J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2010年10月号

企業事例(書く③) 電通テック ビジネスの現場で活きる“武器”としての書く力を育てる

各種メディアでの広告企画・制作を行う電通テックでは、新入社員の「書く力」を強化するため、通信教育と研修をブレンドしたユニークな研修を導入した。その目的は新入社員の書く力を棚卸しして客観的な気づきを与え、ビジネスにおける最低限の文章力を身につけさせること。定型文書を習得させ、あらゆるビジネスで活用できる「書く力」の育成を行っている。

米沢 弘典氏
コーポレート本部 人事センター 人材開発部 プロジェクト・マネージャー
(2010年7月末日現在)
岡野 篤義氏
コーポレート本部 人事センター 人材開発部 プロジェクト・マネージャー 兼 営業計画室 ナレッジマネジメント部
(2010年7月末日現在)
電通テック
1950年設立。電通グループの中核企業として、プロモーション領域の企画・制作・実施運営業務をトータルに担う。「販促プロモーション」、「イベントプロモーション」、「広告・コンテンツ制作」の3つを主力事業とし、顧客との接点を連動させる統合的なサービスを提供している。
資本金:26億5000万円、売上高1299億8500万円(2010年3月期)、従業員数:1275名(2010年3月31日現在)
取材・文/石原 野恵、写真/吉田 庄太郎

「ビジネスの書く力」に気づかせるきっかけを

電通テックの新入社員は、入社後2カ月の研修を経て現場に配属される。当然ながら、新入社員はすぐに先輩社員と同じように、通常の業務ができるわけではない。まず彼らの仕事として課されるのは、社内外の会議での議事録や、クライアント先へ同行しての打ち合わせ報告書作成などだ。その中で新入社員を受け入れた現場から「昨今の新入社員は総合的に“書く力”が落ちているのでは」という指摘がなされるようになったと同社人材開発部の米沢弘典氏、岡野篤義氏は述べる。

「当然のことながら、新入社員は業界の専門用語や知見が少ないため、会議や打ち合わせ内容に対する理解不足が“書く力”の低下を招く一因だとは認識しています。ただ現場では、わからないなりにしっかりと話を聞き、要点を抽出し、先輩社員や上司が納得できる議事録や報告書が書けるかという点をシビアにチェックされます。このチェック時において、“書く力”の低下が懸念されています」(岡野氏)

ただしこの状況を、若手の「書く力」が落ちたとひとくくりにするのは適切ではないと両氏とも付け加えた。長年同社で新入社員研修を担ってきた米沢氏は、「15年前と比較して、必ずしも若手の文章化能力が衰えているとはいえない」と説く。

「インターネットや携帯電話が普及する以前から比べると、現在は、メールやブログなどで文章を書く機会が格段に増えている。また今の若手は、メールの短い文章に圧縮して感情を伝えることがとてもうまい。仲間内のコミュニケーションには非常に気を遣っています。決して、書く能力そのものが落ちているわけではないのです」(米沢氏)

それでは、なぜ現場の社員から「今の新入社員は書く能力が弱い」という声が挙がるのか。同社ではこれを、ビジネスシーンにおいて文章を書く際に必要な常識が年々低下しているためと認識している。仲間内のコミュニケーションには長けていても、さまざまな世代間で通用する、報告書やメールといったビジネス文書に慣れていないのだ。

「新入社員のこれまでの経験は“学生”というくくりの中でのこと。新入社員の時期は、今までとはまったく異なる“社会人”という責任ある立場への大きな転機にあたります。その社会人としての出発点で、ビジネス文書の形式に慣れていないために、自分の考えを上手く書けず、評価が低くなってしまうのは忍びない。そこで、自らの書く能力を客観的に知る機会と、ビジネスでは書いた内容で評価をされるものだと気づきを与えてやるのが研修の役目だと思うのです」(米沢氏)

集合研修の場で通信教育を活用

そこで同社が導入したのが、通信教育とライブでの研修を併用し、新入社員にビジネスにおいて正しく書く「型」を習得させるための研修だ。同社では、まず入社2カ月間は合宿も含めて研修を行う。目的は2カ月間でスムーズに現場に出られるような素地をつくること。「書く力強化プログラム」はその一環だ。

通信教育を導入している企業は多いが、テキストとレポートを同封して渡し、各自が自宅でレポートを進める場合が多い。同社では、内定者にまずテキストのみを郵送。入社後、能力測定テストを実施する。その後フィードバックがあり、「書く力」に関する特別講義を行う。また、レポートに取り組む時間は研修中に設け、研修期間中に外部講師による添削がされて戻ってくる。レポートは、報告書や議事録を書く形式で、ビジネス文書の基本的な型を習得できるようになっている(右図)。

「段階的に組み込まれたライブ版・レポート作成プログラムを通じて、新入社員が客観的に自らの“書く力”を棚卸ししながら、ブラッシュアップにつなげていく仕組みをつくりたいと考えたんです」と語る岡野氏。各自が自宅で進める一般的な方法だと、テキストを見ながらでもレポートを記入することができてしまう。しかし、テキストとレポートを切り離し、研修中に問題を解く時間を設けることで、研修する側も新入社員自身も、能力を客観的に測定し、伸ばせるのである。

文章の型を習得しビジネスの幅を広げる

新入社員の能力の棚卸しとビジネス文書の「型」の習得ということだけではなく、ビジネスにおいて「書く」ことの重要性を認識させることも研修の重要な目的。同社に限らず一般的に若手の文章能力が落ちているといわれる背景には、ビジネスシーンにおける文章能力にかかる比重が高まってきたこともあると考えているためだ。

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