J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2011年12月号

JMAM通信教育優秀企業賞 表彰企業事例報告 日油 「能力開発ポイント制度」が促す 戦略的な自己啓発

通信教育を人材育成に積極的に活用し、学ぶ風土を醸成している企業に贈呈される「JMAM通信教育優秀企業賞」。12月号から2号にわたり、2011年表彰の4社を紹介する。10年以上にわたり、通信教育を社員の自己啓発に役立ててきた日油では、自己啓発と人事制度を連動させた「能力開発ポイント制度」という仕組みを構築することで、社員が自ら学ぶ意欲を喚起・維持することに成功している。「能力開発ポイント制度」とはどのようなものなのか。社員の学びと成長を刺激する同社の“仕掛け”を紹介する。

前田 晃寿 人事・総務部 人材開発担当部長

日油株式会社
1937年、日本産業の傘下にあった日本食糧工業、国産工業不二塗料製造所、ベルベット石鹸および合同油脂が合併し、日本油脂として設立。化学メーカーとして機能化学品事業、ライフサイエンス事業、化薬事業など、幅広い事業を展開する。2007年に現在の社名に変更。
資本金:177億円、売上高(連結):1541億円、従業員数:1697名(いずれも2011年3月31日現在)

取材・文/髙橋 美香 写真/日油提供(同社、油化学研究所)、髙橋 美香

自己啓発制度と人事制度をつなぐ制度とは

「バイオから宇宙まで」――化学メーカーとして8つの事業部門による多面的な事業展開を図る日油株式会社。1937年の設立以来、70余年にわたり日本の油脂化学分野のパイオニアとして業界をリードしてきた。そんな同社では、「求める人材像」として、次の4つの姿を掲げている。

●困難な課題に挑戦し、粘り強くやり遂げる人●独創性を発揮し、得意な分野を持つ人●自主的・自律(立)的に仕事のできる人●リーダーシップを発揮し、部下を育成できる人

こうした人材を育成するために同社が構築したのが、通信教育を中心とした自己啓発と人事制度を連動させた教育制度だ。人事・総務部 人材開発担当部長前田晃寿氏は、同社の育成システムについて次のように話す。「当社では、1999年度に新人事制度を導入しました。導入前に課題となっていたのが、人事制度と人材育成をいかにリンクさせるかという点です。「求める人材像」にあるような社員の自主性・自律性を養うには、自ら学ぶ姿勢を身につけることが第一歩になります。しかし、全社員が自己学習に継続して取り組む状態を実現するためには、個々人の自主性に委ねるばかりでは困難です。そのために考え出されたのが、自己啓発による学びと昇格制度を連動させた『能力開発ポイント制度』でした」(前田氏、以下同)「能力開発ポイント制度」とは、通信教育、チャレンジプログラム(公募型研修)、公的資格取得など、主体的な教育への参加によりポイントが付与されるというもの。昇格するためには一定のポイントに達することが必要で、通信教育や取得資格ごとにポイント数が設定されている。ポイントが必要数まで積算されると、昇格候補者に認定されるという仕組みだ。「ポイントは、会社側からの指名により参加した研修に対しても付与されますが、別途、自己啓発としての通信教育を受講しなければ昇格に必要なポイント数を満たせないように設定しています。いくら社員に『自己啓発で勉強しなさい』『自主的に勉強を』と訴えても、時間の経過とともに学習意欲は薄れていくものです。しかし、この制度は、自主的に学ぶきっかけともなり、主体的に学習しようとする意識を醸成するのに、大いに役立っています」

修了率94%が物語るポイント制度の効果

同社の通信教育の修了率は94%を誇る。通常、自己啓発による通信教育の場合、平均修了率は約6~7割といわれる。自己啓発でありながら、9割以上もの高い修了率をキープできているのは、能力開発ポイント制度の効果の1つだ。「能力開発ポイントを貯めるためには計画的な学習が求められます。1年に1回は現時点のポイント数を本人に通知しますが、基本的にポイントの取得方法は個々に委ねられています。昇格するためにはあと何ポイント必要か、いつまでに何を勉強するべきかを考えながら通信教育の受講や資格取得を行っていくのです」このように、自分のキャリアプランを社員自らが考え、学びを実行するという仕組みがあり、それによって学習風土が醸成されている。「社員からは、『能力開発ポイント制度がなかったら、勉強する機会はこれほど多くなかっただろう』『常に自己学習を行うことを求められる制度があるからこそ、通信教育などで勉強をしようという意欲が維持できたと思う』などの好意的な意見が上がっています。負担だ、といったネガティブな意見はほとんどありません。昇格に必要なポイント数も、社員に過度な負担がかからない程度に設定するといった配慮も行っています」この能力開発ポイント制度が適度な緊張感を生み、社員が学びの一歩を踏み出すための背中を押すような機能を担っているといえる。

修了試験を実施し昇格を学びの機会に

こうして自己啓発と人事制度をうまく連動させている同社では、「昇格のタイミングは学びの絶好の機会」と捉え、昇格前の通信教育(必修講座)の受講と、その修了試験を実施している。管理職階層や主任クラスのそれぞれに昇格するためには、指定された講座を受講する必要がある。また、通信教育受講後には、修了試験を受験。所定点数以上で合格(昇格候補者に認定)となる。「必修講座修了試験は、共通科目・選択科目の計2科目。財務分析や経営戦略など、各階層で習得してほしい内容を設定し、学習を促しています」

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