J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2011年01月号

JMAM通信教育優秀企業賞 受賞企業事例報告 ホンダロック 自ら学ぶ意欲を培う“創造と挑戦”の風土づくり

宮崎県佐土原町に位置するホンダロックは、本田宗一郎氏が私財を投じて設立したキーロックメーカー。同社では、従業員の自主性を重視し、通信教育を自己啓発の手段として活用。高い参加率となっている。同社の根底に流れる企業哲学と、それに基づいて具体化された施策を紹介する。

長友 啓喜氏
資格制度委員会委員長(R&Dセンター所長)
日髙 浩司氏
資格制度委員会事務局(総務課主査)
下薗 伸行氏
訓練促進事務局(経理課主任)
佐藤 博俊氏
総務部長
日産化学工業
1887年、日本初の化学肥料製造会社として創業。「精密有機合成」「微粒子制御」「機能性高分子」を基盤技術とし、化学品、農薬、医薬品分野などで製品開発・市場開発を推進している。世界に通用するブランド力を備えた「価値創造型企業」としての持続的成長をめざす。
資本金:189億4200万円、売上高1490億3600万円、従業員数:1710名(すべて2009年3月期)
取材・文/石原 野恵、 写真/ホンダロック提供、石原 野恵

従業員の7割が受講する通信教育による自己啓発

ホンダロックは、本田技研工業の連結子会社であり、キーロックをはじめとした自動車・二輪車関連部品を開発・製造している。

今回、同社が通信教育優秀企業賞を受賞した理由の1つとして、毎年多くの社員が自発的に通信教育に取り組んでいる点が挙げられる。通常、全従業員の受講率は2割程度といわれるが、同社は69.7%と、突出して高い。

総務部長の佐藤博俊氏は、次のように語る。

「通信教育はあくまで自己啓発の手段。受講は強制していません。まず自ら考え、学びたいことがあった時に、会社が支援するのが当社の風土だと思っています」(佐藤氏)

同社の風土の根幹をなすのが、創業時から脈々と受け継がれる「ホンダロックフィロソフィー(企業哲学)」である。同社の設立の背景と理念を紐解きながら、自己啓発通信教育制度の活用化ポイントを探っていく。

困難な状況でこそ“創造と挑戦”が生まれる

1962年、宮崎県佐土原町にホンダロックは創設された。創業者、本田宗一郎氏が、宮崎に機械工業を根付かせ、世界に通用するメーカーを育てようと、私財を投じて設立した。

本田氏が、利便性も低く、協力企業もない当時の宮崎に同社を創設したのは、「困難な状況こそ最大のアイデアの条件」という考えから。「何もかもが順風満帆な時、人はあまり考えなくなる。困難な時こそ、状況を好転させるために人は知恵を絞りだすのであり、その環境こそが、成長を促し、イノベーションを生むのだ」という想いが、同社の原点である。

また本田氏は、当初より同社が世界に通用するメーカーになることを視野に入れていた。それには、従業員1人ひとりが自らの技術力を研鑽することが求められる。こうして、スキルや知識を自主的に向上することが奨励されてきた。

「新卒や中途入社の従業員に必ず伝えているのは、当社は自主性を重んじる会社だということ。通信教育に限らず、異動や職務内容にしても、自ら主張できる環境にあります。もちろん上司も支援しますが、自ら考え、学び、行動することが大切だという価値観が創業時から脈々と根付いているんです」(資格制度委員長長友啓喜氏)

この設立時の精神に基づく同社の「ホンダロックフィロソフィー(企業哲学)」は、「人間尊重」と「喜びの創造」という言葉に表現される。「人間尊重」とは、「自立した個人を尊重し合い、平等な関係に立ち、信頼し、持てる力を尽くすことで、共に喜びをわかちあう」こと。

さらに、ものづくりによって社会に貢献し、地域・ステークホルダーの喜びを創造し続けることが同社のめざす姿。ホンダロックフィロソフィーのもう1つのキーワードである「喜びの創造」を実現するためには、従業員1人ひとりの“創造と挑戦”が欠かせない。

同社では、このフィロソフィーの浸透を非常に重視している。資格制度事務局の日髙浩司氏は、「新入社員にも、中途採用社員にも、必ず研修の中でフィロソフィーに関する講義を設けて伝えていますし、階層別研修の中でも確認する機会があります」と語る。

さらに同社の食堂には、本田宗一郎氏が創業時に宮崎を訪れた際の写真とエピソードが書かれた大きな垂れ幕が掛っており、研修時だけではなく、従業員が日常的に理念に触れる機会があるのだ(写真)。

自主性を尊重し成長を促す人材育成

この、自ら挑戦し続け、困難な中で成長を遂げるという創業時からの精神を具現化する1つの姿として、同社が有するホンダロックサッカークラブ(HLSC)について紹介したい。HLSCは創業から2年後の1964年に社内サークル活動の一環として創部、現在ではJFL(日本フットボールリーグ)で戦うチームだ。

一般的に、これほどの強豪チームであれば、サッカー中心の勤務体系になる。しかし同社では、選手も一般従業員と同様に、8時から17時まで勤務し、土日に練習や試合に参加する。

選手にとっては、体力的にも厳しい環境であるに違いない。しかしながら、困難な環境で、自らやりたいことに挑戦し続けることによってこそ、将来ホンダロックを担う人材が育成されるとの考えがあるのだ。

「多くのサッカー選手の選手生命は、大体30代までで終わってしまう。そこから会社で働く30年が長いんです。だから採用時には、選手としての技術力だけではなく、従業員としての適性を見て、将来のホンダロックを担うリーダーとなる人材を選考するのが会社の方針です。仕事と練習や試合の両立は、選手にとっては確かに厳しいでしょうが、その環境で培った精神力や体力、リーダーシップは、必ず仕事でも活きるはずです」(長友氏)

当然、従業員である彼らサッカー選手も自己啓発制度の対象者。通信教育を受講している者もいるという。

「自分から手を挙げる、“出る杭”になるということを重視し、1人ひとりの個性を大切にすることも、“人間尊重”の1つ。通信教育でも同じです。自分がやりたいといった以上、最後までやり遂げる責任があります。それを尊重し、支援するのが当社の風土だと考えています」(長友氏)

理念が結集した各種教育支援制度

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