J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2015年04月号

OPINION 3 組織内外の対立をパフォーマンス向上に活かす リーダーのための 「コンフリクト・マネジメント」

人のぶつかり合い(コンフリクト)は全てが悪いというわけではなく、中には有益なものもある。有害なコンフリクトは上手に排除し、有益なコンフリクトをむしろ積極的に起こす。
そして、新しい価値やイノベーションを生み出そうとするのがコンフリクト・マネジメントだ。 今後、組織が多様化し、文化や価値観の異なる人が一緒に働くようになれば、コンフリクトはますます増える。
リーダーが備えるべきスキルのひとつとして、コンフリクト・マネジメントの重要性が高まっている。

宍戸拓人(ししど たくと)氏
武蔵野大学経済学部経営学科講師。一橋大学大学院商学研究科博士課程修了後、一橋大学商学部特任講師、武蔵野大学政治経済学部経営学科講師を経て現職。専門は経営学、組織行動論。組織におけるコンフリクト研究をテーマに多数の国際学会発表を行うと同時に、国内外の研究成果にも詳しい。

[取材・文]=平沢真一 [写真]=編集部

対立の解消だけが目的ではない

コンフリクトとは、人と人の対立やぶつかり合いのことだ。

平たく言えば、職場で起きるゴタゴタ全般のことを指すのだが、そう説明すると、「コンフリクト=悪」と考えてしまい、それを上手に解消することがコンフリクト・マネジメントの全てだと思ってしまう人が多い。

しかし、それは違う。コンフリクトには悪いものとよいものとがあり、その全体をうまくコントロールして組織のパフォーマンスにつなげていくことが、コンフリクト・マネジメントの本来の意義である。

よいコンフリクトとは、仕事上の理性的な意見のぶつかり合いを指す。よいコンフリクトが盛んになると、メンバー同士の意見やアイデアが前向きに衝突し合い、その中から新しい価値やイノベーションが生まれる。こうした理性的なコンフリクトは「タスク・コンフリクト」と呼ばれている。

一方、悪いコンフリクトとは、人間関係の好き嫌いから生じる感情的な対立、いがみ合いなどのことで、「リレーションシップ・コンフリクト」と呼ばれている(図1)。リレーションシップ・コンフリクトは、うまく解決して排除しなければならない。

つまり、コンフリクト・マネジメントとは、現場で起きているコンフリクトがよいものか悪いものかを冷静に見極め、悪いコンフリクトは解消する一方で、よいコンフリクトは積極的に起こして組織を活性化させ、仕事のパフォーマンスを上げていこうとする活動のことを指す。

人の多様性とコンフリクト

コンフリクトが起きる根本的な原因のひとつは、人の多様性だ。

性別、人種、経歴、価値観などが違う人が一緒に仕事をしようとすると、多くの場合コンフリクトが生じる。実際に、男性、女性、白人、黒人などの多様なメンバーを混合してつくったグループと、混合しないでつくったグループとでは、混合したグループのほうがよりコンフリクトが起きやすいことが、さまざまな研究によって確かめられている。

近年、日本でも組織の多様性を進めるべき、とする議論が盛んだ。その背景には、多面的な視点から新しい成果を生み出すことへの期待や、ビジネスがグローバル化する中で、あらゆる価値観に対応しなければならなくなっていることがある。今後は多くの日本企業で女性の社会進出が進み、外国人労働者も増えるだろう。グローバル化も加速するに違いない。性別や人種、文化の違う人たちが一緒に仕事をすることになると、コンフリクトの発生は避けられない。

しかし、「多様だから職場がばらばらになってしまう」とネガティブにとらえるのではなく、むしろ多様性から生まれるものに目を向けたい。「いろいろな意見がぶつかり合うことによってイノベーションが生まれやすくなる」という具合に、ポジティブに考えていくべきだ。

そのような変革の時代に、コンフリクトから目を背けたり、翻弄されたり、あるいは手をこまねいたりしているようでは、リーダーの務めは果たせない。組織のリーダーには、コンフリクトを避けるよりむしろ能動的にコントロールして、新しい価値を創造しようとする行動が期待されているのだ。

2つのステップでマネジメント

最新の研究成果を勘案すると、コンフリクト・マネジメントは2つのステップで行う必要がある、と私は考えている(図2)。

1つめのステップは、悪いコンフリクトとよいコンフリクトの違いを理解したうえで、悪いコンフリクトは解消し、よいコンフリクトを積極的に起こすよう集団をマネジメントすることだ。

2つめのステップは、起こしたよいコンフリクトを、組織のパフォーマンスへと確実につなげることである。

特に2つめのステップが重要である。せっかくタスク・コンフリクトを起こしても、放っておくと途中からリレーションシップ・コンフリクトに変質してしまう可能性があるからだ。これは、最近の研究によって明らかになった。

例えば、自分の意見を批判された人が、批判された理由を勘違いしてしまい、コンフリクトが変質することがある。反対意見を述べた人は有益な議論をするつもりなのに、批判されたほうは「自分を嫌っているのではないか」と考え、タスク・コンフリクトがリレーション・コンフリクトへと変質してしまう。また、相手の意見を批判する際に、粗暴な言葉を用いた場合にも、同様にコンフリクトが変質してしまう。リーダーはよいコンフリクトを起こすだけでなく、信頼関係の構築を通して勘違いを解消し、粗暴な態度や言葉には自制を求めるなどして、コンフリクトをパフォーマンスにつなげる必要がある。

3つのマネジメント対象

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