J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2013年03月号

人材教育最前線 プロフェッショナル編 自らの客観化を促せば、 イノベーションが起こり、人は育つ

世界のソニーらしい自由闊達な発想から誕生したソニー損保。
誰も挑戦しなかったことをいち早く成し遂げるというソニーのDNAを受け継ぎ、損保市場に新たな時代を切り開いた。
ダイレクト自動車保険のリーディングカンパニーとして展開してきた同社の目下の課題は、創造する風土を大切にし、イノベーションを続ける企業文化を絶やさないという点にある。
同社の立ち上げから人づくりに携わってきた齋藤則明人財開発部長は、「教育とは自己の客観化により、自らなすべきことに気づいてもらうこと」だと話す。
こうした育成観に至った背景には、若手時代の出会いと経験があった。

齋藤 則明 氏
1987年セゾングループのディベロッパーに入社。
不動産の開発・販売、運営ビジネスの立ち上げなどを経て、1992 年人事部門へ異動。
1998 年にソニー損害保険に入社。
同社の創業時から参画し、入社以来14 年以上、人事制度、組織体制の整備に努める。2011年人事部から人財開発部と組織名称を変更。
現在に至る。

ソニー損害保険
1998年に設立。“Feel the Difference”~
「この違いが、保険を変えていく」をスローガ
ンに掲げ、代理店を介さずに販売するダイ
レクト保険に強みを持つ損害保険会社とし
て知られる。
資本金:200 億円、正味収入保険料:791
億4100万円(2012年3月期)、社員数:
979 名(2012年3月31日現在)

取材・文/道添 進 写真/本誌編集部

革新的なビジネスにふさわしい人材育成

代理店を介さないダイレクト販売、リスク細分型自動車保険など、1998 年の設立以来、斬新な商品とサービスを次々と提供してきたソニー損保。

齋藤則明氏は、同社の創業準備期から一貫して人事担当として参画。革新的なビジネスにふさわしい人材育成を具現化し、日々進化させている。

現在、同社が取り組んでいる人材育成の目標は、「新しい顧客価値の創造」。これは、会社が大きくなろうとも、創業時の自由闊達なマインドを失わず、お客様にとって価値ある商品やサービスを創造していくことにより、持続的に成長していこうというものだ。

そのために人材育成の最も大切な役割は、社員に「気づき」を与えることだと齋藤氏は語る。「今の自分に何が足りないのか、他のメンバーからどう見られているのか。自らを客観的に見つめるため、会社のあらゆる場面で気づきを与えることこそ、教育の最も重要な目的だと思うんです」

気づきを促す機会があれば、人は自発的に変わる。それが齋藤氏の教育観であり、人づくりにおいてのポリシーだ。

主観の客観化を繰り返すことで見えてくる価値

齋藤氏がこの信念にたどり着いたきっかけは、20代の後半から30 代の前半のある体験に基づいている。

1987年、好景気の最中に齋藤氏は新卒でセゾングループのディベロッパーに入社。ニュータウン、マンションから、ホテル、ゴルフ場、アミューズメント施設などの開発や販売、運営に携わった。

やがて同グループにより運営会社がいくつも立ち上がったことに伴い、社員の募集から労働環境の整備、労務管理などを担当。人事の世界へと足を踏み出していった。

だが、バブルの崩壊を機に、事業は一転して縮小均衡へと舵を取ることになる。入社5年目を迎えていた齋藤氏は、人事部に異動。配属先の任務は、子会社の統廃合・整理見直しなど、グループの業績をどう立て直すかということだった。

若くして難問に直面することとなった齋藤氏だったが、現在の齋藤氏を形づくるともいえるような忘れがたい出会いがあったのもちょうどこの頃。当時、労務分野においてお世話になっていた弁護士からさまざまなアドバイスを受けたのだ。

会社の合理化を進めるうえで、人員の整理・縮小などを進めなければならない。どのように対応すればよいのか・・・・・・。この時ほど、人の評価の難しさを経験したことはなかったという。悩んだ時、齋藤氏が弁護士に「人の評価の本質とは何か」を尋ねると、『主観の重畳の客観化』という言葉が返ってきた。

基準をつくったとしても恣意や思い込みを完全には排除できない。そこでたくさんの主観、つまり他の社員たちがどう思っているかを幾重にも積み重ねていくことで、客観的な人物評価を形成していくのだ。「自分に置き換えて考えてみると、自らを絶えず客観化していないとダメなんだと気づいたんです。自分勝手な価値観で、これでいいんだと思い込むのではなく、周りのメンバーから、組織から、自分はどんな価値がある人材だと思われているのか……。もし価値がないのなら、より高い能力を自ら身につけなくてはならないとわかったのです」

その出発点ともいうべき、今の姿を自ら気づかせることこそ、人事の使命であり、教育の役割なのだ。以来、これが齋藤氏の信念となった。

イノベーションを起こせば人は育つ

人は育てるものではなく、環境さえ整えば自ら育っていくものだと齋藤氏は経験から学んだ。「私が考える人が育つ環境とは、イノベーションが組織の中で起こっている状態のことなんです」

1998 年、齋藤氏は自らの成長と、企業の成長とが同じ軌道を描ける環境を求め、転職の道を選択した。「前職では、共に成長していく夢は破れましたが、事業会社の当事者でありたい。持続的に成長しつづける強い組織づくりに貢献したいと思ったんです」

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