J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2015年08月号

常盤文克の「人が育つ」組織をつくる 第2回 量と質から日本的経営のよさを考える

「量より質」「デジタルからアナログへ」などと言われる時代です。今、よき暮らしを実現するために私たちは何を見つめればよいのでしょうか。元・花王会長の常盤文克氏が、これからの日本の企業経営と、その基盤となる人材育成のあり方について、提言します。

常盤文克( ときわ ふみかつ)氏
1957年、東京理科大卒、花王入社。米国スタンフォード大学留学後、大阪大学にて理学博士取得。76年取締役、90年社長、97年、会長を歴任。著書に 『新・日本的経営を考える』(JMAM)『人が育つ仕組みをつくれ!』(東洋経済新報社)など多数。

質・価値を主張する大切さ

「量より質の時代」「付加価値の向上」といった言葉をよく耳にします。では、「質とは何か」「価値とは何か」と問われたら、とっさに答えられるでしょうか。答えられたとしても、10人いれば10の答えが返ってくるでしょう。ただ、明確な答えはなくても、質や価値の存在を否定する人はいません。

例えば、千円の商品があるとします。ある人は値段の割には質がいいと言い、ある人はこの質でこの値段は高いと言う。中には、みんなが買うから買うという人もいるでしょう。すなわち、質は個々で評価できるがはかれない。しかし、確かに“ある”ということです。

一方、量については金額や数量などを尺度に答えられます。しかし今、世の中が要求しているのは、量から、質・価値といった定性的なものへの転換です。したがって企業は、それぞれ自分たちの考える質や価値を定義し、自分たちの尺度で製品やサービスを評価する仕組みを持つ必要があります。

質や価値は、人の暮らしや価値観とも大きく関わっています。定性的ですが、質や価値を主張することはできます。製品やサービスは最終的にはお客さんに買ってもらうわけですから、これを価格で表さねばなりません。つまり、千円という値付けをすることが、作り手や売り手にとっては自分たちの質や価値を主張する手段なのです。その主張を、相手(お客さん)が認めれば買ってくれますが、そうでなければ買ってはもらえません。

ここを誤ると、とめどなく安売りし続けることになります。千円の価値があると思っている商品の価格を仮に半額に下げれば、一時的にはよく売れるかもしれません。しかし、自ら質を貶めてしまっているわけですから、結局、利益が出なくなります。

一方、質をしっかり守っていくやり方もあります。例えば、ブランド品は基本的には値段を下げません。一度下げれば、この商品はこれくらいのものかと評価され、値を元に戻しにくくなるからです。したがってブランドを売り物にしている企業では、自分たちの商品の質や価値を主張すること自体がビジネスの柱になっているのです(もちろん、その背景にはブランドへの信頼感がなければなりませんが)。

質や価値の向上が求められる中で、このように価格を通じて質や価値を主張することは極めて重要なことです。

量を追えば価格は下がる

量を追えば、価格は下がる方向に進みます。(他と同じような商品の)売上げを増やすには、価格を恒常的に下げるしか道はないのです。簡単に言えば、価格を下げても利益を出そうとすれば、人件費や原材料費を削ってコスト低減を図るしかありません。この場合のキーワードは、効率化、合理化、マニュアル化、人員削減、時間短縮……です。これらに意識が向かうと、質を高めることへの意識が疎かになります。一方、コスト競争で中国、韓国、台湾や東南アジアなどの新興国と真っ向から勝負しても、勝ち目はありません。量を追うやり方では、日本企業は生き残れないのです。

価格競争に陥らないためには、質を高めるしか道はありません。質の深化、質の創造を通して新しい製品・サービスを生み出すことです。量の競争相手は新興国ですが、質の競争相手は欧米の先進国です。

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