J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2015年07月号

巻頭インタビュー 私の人材教育論 企業成長の要は人材に 育成の要は創業の原点にあり

医療・福祉の現場を総合的にサポートするワタキューセイモア。
医療施設向けリネンサプライや給食などで、圧倒的なシェアを持つ。
同社が展開する全ての事業は、人が支えるものであり、よって事業展開も、人材の質がカギとなる。
そこで同社では人材育成、特に新入社員の段階で1年もの間、社会人としての「基本」と、会社の「基本方針」を身につける機会と時間を設けている。

安道光二(Mitsuji Ando)氏
ワタキューセイモア 代表取締役社長
生年月日 1941年11月5日
出身校 九州大学工学部
主な経歴
1957年3月 綿久製綿株式会社
(現ワタキューセイモア株式会社)
入社
1995年8月 同社 常務取締役 就任
1997年8月 同社 代表取締役社長 就任
(現任)

ワタキューセイモア
1962年設立。リネンサプライ、患者給食受託、院外調剤薬局他、医療・福祉関連サービスの請負業務を行う。
資本金:4850万円、連結売上高:4931億円、連結従業員数:8万3340人(2014年12月期)

インタビュー・文/竹林篤実
写真/大島拓也

2022年に1兆円企業

―創業150周年にあたる2022年には、売上高1兆円のグループ企業をめざすと宣言されています。

安道

「1兆円」という数字には正直なところ、具体的な売上構成などの裏づけはありません。ですが、根拠が全くないわけでもないのです。

医療と医薬品の提供以外の全業務―清掃、リネンサプライ、ベッドや什器などの物品提供・管理、給食の提供、人材派遣等々―を当社が担当している病院が、現時点でもいくつもあります。例えばベッド数300床ぐらいの規模の病院なら、年間売上が10億円程度になります。現時点で当社が全国で担当しているベッド数が63万床ですから、そのうちの半分の病院でそうした業務をお受けすることができれば、1兆円に届くはずです。

―病院業務をアウトソーシングする動きは、さらに加速しそうです。

安道

医療費削減は長期的に見ればやむを得ないことですから、ベッド数自体は今後先細りとなるでしょう。とはいえ当社が担当する63万床が半分になることはありえません。

一方で当社グループには、すでにご紹介した業務の他にも、病院経営に関するコンサルティングから建物の建築までをサポートする企業などを含め、傘下に40数社があり、約8万名のスタッフが揃っています。病院経営者の方々も、アウトソース先は1社にまとめられたほうが、管理がしやすいはずです。私たちとしては、そうしたこれまで積み重ねてきた活動や取り組みを、この先も進めていくことが、目標達成にまず重要だと考えています。

ただ、そうかといってじっと待っているだけでは達成できないでしょう。当社としては、中でも人材育成こそが企業成長のカギだと考え、注力しています。私たちが携わる病院や介護施設での仕事は、あらゆる局面において、必ず人が関わっているからです。

1年間、基本を叩き込む

―特に新人研修は独特なシステムで、丸1年間をかけているとのこと。

安道

2011年に本部に「一心館」という専用施設をつくり、研修を行っています。さまざまな職場に赴いての実習も行います。新卒入社の約52名が1年間、寮に入り、まさに寝食を共にして過ごします。数十人も、新入社員として研修を受けるわけですから、経営的にも、かなり思いきった投資です。

―入社後1年間を重視される理由とは。

安道

私たちは新卒入社の社員を“大学5年生”と捉えています。一人前の社会人として扱うには、彼らはあまりに未熟なのです。

何も難しいことを教え込もうとしているわけではありません。研修の一番の目的は、社会人として最低限の礼儀、しつけ、一般常識といったことです。そうして会社での業務をひと通りマスターしたら、次に英語力などを身につけてもらいたいと思います。

とりわけ私がいつも口うるさく注意しているのは、例えばお辞儀の仕方など、しつけのようなことです。

―しつけは、本来なら、学校や家庭で身につけるべきではないでしょうか。

安道

そうでしょう。ですが現実問題としてできていないのだから仕方がありません。誰かが教えてあげなければ、彼らの将来はどうなるのでしょうか。

社内では、1年もの時間を研修に費やすことに対して当然、賛否両論がありました。世間ではよく「地獄の特訓」などとアピールしている研修を見かけますが、いくら厳しくしたとしても、たかが2週間ぐらいでは、体に染み込むはずがない。

例えば「仕事中は大きい声ではっきりと話しましょう」と1回の研修で教えても、研修後、段々と声が小さくなり、やがて小さい声で話すのが普通になってしまうことはよく起こっているでしょう。それなら自社でもっと徹底的に研修を行い、ワタキューグループについての理解や、社会人としての基礎をしっかりと習得していただきたい。またそうした中で、同期の絆を深めてほしいと考えています。

一生の財産を手に入れる

―研修内容は、具体的にはどのようなものなのでしょうか。

安道

「基本方針」「感謝の気持ち」と「謙虚な姿勢」を基礎に深める学びと、病院や洗濯工場などでの現場研修があります。リネンの洗濯工場研修は、夏場に行います。工場内は熱気がすごいですから、肉体的にも精神的にも、かなりこたえるようです。けれども、そうした厳しい環境で一緒に課題を頑張り抜くことで、仲間意識が強まるようです。風呂にみんなで入ることも、今どきの若い人たちにとっては新鮮な体験らしく、楽しんでいます。

―仲間と共に、しんどい思いをしながらも頑張るというのは、貴重な体験ですね。

安道

私は常々、「一に辛抱、二に辛抱、三、四がなくて五に辛抱」と言い続けております。「辛抱」なんて言葉は、今どきの若い人には死語かもしれません。けれども辛抱することは、仕事だけではなく、生きていくうえで何より大切なことではないでしょうか。たとえ会社を辞めたとしても、辛抱強くなっていれば、生涯にわたる力となるはずです。

基本的なお辞儀や挨拶の仕方、人と話す際の身なりの整え方なども同じこと。基本を一度しっかりと身につけておけば、必ず一生の財産になります。

―そこまで教えてもらえる機会は、確かにありません。

安道

だからでしょう、人前で話す時に、平気で手を腰の後ろで組んだりする人がいるのです。そんな話し方をする人を見ると「おたくは応援団員か何かですか」と皮肉ってあげます。

テレビ番組などでも、オシャレのつもりなのでしょうが、ネクタイが乱れていたりします。みっともないと思いますね。

社長の背中から学んだこと

―ご自身の経験についてうかがいます。15歳で入社し、働きながら大学の夜間部で学んだそうですね。

安道

昔は本当によく働き、学びました。

車の免許を取ってからは、前社長の運転手も務めていました。前社長がとにかく仕事をする方で、夜中によく起こされました。その頃は「ムーンライト」と呼ばれる飛行機の夜間便があり、それに乗って出張に行かれるのですが、空港までの送迎を私が担当していました。今なら考えられないことですが、当時は朝早くから夜遅くまで働くことを、ごく当たり前のことと受け止めていました。社長自らが、休む間もなく働いているのですから、平社員の私が文句を言うわけにいきません。

―以前には倒産の危機に見舞われた時期もあったとのこと。

安道

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