J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2012年02月号

企業事例②NTTデータ 一層の予防活動へシフト。心身の健康状態を前のめりにキャッチ

心の健康状態は見えにくく、組織のアプローチは概して治療が必要になってからのリアクションになりやすい。そんなメンタルヘルスケアにおいて、治療までには至らない(境界領域)社員を積極的にすくい上げようとしているのが、大手システムインテグレータのNTTデータだ。受け身ではなく前のめりに危険信号を捉える予防策は、いかにして構築されているのか。具体的な施策を聞いた。

村井 敏行 氏 人事部 健康推進室 課長

1988年に日本電信電話株式会社から分社(※当時は「NTT データ通信株式会社」、1998年に社名変更)して設立。データ通信やシステム構築事業を行うシステムインテグレータ。中央省庁向けの公共システムから、金融、製造、流通などの法人向けシステムまで、さまざまな分野の情報システムを開発・提供し、2007年には売上高1兆円を突破。
資本金:1425億2000万円、売上高:1兆1619億円(2010年度)、従業員数:1万723名(2011年9月30日現在、単独)

取材・文・写真/中山景

一次予防活動への転換

エンジニアの長時間労働が課題のひとつとされるIT業界。それがメンタルヘルス不全に直結するただ1つの要因ではないが、長時間労働による疲労とストレスが、働く人の心身に不調をきたす可能性を高めることは間違いない。

IT業界大手のシステムインテグレータであるNTTデータでは、人財の健康第一を目標に掲げ、長時間労働の削減および社員の健康維持・増進に注力している。同社は1990年代終わり頃から、専門医等を招いて産業保健スタッフ体制を築くとともに、セルフケア、ラインケアや職場改善、コミュニケーション施策などの視点でさまざまな取り組みを行ってきた(図表1)。まさに“あの手この手”で不調者に対処してきたが、2011年度からは、それまでの活動をベースにさらなる“予防的観点”に取り組みのポイントをシフト。若年層を中心に、異動・昇格時など大きな環境変化が伴う場面での健康予防に重点を置いている。「以前の健康管理体制では、投薬も含めた取り組みを行い、不調が顕在化し始めた社員を中心にフォローしていました。しかし、本来は不調に陥る前、つまり治療が必要になる前にフォローできるのが一番良いはずです。潜在的にメンタルヘルスの不調の兆しを持っている社員をいち早く見つけ、より多くの社員を見られるようにするのが、予防中心の体制にシフトした一番の目的です」

こう語るのは、人事部・健康推進室の村井敏行課長だ。

健康推進室は、2010年度にスタートした新しい組織である。それまで要フォロー社員などへの個人ケアを担っていた「ヘルスケアセンタ」と、職場に出向いての組織的健康管理を担っていた「職場保健グループ」を統合し、医療の専門スタッフを1つの組織内にまとめたという。同時期に会社組織がカンパニー制に移行したことに伴い、カンパニー単位で社員と医療スタッフが密接した保健体制の確立を狙ったもので、産業医が4名、保健師が15名常駐する手厚い健康管理体制である。

セルフケア:疲労蓄積度や勤務時間をセルフチェック

新しい健康管理体制の着眼はつまり、予防の強化、早期予兆の発見である。中でも若年層は、特に重点的なターゲットだ。「メンタルヘルスの不調で、近年、入社後3年目までの社員が訴えることが多いんです。一概にはいえませんが、若い年代にストレス耐性への脆弱性の傾向があることは、専門家からよく指摘されるところです」

そこで同社では、2011年より、それまで入社1年目だけだった保健師との全員面接を新たに3年目の社員も対象に拡大。仕事の状況や心境などを聞いて、不安や不調の兆しが見られれば適宜専門スタッフへ引き渡すなどの対応を行うこととしている。

また、ストレスや疲労の温床である長時間労働への対策としては、「疲労蓄積度チェック」も取り入れた。対象となるのは、1カ月に45時間以上の時間外労働を行った社員。「イライラする」「不安だ」「仕事中、強い眠気に襲われる」などの自覚症状と、「1か月の時間外労働」「不規則な勤務」などの勤務状況を問い、7段階で疲労度を評価する。「2010年度までは、時間外労働が80時間を超える社員を対象にしていましたが、より早い段階でアプローチできるよう、45時間以上の社員に対象を広げました。このチェックで疲労度が高いと認められた社員は当然ながら、そうでなくても面接を希望する社員には、産業保健スタッフがサポートを実施しています」

メンタルヘルスの不調は目立った症状が表に現れにくく、他者も本人も気がつきにくい。よって、予防の第一段階となるセルフケアが早期発見の鍵を握る。同社では他にも、自分の勤務時間を意識させるシステム(パソコンのログイン、ログアウトで勤怠管理)や、Web健康問診(各自の健康診断と同時期に行う)などを導入し、社員の自覚とメンタル面を含めた健康アセスメントで気づきを促している。

そして、基本となるセルフマネジメントやメンタルヘルス不全予防のためには、最低限の知識も必要である。その知識を補うための健康教育も当然行う。「新入社員研修での産業医や保健師による講話や、セミナーを通じて教育を行っています。2011年度からは若年層本人たちだけではなく、彼らの育成指導者やトレーナーに向けても、不調者を出さないためのライン教育を実施するようにしました」

ラインケア:管理者の知識向上を組織で支援

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