J.H.倶楽部

無断転載ならびに複製を禁じます。なお内容は取材・掲載当時の情報です。

月刊 人材教育 2013年03月号

CASE.3 貝印 人や組織をイノベーティブにする経営企画の挑戦 口コミ的な仕掛けから、 イノベーティブな成果を得る

エンドユーザーとコミュニケーションをとりたいと考える企業は多い。
WEBで企業サイトが流行した時、多くの企業が自社サイトに顧客を集め、
コミュニケーションを図ったが、貝印は、自社製品について書いているユーザーのブログを探し出し、
1件1件コメントを残していくという、逆転の発想で顧客との密な関係づくりに成功した。
発想も素晴らしいが、企業で重要なのは、アイデアを潰さずに実行し、継続すること。その理由を聞いた。


遠藤 加奈子氏
経営企画室 経営管理チーム アシスタントマネージャー



貝印
1908年創業、1954年設立。刃物、キッチンウェア、
ビューティーケア用品、製菓用品などの販売を行う。
従業員数:260名(2012年3月末現在)、資本金:
4億5,000万円、売上高:252億(2012年3月期)

[取材]=石井宏司 [取材・文]=木村美幸 [写真]=本誌編集部 [イラスト、商品写真提供]=貝印

逆転の発想

カミソリや、包丁、爪切りなどの刃物の製造販売で知られる貝印。創業100 年を越す老舗企業だが、斬新な取り組みを行っている。それが、今回紹介する「カイタッチ・プロジェクト」。これは、自社製品について言及しているブログを検索で見つけ出し、その記事にコメントを書き込むことで、ユーザーとの交流を図るというもの。自社サイトにユーザーを呼び込もうとする企業が多い中、まさに逆転の発想といえる。この試みは、口コミで評判になり、数々の雑誌、新聞にも取り上げられた。

2008 年のプロジェクト立ち上げから中心メンバーである経営企画室の遠藤加奈子氏は、当時、広報担当として自社サイトのリニューアルを任されていた。「ちょうどその時期、自社サイトやSNSなどを介してお客様とつながる“企業コミュニティ”が注目の的になっていました」

そこで、貝印でも会員サイトをオープンし、イベント実施などと連動させながら、サイトの充実に取り組んでいた。その中でいつも議論に上がったのは、いかに会員数を増やすかということだった。「“お客様との密なコミュニケーション=会員の囲い込み”という前提で議論をしていたのですが、外部の制作スタッフが、“来てもらうんじゃなくて、会いにいけばいいんじゃないか”と口にされたんです。それが流れが変わるきっかけでした。ただ、他の企業の方でも、そういう発想をされた方はいると思います。問題は、そのアイデアを潰さずに実行できるかどうか。もし、当社が企画立案を外部に丸投げしていたら、“これは通らないだろう”と捨て案になっていたかもしれません。幸い当社では、外部の方と一緒に考えるという体制を取っていたので、そのアイデアを拾うことができました」“ユーザーを見つけて、企業側からコミュニケーションを図る”。発想自体は実にシンプルだが、効果を定量的に計測できないうえ、これまでに前例のない試み。それを実現までこぎつけられたのには、他にもいくつかの幸運なファクターがあった。

1つは、カイタッチ・プロジェクトを始める時期に、広報室が経営企画室に吸収されたこと。社長と直に話をする機会が増えたのだ。「もちろん、運営にさほどコストがかからず、必要なのは“担当者の頑張りだけ”というプロジェクトの性質も、企画を通りやすくしてくれたはずです(笑)」

といっても、最初は不安のほうが大きかった。「何がプラスになるのかは未知数でした。リスクは想像できましたが……。ただ、真摯にやっていれば、悪いものではないだろうという確信はありました。面白そうですし(笑)、引き返せる範囲で小さく始めた、という感じです」

予想外の大きな反響

社員3人が担当者に決まり、ひっそりと誕生したカイタッチ・プロジェクト。“貝印”というキーワードで検索して、ユーザーが書いたブログ記事を見つけることから始まった。「たくさんの記事がヒットし、驚きました。当社の製品をお使いの方が多いことはわかっていましたが、わざわざブログにまで書く方は少ないだろうと思っていましたから、嬉しかったです」

もう1つ意外だったのは、コメントを残されたユーザーの喜び。コメントを希望するブロガーや、カイタッチ・プロジェクト自体についてブログ記事を書く人が次々と現れ始める。ついには、多くの読者を持つ“アルファブロガー”にも取り上げられ、雑誌メディアなども注目。宣伝活動を全くしていないのに、口コミでプロジェクトは広く知られる存在となっていった。「ありがたいことに、当社の製品やプロジェクトに関するブログ記事が急増。その結果、3人ではとても対応し切れなくなり、コメント担当者を増やすことになりました」

こちらはJ.H.倶楽部会員限定記事です。
ご入会後、続きをお読みいただけます。

残り:1,433文字

/

全文:2,865文字

【入会・年会費無料】

J.H.倶楽部は人事の仕事に役立つ特典が満載です!

  1. 総数2000本以上の人事の実務に役立つ記事(※)が閲覧可能
    ※専門誌『Learning Design』(旧『人材教育』)の記事
  2. 新サービス・お役立ち情報(調査報告書・ホワイトペーパーなど)の先行案内
  3. 会員限定セミナーへのご招待/講演動画・配布資料の閲覧
  4. 興味関心に沿った必読記事を、メールマガジンでお知らせ!