J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2012年02月号

TOPIC②  社会変化に対応した人と組織を創る「 能力開花―KAIKA―」プロジェクト

個人の生き方や価値観が多様化し、社会に求められる豊かさも一様ではなくなった。それゆえに、変化に富む社会に対応し、豊かさに貢献できる企業こそが、将来の市場競争において優位に立つことができるといえる。そこで社団法人日本能率協会(JMA)は、「能力開発優秀企業賞」の概念を発展させ、「個」の成長と「組織」の活性化、「社会」への貢献をスパイラルアップさせる「能力開花―KAIKA―」を提唱。賞も「能力開花大賞」へとリニューアルした。その概要と期待される効果を紹介する。

花田 光世(はなだ・みつよ)氏
慶應義塾大学 総合政策学部 教授 SFCキャリアリソースラボラトリー代表 
1971 年慶應義塾大学文学部卒業、南カリフォルニア大学大学院社会学専攻博士課程修了、Ph.D。産業能率大学教授、同大学国際経営研究所長等を経て、1990 年より現職。著書に『グローバル戦略を支える人事システム』など。

社団法人日本能率協会(JMA) 経営研究所

能力開発から能力開花-KAIKA-へ花田光世 慶應義塾大学 総合政策学部 教授 SFCキャリアリソースラボラトリー代表

リニューアルの背景

1988年から日本能率協会が授与していた能力開発優秀企業賞が、2012年9月、新たに能力開花大賞(KAIKA Awards)として衣替えをすることとなりました。賞の獲得をめざして努力してこられた企業の能力開発担当の多くの皆様や、賞を獲得された企業の皆様にとって、「どうして変わるのか」「なぜこの時期なのか」という疑問を持たれたかもしれません。

能力開発優秀企業賞が能力開発の分野で果たしてきた役割は少なくありません。日本能率協会からは、今までさまざまな賞が授与されてきましたが、能力開発優秀企業賞はその中でも長く継続されてきた歴史ある賞でした。その賞が、今回名称も含めて一新されることになりました。その背景には、組織を取り巻く能力開発の在り方が大きく変化してきている現実があります。

いうまでもなく、企業・組織には時代・社会の変化に絶えず対応し、変化することが必要不可欠です。能力開発の仕組みや運用もそれに応じたり、あるいはその変化を先取りする形で機能しています。また能力開発の担当者、そしてとりわけ能力開発の仕組みを活用する、一人ひとりの従業員の能力開発への取り組みや実践も、新たなレベルに変化・新化することが要請されているという現実があります。この度の衣替えは、その変化・新化を「開花」と捉え、新たな価値を組織と一人ひとりの個人が生み出し続け、能力開発が進化することを期待してのものです。

能力開発優秀企業賞から能力開花大賞へ

今まで、能力開発優秀企業賞の審査をお手伝いしていて、感じていたことがあります。賞の基準として、戦略、体系システム、効果、風土、そして加点評価のユニークさという視点で能力開発を評価すると、能力開発の体系・仕組みをしっかりと確立・保持している企業が表彰の対象となってきます。そうなると、大企業あるいは大企業の関連組織にとって優位な賞となりがちで、ユニークな展開を加点評価しても、中小企業や急速に成長する個性的でダイナミックな企業は評価されにくいのです。また、効果といっても、長期・安定的な効果が評価されがちとなり、どうしてもビビッドな動きを評価しにくい課題がありました。

風土の評価においても、企業グループ全体、あるいは企業組織全体をカバーする組織風土が評価の対象になり、企業組織の中の特定部門や、活動が長くなりつつある大規模プロジェクトなどの活動を評価しにくいという課題がありました。

それに対して、今は組織内の多様な活動が評価され、多様性、そして一人ひとりの個性が重視される時代です。グループ経営において、多様な職場、組織、グループの活動が重視され、それに見合った能力開発が必要とされる中で、従来型の風土をどのように捉え直すかが、多くの企業にとって課題となってきています。

さらに、対象となる「組織体」の大きな変化があります。現在の企業活動は、ひとつの企業の活動を超えたさまざまな「組織体」との協業から成立しています。企業の日常活動は、組織間の連携、非営利組織に代表される組織の活動、公的組織の活動、組織と組織外の個人が交流し協業するプラットフォームでの連携活動など、さまざまな活動から成立しています。能力開発の仕組みや実践は、その新たな活動の展開から学ぶ時代になってきています。

能力開発に従事する関係者は、このような新たな「組織体」の動きを無視することなく、新たな活動を理解し、実践に応用する姿勢を持たなければなりません。関係者同士が相互に啓発し、新たな「組織」の能力開発の仕組みを開発していくプロセスが必要となっているのです。能力開発を指導する側にも、「上から目線」でそのような活動を「評価」するのではなく、多様な活動に同じ目線で参加し、相互啓発をコーディネートしていく役割が求められてきています。

能力開発優秀企業賞の審査委員会や、新しい「能力開花大賞」の検討チームはその流れを汲み、ダイナミックな活動をめざす組織を、評価というよりも「認定」し、そのプロセスの活発化の場やプラットフォームの提供を行うことが重要という認識に至りました。それゆえ「能力開花」とは、賞の授与にとどまらず、ひとつの運動、プロジェクトであるといえます。

能力開花運動とは:「社会」と「個」

この「能力開花-KAIKA-」の運動では、「社会と組織」との関係、「個人と組織」との関係が重視されています。それらは従来の能力開発優秀企業賞が十分にフォローできなかった課題でもありました。もう少し踏み込むと、組織の「社会的な位置づけ」と組織を構成する「個々の成員の位置づけ」において、です。組織の能力開発に「社会」と「個人」、そして多様な「組織活動」を取り込む新たな運動といえます。

従来の能力開発優秀企業賞では、「組織の社会性」はもともと考えられるべきものというより、企業が自社戦略に取り上げた時のみ対象となり、個人の働きがい・個の自律も同じ扱いであったといえます。能力開発の視点で捉えると、社会・個人というのは、組織の能力開発の仕組みにとって「目的合理的」なプロセスの中にあるものでした。つまり、初めにありきは能力開発の仕組みであり、その仕組みが戦略としてめざしているものに「社会や個人」が取り上げられ、社会・個人への対応が具体的に手段・手法として取り上げられるという位置づけです。

それに対して、「社会」と「個人」をより重視するということは、戦略という対象としてたまたま入る可能性があるかどうかではなく、むしろ能力開発のめざす組織の活性化と成長の先に、社会と個人があるという考え方への変化です。能力開発の充実が、社会をより豊かにし、個人の生きがいを促進するという「価値」を生み出すという考え方ともいえます。これを「価値合理的」な活動とも表現しますが、KAIKAの基本方針は、変化の激しい時代に対応する手段・手法を研究する「目的合理的な活動」に留まらず、むしろ、激しい変化に我々は何を拠り所や方針として、能力開発を検討すべきかという、「価値合理的な活動」を採用することが重要となります。

KAIKAは、変化の激しい時代、能力開発がめざす組織の活性化と成長が、いったい何のためなのかということを問い直し、多様な組織活動を通じて、社会の発展、そして個人の働きがい・生きがいの向上につながるという視点を、従来以上に大切にする運動と位置づけています。繰り返しになりますが、「能力開花-KAIKA-」は、企業の社会性と一人ひとりの個を大切にすることを、組織の能力開発が生み出す価値として重視するという運動なのです。

この関係性をモデル化したものが図表です。図表でも明らかな通り、従来は組織のダイナミズムを中心とした能力開発の仕組みだったのですが、それに社会性、個人のダイナミズムを組み込むことで、そこから新たな価値創造が生まれるというモデルが提起されました。組織の能力開発が社会性、個人のダイナミズムと共生・共存し、

①個人が組織・社会の中で豊かに生きること(よりよい働き方・よりよい生き方)

②個々人の成長とアイデンティティの確立

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