J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2015年01月号

人材教育最前線 プロフェッショナル編 「私」を主語に語れる人材が真のグローバル企業をつくる

海外売上比率25%の早期実現に向け、海外事業の拡大を重要戦略に位置づける日本電気(NEC)。最先端のICTにより、グローバル規模の課題解決や、持続性のある社会づくりをめざす「社会ソリューション事業」の構築には、グローバルに活躍できる人材の育成が欠かせない。そんな同社で人事部 シニアエキスパートとして国際人事企画を担当する籔本潤氏。「私はこうしたい」「私はこう思う」という言葉と、それを裏づける信念と知識を大切にする籔本氏が求めるのは、海外で通用する、日本人の真のグローバル化である。

人事部 シニアエキスパート (国際人事企画)
籔本 潤(Jun Yabumoto)氏
1989 年入社、研究開発事務本部勤労部配属。2001年NECプロサポート出向。2008年EMEA 地域統括会社であるNEC EuropeLtd.にて地域人事制度統合と報酬制度を担当。2013 年より人事部 シニアエキスパートとして国際人事企画に携わる。

NEC(日本電気)
1899 年設立。パブリック事業、エンタープライズ事業、テレコムキャリア事業、システムプラットフォーム事業を中心に、コンピュータ、ソフトウエア、ネットワークなど、あらゆるIT 製品と技術、ソリューション・サービスを提供する。
資本金:3972 億円(2014 年3月末現在)、連結売上高:3兆431億円(2014 年3月期)、連結従業員数:10万914 名(2014年3月末現在)

取材・文・写真/髙橋真弓

主語は「私」で語れ

NECで人事部のシニアエキスパートとして国際人事企画を担当する籔本潤氏。5 名のチームメンバーを率いる同氏が常に伝えているのが、「主語を“私”で語れ」だ。例えば、相談する時や企画を提案する時に、「私はこう思う」「私はこうしたい」と主語に“私”を置いて話をさせる。

「メンバーが『私はこうしたい』と言えば、当然私は『なぜ?』と聞きます。その“なぜ”にきちんと答えるためにはバックグラウンドが必要ですし、自分の想いも必要です。反対に、『私は』がないコメントは中身が薄い。自分の主張を自信を持って言うために、自分の中でちゃんと腹落ちするよう一生懸命考え抜くことに意味があるのです」

当事者意識を持たずに実行し失敗した場合、その原因を環境や周囲に転嫁してしまいがちだ。だが自分を主語にすることで、「最後まで責任を持ってやらなければ」という意識が生まれる。さらに結果が成功でも失敗でも、振り返った時にその要因を自分ごととして考えることができる。

「人事の課題には模範解答がありません。だから何かを始める時に唯一信頼できるのは、『自分はこうしたい、自分だったらこう思う』という“想い”です。それを周りにぶつけて、『違うよ』と言われ、もう一度考え直してみる。それでも『やっぱり自分はこうだ』と思った時、その時点の正解が生まれるのだと思っています」

籔本氏がこうした考えを持つようになったきっかけは、海外での勤務経験にある。

人事部配属前の2008 年から2013年まで、EMEA地域統括会社であるイギリスのNEC Europe Ltd.に出向し、地域にあるグループ会社の人事諸制度統合と報酬制度を担当した。人事部門の同僚は全員ヨーロッパ人だったが、同僚はいつも「I (私は)」で語り、自分の意見や想いを遠慮なく互いにぶつけ合い、とことん議論し、結論にコミットしていた。

「日本人は、“私は……”という想いを持っていてもそれを表すことを躊躇し、“正解”を探そうとする傾向があります。ですが、彼らと一緒になってグローバルにビジネスを展開していくためには、まず『自分はこうありたい』という強いマインドや信念を持ち、しっかりと発信する必要があると感じたのです」

海外で学んだ「主張」の大切さ

籔本氏は海外事業所に出向するまで、本格的に英語を使った仕事をしたことがなかった。入社後に配属された中央研究所で人事として外国人研究員の受け入れを担当していた頃に英語を使っていたが、ビジネスに直結する内容ではなかったという。

そんな籔本氏を赴任先で待っていたのは、言葉の壁と、自分から積極的に動かなければ相手からは何も返ってこないという環境だった。

「海外の人は常に自分をアピールします。その中で、日本人が持つ謙虚さやシャイな態度を理解してもらうことは非常に難しい。私も最初は言葉のせいにしていましたが、実は自分の中で遠慮していた部分もありました。本社から来たとはいえ、日本のドメスティックな人事しか経験していないという気持ちから、同僚であっても彼らのほうが有能に見えたのです。グローバルな人事を彼らから学ぶ立場だと思うと自然と主張が減り、聞くばかりで、自分から話さなくなっていったのです。

ですが、彼らからしてみれば主張がなく、自分のことを話さない人はよくわからないわけです。よくわからない人に心は開けませんよね」

そんな周囲とのギクシャクした関係に悩む籔本氏を救ったのは、同社に赴任していた日本人社長だった。

「社長は、『ヨーロッパの強みがあれば、日本の強みもある。君にも強みがあるだろう。自分の信念を語ればいい。相手が言っていることがわからなければ全部Noと言ってみろ。そうすれば彼らは自分が言っていることを理解してほしいから、こちらがYesと言うまで説明してくれる』と言いました。

そこから吹っ切れて、Noと言うようになったら、本当にわかりやすく話してくれるようになりました(笑)」

言葉が多少通じなくても、自分の意見や意志を一生懸命伝えれば、相手は聞いてくれる。重要なのは経験や語学力ではなく、“私”である──。そう思うようになってから気が楽になり、周囲と腹を割って話せるようになったという。

籔本氏はこの経験を現在、若手の海外研修の設計に活かしている。

「イギリスでは、上司や同僚と信頼関係を築くのに1年近くかかりました。その期間は自分が大きく変わった貴重な時間でしたが、会社からしてみれば期待される役割を充分に果たせていない時間だったとも言えます。この経験から、海外で働くには自分を積極的にアピールし、意見を堂々と主張することが必須であり、それをキャリアの早い段階で体得するための若手の海外研修が重要だと考えています。国内で開催する異文化コミュニケーション研修などでも『沈黙からは何も生まれない』と教えていますが、やはり座学だけでは伝えきれません。若いうちに研修などで実際に海外に行き、身をもって体験しておくことで、次にビジネスで行った時に初日からスタートを切れるのです」

ビジョンも「私」から生まれる

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