J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2010年11月号

人材教育最前線 プロフェッショナル編 最も重要な教育は人格を形成し、高めること

「あなたと、コンビに」でお馴染みのファミリーマート。今年9 月14日には、50 ~ 65 歳の“おとな”向けの商品やサービス開発などを目的とした「おとなコンビニ研究所」を発足。社会貢献など、大人の生活を提案すると言う。このように次々と新しいアイデアを打ち出し、激化するコンビニ業界の競争を勝ち残る――そのために必要な人材とは何か。今年4 月、管理本部総務人事部人財開発グループマネジャーに就いた小林桂氏は、「人格」が最も重要だと語る。ファミリーマートが求める人財像を、人格に価値を置き、明確にした氏に、教育に対する想いを聞いた。

小林 桂(Katsura Kobayashi)氏
管理本部 総務人事部
人財開発グループ マネジャー

1994 年、ファミリーマートに入社。店長業務、新設店開店業務担当を経て、1995年にスーパーバイザー着任。1998年より本社へ異動。店舗オペレーションの企画や研修制度の企画・運営に携わり、3年で約250回の研修を実施した。2010年より現職。
ファミリーマート
コンビニエンスストア事業を展開する、伊藤忠商事のグループ企業。国内外に1万6554 店舗(2010 年8 月末現在)を展開。国内店舗数は業界第3 位。1988年の台湾を皮切りに、アジアを中心に展開地域を拡大。2004 年には、日本発祥のコンビニエンスストアで始めて、アメリカに進出する。スローガンは、「あなたと、コンビに、ファミリーマート」。
設立:1981 年、資本:166 億5800 万円、
従業員:3065 名(2010 年2 月末現在)

取材・文/浅久野映子、写真/高橋美香

必要なことは自分で考えて動く

全都道府県に店舗を構える大手コンビニエンスストア、ファミリーマート。今年4 月、同社の管理本部総務人事部人財開発グループに小林桂氏が着任した。

小林氏は1994 年に同社に入社。コンビニエンスストア業界を志望した理由をこう話した。「父が駅ビルや商業施設の開発の仕事をしていた影響で、小売業の魅力に引き込まれていきました。大学の卒業論文のテーマも『コンビニ業界の展望』。その時から、当時はまだ実現されていなかった行政と連携したサービスなどを考えていました」

大好きなコンビニエンスストア業界で、開発の仕事に携わるという理想を抱いての入社だった。だが、店長業務の後の配属先は、開発ではなくスーパーバイザー(以下、SV)。

SV とは、各店舗の売り上げなどのデータをもとに店舗の改善提案や経営指導する、いわば店舗経営の経営コンサルタントである。時には父親以上の世代の店舗オーナーに対して経営指導をしなければならず、苦労が多かったという。

しかし、一方でやりがいを実感できる仕事でもあった。そのため本社へ異動を命じられた時は、がっかりしたと小林氏は語る。もっとも、本社への異動には理由があった。

当時同社には海外研修論文制度があり、これに選ばれた小林氏の論文での提言を、本社で全社展開してもらいたいというのである。「論文には、加盟店の売り上げ向上のためには、SV はオーナーの生活の裏側まで知って、経営指導をすべきだと記しました。子どもがいるのであれば、年間の教育費がいくら必要か。そのためには利益、売り上げはいくらでなくてはならないのかをデータで示し、SV がきめ細かいアドバイスすべきというものです」

小林氏は、論文での提言を実現するために、直営店の管理を手掛ける一方で、SV の開店指導マニュアルを作成した。

小林氏が本社へ異動になった1998 年は、ファミリーマートの筆頭株主が西友から伊藤忠商事グループへ変わるという大きな変化があった年でもある。その影響もあり、翌1999 年に立ち上がったのが、業務改善プロジェクト「フェニックス委員会」だった。そこで、小林氏は「店舗オペレーションの改善」と「SVの業務環境の整備」の2つの分科会の事務局を兼任した。

メンバーは30 代後半から40 代。27 歳の小林氏にとっては、先輩方の経験や現場の現状を知る貴重な場となった。同時に、仕事への向き合い方について考えさせられることもあったという。「本社の指示がなくても必要なことは自分から率先して行動すればいい。私はSV 時代から、そう考えてデータを作成し、店舗指導を行ってきました。ですがプロジェクトの議論では、本社の指示が必要という意見も多く、驚きました」

委員会は2000 年に終了したが、その翌年から、小林氏は店舗オペレーションの整備を着々と進めた。自分で考え、必要だと思うことは行動する――そうした氏の考えが現れているといえるだろう。

自己啓発で学ぶのが社会人の本来の姿

こうした活動の一方で、教育にも携わった。人事部という肩書きこそ今年になってからついたものだが、小林氏が初めて現場の教育に携わったのは、実は入社3年目の頃から。きっかけは、希望ではなかったというSV の仕事だった。新入社員が配属される直営店担当として、教育を任されたのだ。「学生時代、吹奏楽部だったのですが、吹奏楽の魅力は個性の違うさまざまな楽器の音色を合わせて1つの美しい作品を創ることです。個性を活かし、皆で協力し合って1つのものを生み出すことに興味がありました。教育も同じだと思うようになったのです」

そう考える小林氏は、入社したての後輩たちと、社会人として、そして会社としてのあるべき姿について熱心に語り合ったという。

そうした経験が買われ、本社への異動後には人事部に依頼されて新入社員研修の講師を担当。管理職に昇進した2004 年からは、店舗オペレーション部門の研修制度の企画・運営も担当した。社会人としてのキャリアを重ね、教育に携わるうちに、小林氏は最近の若手について気になる点が見えてきたという。「我々が新入社員の頃は、研修中も夜は同期と酒を飲んで賑やかにしていたものです。ところが2004 年辺りから、部屋で2、3人ずつ集まり、ゲームをしている光景が多くなりました。時代は変わったと思いました」

若者のコミュニケーションスタイルが変化しただけでなく、意識や知識の格差も目立ち始めるようになり、つくづく教育の重要性について考えるようになったという。「最近の若手を見ていると、暗記することは得意なのですが、自分で考えることは不得手。

私は、社会人は本来、自分に足りないものは何かを自らが考え、自己啓発で学ぶべきだと考えています。自ら仕入れた知識を用いてアウトプットし、その対価として報酬を得る。それこそが社会人の姿です。ところが意識や知識の格差が拡がると、底上げしなければ企業の競争力が低下します。企業の業績向上を支えるのは、最終的には社員1人ひとりのやる気と能力ですから。企業は社員の教育に注力する必要があると実感しています」

大きな影響を受けた尊敬できる上司

入社以来、貪欲に目の前の課題を1つひとつ乗り越えてきた小林氏だが、2004 年に32 歳の若さで管理職になってから2006 年までの3 年間は、小林氏自身も、企業人として成長をとげる重要な時期となったという。小林氏の成長にとって重要な時代を語るうえで欠かせないのが、今でも信頼と尊敬を寄せる上司の存在だという。「若さゆえに、トップダウンのリーダーシップで部下を引っ張ろうとして失敗したこともありました。それでも当時の上司は、『お前の若さなら、そういうやり方もある。自分を信頼して突き進んでみろ』といってくれたんです。それがとても励みになりました」

しかし一方で、厳しい面もあった。至らない点は、遠慮することなく指摘されたという。「飲みに行った翌日に、御礼の挨拶をせずに叱られたことがありました。ともに楽しい酒を酌み交わしたとはいえ、先輩に時間を使わせたということに対して、まず部下から一言あるべきだと口に出して指摘してくれました。今思うと、本当にありがたいと実感します」

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