J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2016年05月号

CASE 2 帝人 融合とソリューションがキーワード 異動や育成の機会で 事業感覚など複合力を醸成

帝人のR&D部門では、専門性のみならず複合力も重視する。
事業や機能の垣根を超えた異動も行われ、R&D人財であっても異分野の専門性や、マーケティング等の経営知識を学ぶことが推奨されている。
技術交流や技術の伝承、そしてビジネスセンスを持つ人財育成を意識した同社の取り組みとは。

吉岡 久氏
人事部 人財開発グループ長

帝人
1918 年創業。技術革新を核に、高機能繊維・複合材料、電子材料・化成品、ヘルスケア、繊維製品・流通、ITなどの多角事業をグローバルに展開。グループ会社は世界で152社、製品を販売する国は80カ国。海外売上高比率は40.8%。
資本金:708 億1600万円、連結売上高:7862億円(2015年3月)、従業員数:1万5780名(2015年3月)

[取材・文]=楠本 亘 [写真]=編集部

● 背景 技術継承と技術交流を意識

帝人の事業領域は多岐にわたる。旅客機や自動車の素材となる炭素繊維から電子材料や化成品、繊維製品等を製造する素材分野の他、痛風・骨粗しょう症治療の先発薬や在宅医療といったヘルスケア分野、さらにはIT分野にも進出している。そうしたさまざまな製品やサービスを開発し扱うメーカーとして、R&Dは生命線だ。そこで同社では、この10 年ほどの間にR&D部門を強化する策を各種実施してきた。

背景には、人員構成上の課題と、同社を取り巻く環境の変化があった。

「2000 年代には、新卒採用を絞っていた時期や、生産拠点の海外移転によって国内マザー工場の技術開発人財の採用数を限定した時期がありました。加えて2003 年の持株会社化後、組織が縦割になったため、グループ内であっても横の技術交流がしにくくなっていました。

さらには、2007年より少し前から、職人的な技術を誇っていた団塊世代の大量退職が始まり、技能伝承が問題になったことも背景として挙げられます」(人事部・吉岡久氏、以下同)

持株会社制のもとでは事業単位でヒト・モノ・カネが管理されるため、技術開発も部分最適になりがちである。2010 年頃からは、そのゆり戻しが起こり、2012年頃より持株会社制を解消する組織再編が行われたり、R&Dを含めた技術を横串しで見る「技術本部」が発足するといった動きが起きたという。

また、同社は、2014 年に発表した中期計画で、「既存製品や技術の複合・融合によるソリューション提供型事業体への進化」をキーワードとして掲げており、このことも、同社のR&D 組織と人財強化への意識を後押しした背景として挙げられる。

● 求める人財像 専門“+α”

現在、同社の新入社員の出身学部は理系と文系が半々程度とのことだが、R&D部門にはどういう気質の人が多く、会社としてはどういう人財を求めているのか。

「R&D部門に配属となる人は、大学院で専門を究めてきた人が多いため、ある領域を突き詰めたいという気持ちが強いようです。会社としてはそうした考えは尊重しつつも、専門領域を究めるだけでなく、気持ちと能力のある人には経営幹部をめざして進んでほしいと考えています。

また、高度専門職としてキャリアを積んでいく人であっても、1つの専門領域だけでなく、他の技術との“融合”にも足を踏み込む人や、自身の研究が儲かるビジネスにつながるかという“研究のその先”まで理解をして仕事を進める人を強く求めています」

実際、こうした人財を育てるため、ジョブローテーションや研修による教育を積極的に行っている。

そもそも同社では昔から、5 年を目安に部署異動や担当テーマ変えを行うことにしており、R&D人財も例外ではなく、あえて他部署や他のテーマを経験させているという。

「基礎研究から商品開発、製造、マーケティングなど(事業の流れとしての)“隣の部署”への異動や、“1つ飛ばし”の異動は頻繁に行っています」

● 具体策 軸づくりと専門性深化

研修などのR&D人財育成策も豊富である。まずは、全体の底上げや軸づくりに関する施策を見ていこう()。

●帝人テクノカレッジ

帝人テクノカレッジとは「現場の技術継承」「自ら考え行動する技術者育成」を目的に、07年に始められたOJT型教育だ。事業所(工場)で20 ~ 30名程度の人を指導できるリーダーの育成を目標とし、各部門から選抜された人財が、講師役である同社OBからマンツーマンに近い体制で1年間指導を受け、成果の発表会なども行う。

講師役のOBは、その道・技術における第一人者だ。現場で起きている問題を把握したうえで、必要な技術や対処法、仕事に対する心構えなどを指導する。

2014 年までに約400 名が指導を受けた。また15・16 年度の対象者約25名のうち、半数は海外で働く現地スタッフである。

「現場での教育に意味があるため、海外のスタッフが対象の場合は、講師が現地に出向きます。現役時代に現地での勤務を経験している講師も多いため、意思疎通も問題ありません」

海外を含めて、技能・技術を受け継ぎ、現場を引っ張っていくことのできる人財の育成を、ベテランが集中して担当している。

●MBA(マテリアル・ビジネス・アカデミー)(営業・R&D部門対象)

営業・R&D部門の入社1・2年目を中心に、課長職までを対象とした「MBA」という研修プログラムもある。MBAといっても経営学修士のことではない。同社の中核ともいえる「素材」に関する知識を得るものだ。

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