J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2012年02月号

企業事例①アシックス ココロとカラダの健康を守る人事‐保健スタッフの強力タッグ

スポーツシューズ、スポーツウェアなどのブランドで世界的に知られるアシックス。「健全な身体に健全な精神があれかし-“Anima Sana In Corpore Sano”」を創業哲学とする同社では、人事総務部と健康推進室が綿密に連携を取りながら、メンタルヘルス対策に積極的に取り組んでいる。全社員への面談から、スポーツ用品メーカーらしいウォークラリーまで、同社のメンタルヘルス対策を紹介する。

和田 敏彦 氏
管理統括部 人事総務部 健康推進室長 兼 人事管理チーム 参事
宮嵜千鶴子
管理統括部 人事総務部 健康推進室 保健師

1949年創業。スポーツ用品を中心としたアシックスブランドを世界で展開。海外売上比率が国内を上回る(海外58.4%、国内41.6%)グローバル企業として知られる。
資本金:239億7200万円(2011年3月31日現在)、売上高:2353億円〔連結〕、673億円〔単体〕(2011年3月期実績)、従業員数:5604名〔連結〕、1382名〔単体〕(2011年3月31日現在)
取材・文・写真/石原野恵

全社員と面談して普段の状態と予兆を把握

長引く不況や競争の激化など、ビジネスパーソンを取り巻くストレス要因は増加する一方だ。いつ、どこの職場でメンタル不調を訴える者が出てきても、何ら不思議はないというのが日本企業の現状である。

スポーツ用品の製造・販売を通して世界の健康に貢献するアシックスであっても状況は同様である。「やはり世間の企業と同じように、少しずつメンタル不調を訴える者が増えてきているなと感じていました」と語るのは人事総務部の和田敏彦氏。人事管理チームの参事として人材配置や育成等を扱いつつ、健康推進室長を務める。

和田氏が統括する健康推進室は、2005年に設立された。上記の状況を受け、保健師、看護師を常駐させて、心と体の健康相談を実施。メンタルヘルス、メタボリック、喫煙への対策を三本柱としている。

健康推進室では、2006年から心療内科医と顧問契約を結び、いつでも社員が相談に乗れるようにしてきた。しかし、そうした体制を整えても社員はなかなか相談に来ない。そこで2008年から、「メンタル不調に悩む社員を少しでも早く見つけて、サポートする」(和田氏)ことを目的に、全社員面談を開始した。役員、管理職、正社員、契約社員、派遣社員、パート社員など、社長・会長を除く全従業員が対象となる。

面談ではまず健康診断の結果をもとに二次検診項目を確認し、通院・受診などの状況をチェック。厚生労働省が指針として出している「職業性ストレス簡易調査票」によって、仕事の負担度や対人関係、職場内の支援度などをヒアリングした。

面談でのポイントについて保健師の宮嵜千鶴子氏は次のように述べる。「面談では、皆さんに必ず健康上の目標を立ててもらうようにしました。それは、たとえば“ストレスに強くなる”でもよいですし、健康な方は“現状維持”でもよいのですが、自分で目標を立て、日頃からそれを意識して仕事をしていただくことが大切なのです」(宮嵜氏)

同社がこの面談を設定したのは、単に社員の健康状況を確認するだけではなく、別の狙いもあったという。「健康推進室を設けても、一度も話をしたことがない保健師にいきなりメンタルの相談をしに行くのは敷居が高いと思うんです。一度、社員一人ひとりと対話することで、それ以降は相談しやすくなるだろうと考えました」(宮嵜氏)

つまり全社員面談を行って健康推進室の存在を浸透させ、相談しやすい環境をつくろうという狙いだ。

対話を継続することで社員の本音が見えてくる

アシックスの規模で全社員の面談を行うことは、面談する側にとっては大変な労力を要する。実際に面談担当者からは「話を聞くことはとても疲れる」「意外と、すぐに対応しなければならないメンタル案件は少ない」「効果がすぐに出ない……前年にも減量を指示した人の体重が、かえって増えている……」などのネガティブな感想もいくつか挙がった。しかしそれ以上に「気軽に相談に来てもらえるようになった」「もしかして介入が必要か、という気づきもあった」などその効果を訴える声が多く、「元気な時を知っているから、メンタル不調時に比較ができる」と、継続することの重要性を唱える声も上がったという。

和田氏も、地道な面談を続けることの重要性についてこう話す。「全社員の面談を継続することはなかなか難しいのですが、2年に1回は実施するようにしています。全社員の面談を行わない年でも、新入社員、海外赴任者、異動があった人、それと健康診断の結果が思わしくなかった人については面談を行っています。2年、3年と面談を継続することで信頼関係もでき、仕事や人間関係に対する本音も聞くことができますから、やはり継続は大事だと考えています」(和田氏)

身体の健康だけではないスポーツイベントの効果

こうした面談の目的は、主にメンタルヘルス不調の早期発見や予防である。加えてアシックスで重視しているのは、全社員を対象とした年間を通しての心身の健康づくりだ。同社では2010年から会社のイベントとしてウォークラリーを実施。2011年には、年間を通した健康づくりを推進する『アシックスヘルスアッププラン』(AHP)を制定した。

AHPは、年間を通して楽しみながら健康づくりをしようという試み。健康推進室が用意した「ヘルスアップリスト」の中から項目を選び、それをクリアして健康推進室に報告すると、スタンプがもらえ、これを貯めると景品を手に入れることができる。参加は自由(任意)のため、“イベント感”を持たせて社員が参加しやすくなるように工夫を凝らしている(図表)。

ヘルスアップリストには、たとえば「健康診断で『異常なし』または『日常生活に支障なし』」「前年度健康診断結果より改善している」といった健康状態に関する項目の他、AHPの年間イベントである「アシックス禁煙デー」「体力測定会」「卒煙マラソン」などへの参加も含まれる。

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