。この大会が世界に誇れるものとなるよう貢献すると共に、ブランドの露出度を高め、大きな飛躍をめざします。

指示待ち体質を変える

―構造改革に取り組む御社では、今後どのような組織をめざすのでしょうか。

尾山

鬼塚喜八郎が軍隊の指揮官出身だったこともあり、当社にはずっと体育会系の雰囲気がありました。入社してくる人も、陸上部に所属していたとか、何かのクラブでキャプテンを務めていたといった人が多い傾向にあります。

ただ、軍隊式というか体育会系の人は、ファイティングスピリットはあるものの、どうしても上からの指示待ちになりがちです。そんな受け身体質では、変化の激しいグローバルな競争環境では勝ち残れません。自発的に意見を出し合うワイガヤを採り入れ、自律的に動く小グループのアメーバ組織に変えていく必要があります。その際に求められるのは、軍隊式の上意下達組織ではなく、活発にディベートが起こる風土への改革です。

ここで言うディベートとは、データなどの根拠を基に冷静に議論することです。議論の場では、立場の上下など一切関係ありません。たとえ上司の発言に対しても、データの裏づけがあるなら堂々と反論すべきです。

その際に心掛けたいのは、感情論に陥らないこと。相手の意見を根拠もなく否定するのではなく、きちんとした理由を示して、建設的な議論を積み重ねる。そうすれば論点の違いなどが明らかになるはずで、これこそがディベートの狙いです。

異なるバックグラウンドを持つ人たちが、お互いに意見をぶつけ合うことで新しい視点が生まれ、創造的なアイデアにつながります。当社もそんなイノベーティブな社風に変えていかなければなりません。

次世代リーダー育成と、学習意欲の喚起December 2016

―リーダー育成のため、2011年より「アシックスビジネスリーダースクール」を設けてこられました。その主な狙いは。

尾山

対象は主に国内の社員で、26歳ほどの若手担当者層や45歳ほどの経営層など、世代ごとの3階層から、毎年15人程度を選抜します。スクールでは経営やファイナンスなどのビジネススキルを多角的に学び、同時に英語でのコミュニケーション能力を育成します。英語力が一定水準に達した中堅層以上には、スクール修了後のキャリアとして海外赴任を用意します。

広い視野を持ち、多様な経験を積んだ人材の育成は、競争力強化のため必須です。こうした教育で将来的に各国現地法人をリードしていける人材の輩出をめざしています。選抜されるために、自発的に学ぶ社員を増やすことも狙いです。社内競争を喚起することで、「勉強しなければ」という気運を盛り上げたいのです。なお、2016年からはこのスクールをリブランディングし、新プログラム「ASICS Academy」を実施しています。

総合職より専門職、年功序列は不要

―以前から、専門職重視、年功序列の見直しの必要性も強調されています。

尾山

こちらはJ.H.倶楽部会員限定記事です。
ご入会後、続きをお読みいただけます。

残り:2,779文字

/

全文:5,558文字

【入会・年会費無料】

J.H.倶楽部は人事の仕事に役立つ特典が満載です!

  1. 総数2000本以上の人事の実務に役立つ記事(※)が閲覧可能
    ※専門誌『Learning Design』(旧『人材教育』)の記事
  2. 新サービス・お役立ち情報(調査報告書・ホワイトペーパーなど)の先行案内
  3. 会員限定セミナーへのご招待/講演動画・配布資料の閲覧
  4. 興味関心に沿った必読記事を、メールマガジンでお知らせ!