J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2012年02月号

巻頭インタビュー 私の人材教育論 判断の軸を持つ個人と組織こそが変化に対応できる

普段の生活で我々が見る地図は、もはや紙媒体を通してではなく、カーナビやスマートフォンといったデジタル媒体のものがほとんどではないだろうか。このことは、地図業界を巡る変化の激しさを意味している。この激しいビジネス環境の変化に対応するために、髙山善司社長が社長就任の翌2009年に発表した長期経営構想が「ZENRIN GROWTH PLAN 2013」。そこに託されたのは、地図の制作会社から、「知・時空間情報」の総合プロバイダーへと転身するために、組織をどうまとめ、個々のモチベーションを高めていくのか――。5年、10年先を見据えた戦略と人づくりを聞いた。

髙山 善司(Zenshi Takayama)氏
生年月日  1962年4月24日
出身校   西南学院大学商学部
主な経歴
1986年4月 ゼンリン入社
2003年4月 東京第二支社長
2004年4月 営業本部副本部長
2005年4月 経営戦略室長
2006年4月 営業本部長
2006年6月 取締役営業本部長
2008年4月 代表取締役社長就任
現在に至る

ゼンリン
1948年創業、1961年設立。『知・時空間情報』の基盤となる各種情報を収集、管理し、住宅地図帳などの各種地図、地図データベース、コンテンツとして提供。また、それらに付帯、関連するソフトウェアの開発・サービスの提供。国内8社、海外5社の関連会社を持つ。東証一部上場。
資本金:65億5764万円、連結売上高:528億8000万円、単体売上高:383億8200億円(ともに2011年3月期)、単体従業員数:2015名(2011年3月31日現在)

インタビュアー/赤堀たか子Interview by Takako Akahori写真/飯山翔三Photo by Shozou Iiyama

地図メーカーから、情報のプロバイダーへ

――2008年に社長に就任され、その翌年、長期経営構想「ZENRIN GROWTHPLAN 2013」(以下、「ZGP2013」)を策定されました。どのような内容なのでしょうか?

髙山

これは、“地図の制作会社”という従来の位置づけから、“あらゆる情報を収集・管理して提供する「知・時空間情報」の総合プロバイダー”へと転身するための成長戦略です。2009年から2013年までの5年間に、「既存事業の構造改革」、「新規事業の基盤確立」、「グローバル事業の再検証」を実現することで、10年後の2019年には、連結売上高1000億円をめざすためのプロセスと位置づけています。

――「ZGP2013」を策定された目的は何でしょうか?

髙山

当社の場合、創業以来、「情報を集めて紙の地図や地図のデータベース(DB)をつくり、それを販売する」という自己完結型の事業を長年続けてきました。

それが近年は、カーナビ、携帯電話、インターネットなど、さまざまな媒体に対して、地図情報を提供するようになりました。

ご存知のようにこれらの業界は、たとえば、スマートフォンのような新しいタイプの端末が登場したり、Facebookなどの新しいサービスが登場したりと、常に変化しています。そうした変化の激しい業界に対応できる体制を整えておかなければ、企業として存続し続けるのは難しいといえます。

以前から3年単位の中期経営計画はありましたが、それは、既存の事業展開の中で業績をどれだけ伸ばすかという観点からつくられていたものでした。しかし、市場の環境が大きく変わりつつある今、5~10年という長期的な視点で、事業の在り方そのものを見直す必要があると考えたのです。

変化が激しく、1年先のことさえわからない時代に5年も10年も先を見ることができるのかという声もあるでしょう。ですが、むしろ、変化が激しいからこそ、時代を先読みし、仮説に基づいた戦略を立てることが大切なのです。

基軸となる戦略を持てば、それが判断の拠りどころになり、臨機応変な対応も可能になるのです。

目標とアクションを連動させモチベーションを高める

――「ZGP 2013」では、2009年から2011年の最初の3年間を「転換期」として位置づけ、「組織戦略」を主要施策のひとつに掲げています。「組織戦略」では、「モチベーションマネジメント」、「プロセスマネジメント」、「コミュニケーションマネジメント」を課題として挙げられていますが、具体的には、どのような取り組みを行っておられるのでしょうか。

髙山

1つは、経営目標と個人の業務とのつながりを明確にすることで、従業員のモチベーションを高める仕組みづくりです。

これまで当社では、数値目標はあっても、それが各人のアクションプランとは結びついていませんでした。

そこで、「ZGP2013」では、経営目標を個人のアクションプランにまで落とし込めるようにし、仕事の成果を数値で示せるようにしようと考えました。また、各人の仕事が、部署、あるいは、会社全体の中でどの部分に貢献しているかも見えるような仕組みを検討しています。

自分の仕事の成果が数字で測れれば、従業員のモチベーションは高まりますし、自分の仕事の位置づけがわかれば、その仕事をする意義も理解できます。そうなれば、企業理念や行動指針を口うるさくいわずとも、会社全体のベクトルが合うようになるはずです。

2つめは、責任の所在を明確にし、スピーディーな意思決定ができる体制づくりです。

従来の経営計画では、数値目標を掲げるだけで、それをどう実現するかについては、あまり議論されてきませんでした。

日本の組織は、多かれ少なかれ、「結果はどうあれ、一生懸命やることが大切」という風潮があるように感じます。

たしかに、勤勉に頑張ることはいいことです。しかし、頑張っても結果=収益につながらなければ、企業は存続できません。顧客に商品やサービスを提供し、株主に利益を還元し、雇用を守るためには、収益を上げ続けることが欠かせないのです。頑張ってさえいればいいというものではありません。

むしろ頑張って成果を出している人がいれば、その頑張りの中身を明らかにし、皆で共有する。そして皆で結果を追求していくという真剣な姿勢が必要だと考えています。

特に当業界は、競合他社が少ないこともあり、危機意識が希薄です。

しかし、企業である限り、常に危機意識を持ち、備えをしておくことは必要です。

そこで、執行役員制度を設け、責任の所在を明確にするとともに、執行役員には、担当部門の事業計画を策定してもらうようにしました。

事業計画を策定する過程で、現状と施策のギャップが見えてくれば、“どうすれば成果を上げられるか”ということを本気で考えるようになります。

まだ過渡期ではありますが、こうした取り組みを続ける中で、各部門の部門長には、仮説を立てながら論理的に考える習慣がついてきたと思います。

コミュニケーションを促進し組織を活性化

3つめは、組織間、個人間という『間』のコミュニケーションを活発にし、情報を正確かつ迅速に流通させ、信頼し合える組織をつくることです。

先にも述べた通り、当社の事業は、「情報を集めて地図を作り、それを販売する」という自己完結型の事業を長年続けてきました。

しかし、最近は、カーナビ、携帯電話、インターネットなど、さまざまな媒体に対して、地図情報を提供するようになりました。そうすると連携する企業が多岐にわたり、しかも、それらの企業全てと円滑なコミュニケーションをとらなければなりません。

これは、社内においても同様です。自部門の業務だけにとらわれることなく、全社的な視野を持ち、部門間の連携による相乗効果が出るように工夫することが大切です。

しかし、最近は、特に若手を中心にですが、人とのかかわり方に希薄さが感じられます。仕事を終えた後にビジネススクールに通うなど、真面目で勉強熱心な人も多いのですが、スキルを磨くことに終始し、周囲の人と本音でやりとりをしたがらないのではないか――その点を危惧しています。

勉強をして資格をとろうといった行動は、早く自己実現したいという気持ちから生じるのかもしれません。しかし、私は基本的には自己実現ではなく、他己実現と考えています。周囲の人と本音の話をしていなければ、せっかく勉強をして資格をとっても、それを活かす場がないと思いますね。

そもそも人とのかかわりの中で、叱られたり、感謝されたりすることで、仕事のやりがいを感じ、意欲も高まるのです。みんなが小さくまとまってしまえば、組織の活力は、そがれてしまいます。

――では、コミュニケーションを促進するために、何が必要でしょうか。髙山 1つは、環境づくりです。

髙山

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