J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2010年11月号

インストラクショナルデザイナーがゆく 第42回 顧客の幸せのために幸せな社員が運ぶ靴

寺田 佳子(てらだ・よしこ)氏
ジェイ・キャスト常務取締役、ID コンサルティング代表取締役、日本イーラーニングコンソーシアム執行役員、eLP(e ラーニングプロフェッショナル)研修委員会委員長、JICA 情報通信技術分野課題支援委員、JICA ─NET Instructional Design Seminar 講師、ASTD(米国人材開発機構)会員。著書に『IT 時代の教育プロ養成戦略』(共著、東信堂)など。http://instructionaldesign.blog97.fc2.com/

その素敵な会社のことを初めて知ったのは、ニューヨーク・ブルックリンのパークスロープにある友人宅に行った時のことである。

引っ越し祝いパーティーの真っ最中に、「DeliveringHappiness(幸せをお届けします)」と書かれた大きな段ボールが届いたのだ。

「わぉ、見せて!」

「今度は、なに買ったの?」あっという間に段ボールは開けられ、中からいくつもの靴が現れた。『アレクサンダー・マックイーン』の過激なグラディエーター・サンダルあり、『ナイチンゲール』のピンクのふわふわスリッパあり、『ジュゼッペ・ザノッティ』の宝石をちりばめたようなハイヒールあり。

会社ではそこそこ重要なポストを担うおばさま数人が、夢中になって、「これは絶対買い!」とか、「デザインはいいけどちょっと窮屈ねぇ」と、寄ってたかっていいたい放題する様は、映画『セックス・アンド・ザ・シティ(SATC)』の主人公キャリーたちが靴選びをしている光景そのままだ。

「こ、こんなに買って、大変じゃない、かな?」

端っこで1人ハラハラする私はそっちのけ。あれこれ試し履きをしたあげく、10 足ほどあった靴の中から2足を選ぶと、あとはさっさと箱にしまって、返却用のラベルをペタッと貼って騒ぎは一段落。

「心配しないで!

送料も無料、返品も無料なのよ、ザッポスは!」

「わぉ、ちょっと教えてよ、そのサイト!」、と思わずすがる私。これがオンラインで靴を販売するザッポスとの幸せな出会いだった。

アマゾンが12億ドル出しても獲得したい幸せな人たち

2 度目の巡り合いはシカゴでのこと。『Drive』(邦題:『モチベーション3.0』)の著者ダニエル・ピンクの講演で、ザッポスのCEO、トニー・シェイがビデオで登場したのだ。台湾系米国人のトニーはスキンヘッドで、起業家というより初々しい修行僧のような風貌。「社員と一緒にワクワクできる会社をつくろうと思って始めたんだ」と飄々と語る様は、どこから見ても全米の注目を集めるベンチャー企業の経営者には見えない。

「この、できてわずか数年の靴のオンラインショップを、アマゾンは12 億ドルも出して手に入れた。特別な靴を販売しているわけでもないのに、なぜなんだろう?」と質問を投げかけるピンク。

2009 年にアマゾンがザッポスを買収したニュースは、米国ではちょっとした衝撃だったという。アマゾンにとって最大の買収案件ということもニュースだったが、さらに驚きだったのは、買収といっても、絶好調の成長を続けるザッポスに有利な条件で、社名はもちろん、経営陣も従業員も業務内容もそのままでアマゾン傘下に入ったこと。いいかえれば、「アマゾンが12 億ドル払っても手に入れたい人材がいる会社」という噂が駆け巡ったからだ。

それって、いったいどんな人材?と知りたくなるのが人情だが、別に企業秘密でも何でもない。ザッポスの社員、通称ザッポニアンたちは、ツイッターでのフォロワーが多い人順に「ツイッター・フォロワー・サイトhttp://twitter.zappos.com/employees」でズラリと公開されている。ここからそれぞれのツイッターを覗いてみると、トップでフォロワー170 万人のCEO のトニーから、採用担当者、ブランディング担当者など、約500 人の社員が、毎日何を考え、何に感動しているかが一覧できる。

こうした社員1人ひとりの想いをまとめたのが、『10 のコア・バリュー』だ。

1)サービスを通じてお客様に「わぉ!」という気持ちを届けよう

2)喜んでチェンジに挑戦しよう

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