J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2012年02月号

企業事例③マツダ 人づくり・職場づくりから始まる新時代のメンタルヘルスケア

2万人を超える社員を擁するマツダ。同社では、40年以上の長きにわたり、社員の心身の健康についての取り組みを積極的に行ってきた。誰もがメンタル不調に陥る可能性がある時代では、人づくり、職場づくりからメンタルヘルスケアに取り組む必要があると話すのは、同社健康推進センターの菖蒲田 裕子氏だ。氏によれば、マツダ流ポジティブ・メンタルヘルスケアは、人づくりと密接なかかわりを持つものである。そのココロとは。

菖蒲田 裕子 氏
人事本部 安全健康推進部 健康推進センター マネージャー

1920年1月30日設立。広島県に本社を持つ。乗用車・トラックの製
造、販売等を手がける。主要製品は四輪自動車、ガソリンレシプロエンジン、ディーゼルエンジン、ロータリーエンジン、自動車用手動/自動変速機など。国内以外に、米国、中国、台湾、タイ、ジンバブエ、南アフリカ、エクアドル、コロンビアなど海外にも生産拠点を構える。
資本金:1864億9973万6762円、売上高(連結ベース):2兆3257億円(2010年度)、連結従業員数:3万8117名(2011年3月現在)

取材・文・写真/髙橋美香

会社による宣言が施策の強化を後押し

「当社のメンタルヘルスケアの歴史は長く、1968年に開始した復職審査にさかのぼります。専門的な領域ということもあり、外部の精神科医に協力を仰ぎながら、メンタル不調を訴える社員への支援を行っていました。以来、今日に至るまで社員の心の健康にまつわる課題には、社を挙げて取り組んでいます(図表1)」

こう話すのは、人事本部安全健康推進部

健康推進センターでマネジャーを務める菖蒲田 裕子氏だ。

マツダには、実に2万人を超える従業員が所属している。そうした企業規模で、社内は必然的に日本社会の縮図の様相を見せる。メンタル不調に限らず、メタボリックシンドロームや禁煙対策など日本社会の諸課題の中には、同社の中でも課題として認識されることも多くある。

そうした状況から、1968年開始の復職審査をはじめ、1988年開始の保健師による職場巡回相談など、他社に先駆けてメンタルヘルスケアに取り組んできた同社。取り組みをさらに進化・体系化するきっかけとなったのは、2000年に厚生労働省から出された『事業上における労働者の心の健康づくりのための指針』だった。「国から一定の指針が出されたことを契機に、当社として今まで取り組んできたことを再点検すべきとの判断から、施策の見直しが図られました。そこで出されたのが『マツダハートフル宣言』です」

マツダハートフル宣言とは、2003年に出された社員の心の健康づくりにまつわる宣言のこと。「マツダにとって最も重要な資本は従業員の皆さんです」から始まるメッセージで、会社としてメンタルヘルスケアに労使協同で取り組んでいくことを明言したものだ。以来、同社の取り組みの拠り所、指針となっている。「これによって、当時専務だった、現・代表取締役会長 社長兼CEO山内孝が社員のメンタルヘルスケアに力を入れることを宣言したことは、取り組みを推進させるうえで強い後押しとなりました。いわばメンタルヘルスケアにより力を入れて良いというお墨つきをもらったようなものです。不調者に対する限定的な取り組みから、全社員対象の取り組みへと強化するきっかけになりました」

部門を越えた連携が職場づくりを支える

こうして本格的にメンタルヘルスケアの取り組みを再スタートしたマツダ。「体制づくり」「人づくり」「職場づくり」「環境づくり」などから多様な施策を講じている(図表2)。「マツダハートフル宣言以降、メンタルヘルスケアの施策は、メンタル不調を訴える人に対するサポートがメインでした。しかし、疾病予防、一次予防の重要性が問われるようになっている現代においては、メンタルヘルスケアの対象者は全社員。これは、職場づくりや人づくりといった“教育からのアプローチ”が必要であることを意味しています」

そこで、そもそも不調者を出さないための取り組みについて、労使協同メンタルヘルスプロジェクトで対策を検討し、2008年から「ワンマツダいきいき職場づくり運動」を展開。この取り組みは、全社の安全健康管理方針として3か年計画で推進されるものであり、第一次計画の2008年~2010年はその仕組みづくりに注力する3年間となった。

まず「体制づくり」の面では、健康推進センターのスタッフ以外に各部門にメンタルヘルス推進リーダーを設置。職場と健康推進センターの連携を強くするための推進役をつくり、職場におけるメンタルヘルスケアを円滑に進める体制を強化した。

また、この「体制づくり」をベースに、「人づくり」の面では、管理者と社員それぞれに向けたメンタルヘルス教育を実施。管理者に対しては、メンタルヘルスを正しく理解することを目的としたセミナーを開催している。ただし、セミナーで伝えるのはそれだけではない。「たとえば、とにかく仕事に一生懸命なことが大事だと考える上司世代の一方で、最近の若手社員世代には、プライベートも仕事も両方充実させたいと考える人が増えています。そこで、このセミナーでは、部下のメンタル面の変化を見ることだけでなく、世代間の考え方の違いを理解してもらうことにも力を入れています」

その他、一般社員には、自分のストレス状態に気がつき対策を講じる力を身につけるために、教育の面からのアプローチを行っている。「一般社員に向けたメンタルヘルスケアは、入社時と入社2~3年目の社員を対象に行っています。入社したての時期と、入社してしばらく経って仕事を多く任されるようになる2~3年目というのは、最もメンタル不調を起こしやすい時期です。そうした時期にメンタルヘルスの研修を入れることで、未然予防につなげていきたいと考えています」

こうしたメンタルヘルス研修は、人事本部のキャリア開発センターと連携し、階層別教育など、通常の教育の中に織り交ぜる形で実施。メンタルヘルスの問題をキャリア開発の側面からもてこ入れし、人づくり、教育の一環として予防や、職場づくりに取り組んでいるのだ。

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