J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2015年01月号

KEYWORD 4 「内なるグローバル化」と外国籍人材の獲得・活躍

労働力の確保と国際競争力向上のため、日本企業の人事にとっては、外国籍人材の獲得や活用、育成も目下のテーマとなってきている。
そうした中、海外の名だたる大学からのインターンなど、外国籍社員を積極的に受け入れているのが三井化学だ。
その取り組みの具体的な内容や、これまでの苦労や課題について、人事部グローバル人材開発グループ グループリーダーの吉田存方 氏に伺った。

吉田存方(まさのぶ)氏
人事部 グローバル人材開発グループ グループリーダー

三井化学
1997年、三井石油化学工業と三井東圧化学が合併して三井化学が発足。三井グループの総合化学メーカーとして、自動車、電子・情報材料、生活・環境・エネルギー、包装材料などの幅広い分野で、革新的な技術と素材を広く社会に提供している。
資本金:1250億5300万円(2014年3月現在)、連結売上高1兆5660億円(2014年3月期)、連結従業員数:1万4271名
(2014年4月1日現在)

[取材・文]=赤堀たか子 [写真]=編集部

国籍で採用基準の差は設けず

当社では、2005 年から外国籍社員の定期採用を行っている。これまでに中国、台湾、韓国などの漢字圏の出身者を中心に、累計で50 名ほどを採用した。

対象者は、主に日本の大学への留学生。新卒採用の中、試験も採用基準も日本人の学生と同様の方法・基準で採用している。求める資質も日本人と変わらず、「幅広い視野を持っていること」「自分で考え、周囲を巻き込んで行動ができること」などだが、外国人ならではの「新しい発想をもたらしてくれること」にも期待している。

キャリア形成も基本的には日本人と同じだ。事務系、技術系など緩やかな職種単位で採用するが、その人の能力や特性を見て配属や異動を考えるため、海外営業が志望であってもファーストキャリアが工場のコーポレートスタッフ、ということもある。

一方、外国人であることのアドバンテージを活かすため、入社後5年を目処にグローバルな業務を担当させるようにしている。ただし、この「グローバルな業務」とは海外勤務に限らない。海外の顧客との窓口業務や、海外の関連会社、関連部門との連絡など、国内にいながら海外とコミュニケーションをとる業務も含まれている。

インターンや奨学金制度も

留学生の採用に加え、2007年からはハイレベルな人材の確保を目的に、海外の大学との間でインターンシップも実施している。

現在、インターンシップを受け入れている大学は、中国の清華大学、浙江大学、大連理工大学、インドのインド工科大学、シンガポールのシンガポール国立大学と南洋理工大学の計6大学。

インターンシップの期間は4 ~ 10 週で、毎年十数名が、日本国内の工場や研究所、事業部で実務を経験している。

インターンシップにかかる渡航費や滞在費、日当などは当社が負担するため、費用はかなりの額になるが、これまでに8名のインターンシップ経験者が入社したことを考えると、優秀なグローバル人材の確保のために必要な投資だと言える。

この他、シンガポール経済開発庁と協力し、相互人材育成プログラムも行っている。

これは、東京工業大学国際大学院のプログラムに派遣する学生の学費と奨学金を当社が支給する代わりに、卒業後は最低3 年間、当社のグループ内で働くことを義務づけるもので、インターンシップの参加者がこのスカラシッププログラムに応募するケースも多い。

モノトーンな文化を壊す

外国籍の人材の採用に力を入れるようになったのは、日本本体の内なるグローバル化を進めるためだ。

当社の海外の関連会社は51社に上り、グループ売上高の45%は海外の事業によるものである。また、海外の関連会社に働く外国籍の従業員の数も5000人に達している。

アジアをはじめとする新興国のマーケットが拡大し、国際競争が激しくなる中、原料を輸入し、それを加工して輸出するという従来型のビジネスモデルが立ち行かなくなってきていることなどを考えると、今後さらに海外事業の比率は高まっていくだろう。

海外事業を拡大するうえで重要になるのが、関連会社における迅速な意思決定で、そのためには「経営の現地化」が欠かせない。現在では買収した企業以外の海外の関連会社のトップは全て日本人が務めており、部長クラスも6 割を日本人が占めているが、2016 年までに部長クラスの半分を現地化する計画だ。

そして、こうしたビジネスのグローバル化に対応するためには、日本にある本体も多様な価値観を理解し、受け入れる土壌を持つことが求められる。これまでは、日本人男性中心のモノトーンな文化の組織であったことから、内なるグローバル化をめざし、外国人の採用と活用を決めたのである。

相互理解研修と相談窓口

現在、日本法人内の外国籍の社員数は、定期採用が始まる前からの社員も含め60 名ほどだが、国内の社員総数は7800人なので、割合で見るとまだ1%にも満たない。

数が少ないこともあり、定期採用を始めてから10 年になるものの、文化の違いなどから、組織内の意思疎通がうまくいかないケースもある。

例えば、ある外国籍のエンジニアは、海外のプラント建設など、責任ある仕事を入社数年後に任されると期待していた。しかし、当社の多くの上司は、経験や年齢が上の社員から順番にチャンスを与える傾向がある。そのため、自身のキャリア意識との間に大きなギャップを感じ、悩んでしまった。

また2011年、東日本大震災の折は、東京の本社と千葉の事業所にいた20名ほどの外国籍社員が突然、帰国してしまうという事態が発生した。

人事に「こうした場合は帰国できるか」と問い合わせたうえで有給休暇を使って帰国した社員もいたが、中には上司と十分に連絡を取らずに帰国し、そのまま辞めてしまった社員もいた。

こうした外国籍社員の行動は、日本人社員にとっては衝撃だったようで、「信頼関係ができていたと思っていたのに裏切られた」「外国人はロイヤルティー(忠誠心)がない」といった外国籍社員に対する不信感につながった。

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