J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2010年11月号

企業事例(考える②) ねぎしフードサービス 経営理念の浸透で自ら行動する人財を育成

都内で『牛たん麦とろねぎし』をチェーン展開するねぎしフードサービス。同社では、点在する店舗で働く従業員が経営理念を理解し、経営理念をベースに社員自らが考えて行動するための環境と仕組みが整えられている。PDCAサイクルを回すことこそ、成長のための原理原則と考える同社のさまざまな取り組みから、考える力が育つ企業の秘密を探る。

根岸 榮治氏
代表取締役
ねぎしフードサービス
1981年新宿・歌舞伎町に第1号店出店。都内で、牛たんと麦とろを主力メニューにチェーン展開する牛たん麦とろ専門店。現在、同社の主力業態『牛たん麦とろねぎし』他、『コラーゲンと牛たん・テール料理
MARUNE』『チヂミ・石鍋韓国料理
コパン・コパン』を展開。来年創業30周年を迎える。
資本金:5000万円(2010年9月30日現在)、売上高:33億300万円(2010年4月期)、従業員数:社員85名、アルバイト600名(2010年9月30日現在)
取材・文・写真/高橋 美香

考える力の強化は職場環境づくりから

東京都内で、牛たんととろろを主力メニューにした、牛たん麦とろ専門店をチェーン展開するねぎしフードサービス。2009年12月には、財団法人日本生産性本部が実施する表彰制度、日本経営品質賞の「経営革新奨励賞」を受賞した。

そうした企業としての成長とブランドを支えているのが、自ら考えて行動する力を持つ従業員たちだ。同社では、自ら考え自発的に行動する社員を育成するためにどのような取り組みを行っているのか。考える力を持つ社員を育成するための仕組みについて、代表取締役の根岸榮治氏はこう話す。

「我々は経営の目的に“働く仲間の幸せ”を掲げています。これを実現するには、給与や休日などの待遇面だけでなく『成長している』という実感を得ることも大切な要素。また、やらされているのではなく、自分の意思で行動し、お客さまの喜びにつながっていると思える時、人は幸せを感じるのではないでしょうか。私たちはそう感じられる職場環境を用意しています」(根岸氏、以下同)

同社では「人が成長し楽しく仕事ができる自由闊達な風土」をめざした職場環境づくりを行っている。そのために重点を置いているのが、①経営理念の浸透の仕組みを、従業員が主体的に考えて行動することにつなげる②自発的にPDCAサイクルで物事に取り組みたくなる環境と仕組みづくりの2つだ。こうした考え方にもとづいた仕掛けは、自ら考えて行動する社員の育成にどのようにつながるのか。以降で見ていきたい。

成長の原理原則はPDCAサイクル

同社では、『ねぎしの富士山』(図表)という経営理念を図に表すことで、従業員とビジョンを共有している。特徴は、経営の目的を「働く仲間の幸せ」「顧客満足」「企業の永続」に集中させているという点だ。

「かつて、当社は利益を上げることを重視した経営を行っていました。利益を上げることが従業員の給与アップにつながり、それが個人の幸せにつながるのだと信じていたからです。そのため育成もどちらかというとトップダウンで、体育会系でした。それが、日本経営品質賞の勉強を始めてからは価値を重視した経営に変わりました。当社では、本部のことをサポートオフィスと呼んでいます。これは、店舗で働く従業員が組織のトップであり、オフィスは従業員をサポートするためにあるものと、考えを改めたからです。育成の方法ももちろん変わりました」

こうした考えのもと、同社の経営手法は、徹底して従業員の自発性を大切にするものへと変化。それと同時に、成長実感を得るためには、PDCAサイクルを回すことが欠かせないと考えるようになっていったという。

同社では、PDCAサイクルをくり返すことが人の成長と考えている。その内容は、(P)考え、発言、計画(D)実行する(C)計画、反省(A)改善、学習というものだ。

「PDCAサイクルで物事に向き合えば、自発的に考えて行動することにつながります。個人として、チームとして、そして会社として成長するためには、PDCAサイクルを循環させて物事に取り組む環境や仕組みを仕掛けていくことが重要です」

自発性を促す仕掛けが考える力を鍛える

同社で行っているPDCAサイクルをベースとした仕組みは多数ある。その代表的なものが、①全社員出席の改革改善全体会議②クレンリネスコンテスト③店長プロジェクトなどの取り組みだ。

これらの取り組みは、いずれもPDCAサイクルを回しながら取り組むことを念頭に置いて、自主性を育てる工夫が随所に取り入れられているのが特徴だ。

①全社員出席の改革改善全体会議

同社では、毎月1回、全社員が出席する全体会議を開催している。この中で、毎月数店舗の代表者が店舗の課題とその解決策について発表する。発表は、その店の2番手(店長補佐)の社員が担当する。また、発表するテーマは、発表者が自ら設定したものだ。

店舗の問題は、自分1人だけでは解決できないものが多い。そのため解決するためには、必然的に自分から店長や同僚たちに働きかけを行わなければならない。

1店舗あたりの発表回数は、年に3~4回ほど。店舗運営の改革などをテーマに、それまで行ってきた改善の内容や手順を発表していく。

「改善に挙げるテーマには、個人差があります。それでも自力でテーマを設定し、周囲に協力を呼びかけながら改善するプロセスこそが成長の過程でもあるのです。報告を聞く社員は、他の店舗での取り組みを知ることができるので全体会議の発表は、情報交換の場でもあり、お互いに切磋琢磨して成長することができる学びの場になっているのです」

1度発表をすると、次回の発表は、4~5カ月後になる。その間、さらにPDCAサイクルが行われ、より良い改善案が考え抜かれていく。

発表を重ねていくたびに改善活動のレベルが向上していく社員の姿から、明らかな成長を見て取れるという。全体会議で全社員の前で発表をするという場がモチベーションになり、自発的にPDCAサイクルを回していく仕組みになっているのだ。

②クレンリネスコンテスト

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