J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2010年09月号

TOPIC-①「リフレクション・ラウンドテーブル」創設者フィル・レニール講演会レポート 経験を語り合うコミュニティーがミドルマネジャーの力を引き出す

企業の成長のカギを握るミドルマネジャーたち。その能力開発には、互いに経験を語り合い、対話を繰り返すという“学び合うコミュニティー”を構築することが有効だという。
それが「リフレクション・ラウンドテーブル」だ。2010年6月15日、本プログラムをヘンリー・ミンツバーグ教授とともに創設したフィル・レニール氏が来日。レニール氏による特別講演会と、日産自動車と富士通ビジネスシステムの担当者を交えたパネルディスカッションが行われた。

【講演会】
組織改革の原動力となるマネジメントコミュニティー
フィル・レニール
コーチングアワセルブズ インターナショナル エグゼクティブ・ディレクター/ファウンダー

【パネルディスカッション】
内田 光彦氏
日産自動車
企画人事部 V-Expert シニアスタッフ
飯島 健太郎氏
富士通ビジネスシステム
執行役員常務
フィル・レニール氏
■司会
重光 直之氏
ジェイフィール

取材・文/井上 佐保子 写真/ジェイフィール提供

【講演会】
組織改革の原動力となるマネジメントコミュニティー

フィル・レニールコーチングアワセルブズインターナショナル エグゼクティブ・ディレクター/ファウンダー

フィル・レニール氏がヘンリー・ミンツバーグ教授とともにコーチングアワセルブズインターナショナル社を設立したのは2006年後半のこと。わずか4年弱の間に、「コーチングアワセルブズ」(日本では「リフレクション・ラウンドテーブル」という名称)は世界中の企業や団体に広がっている。

レニール氏はまず、このプログラムが誕生した経緯について話し始めた。

「2003年、私はあるIT企業の技術担当取締役をしていました。ところが、ITバブル崩壊により、私の会社は組織風土がまったく異なる大手企業に買収され、3度にわたる人員整理が行われました。そのうえ、プロジェクトの多くをウクライナへオフショアしなければなりませんでした。

私も同僚も毎朝『会社に行きたくない』と思いながら、腹に鉛を抱えた気分で出社していました。

以前はそうではありませんでした。ワクワクしながら新しい仕事に取り組んだり、チームを鼓舞して目標を達成したり。毎日、達成感があって、充実した日々を送っていたのです。

それが今や、仕事が嫌いになり、毎日職場のデスクにうつむいて座り、言われたことをただやるだけ……。希望を失ったことで、マネジャーらしさも失っていたのです。そこで、母の再婚相手であり、経営学者であるヘンリー・ミンツバーグ教授に相談を持ちかけたのです」

困り果てたレニール氏に対して、義父ミンツバーグは次のように助言したという。

「時間がないなら、毎週定期的にマネジャーたちとテーブルを囲んで、自分たちが経験したこと、苦労していることについて互いに語り合うといいだろう」と。この助言に従ってレニール氏は週に1度、マネジャーたちを集めて75分間のランチミーティングを行うことを決めた。そして、マネジメントスキルを学びながら、自分たちの経験や課題について語り合うことを続けた。

すると、メンバーの能力もモチベーションも業績も短期間で向上。すぐに第2、第3のグループが立ち上がり、社内で一気に広がった。レニール氏はその効果に確信を抱き、この活動を広めるため起業するに至ったのだという。

経験の共有と内省で、マネジャー自身が変わる

「ありのままの経験を、マネジメントのコンセプトに照らし合わせて思慮深く内省することこそ、マネジメントを学ぶ最も有効な手段である(ヘンリー・ミンツバーグ著『MBAが会社を滅ぼす』より)」という考え方が、このプログラムの学習理念となっている。

具体的には、マネジャーたちが、週に1回、75分のミーティングセッションを20~30回重ねる形で行われる。マネジャーたちの内省を手助けするのは、ヘンリー・ミンツバーグ教授など、世界的な経営学者たちが監修し、マネジメントに関する理論、設問、演習が掲載されているテキスト。

マネジャーが相互に経験を共有するだけでなく、良質なコンテンツがあることで、活発な議論を生み出し、「マネジメントの理論」と「現場での実践」を結びつけるというわけだ。

マネジャーたちは、週に1度のセッションで自らの経験を語り合い、内省することで得た新たな洞察と学習を職場に持ち帰って実践し、次のセッションにおいて再び内省する、といったプロセスを繰り返す。それによって職場の課題、組織の課題を改善することができるのだという。

しかし、「『リフレクション・ラウンドテーブル』がめざすものは、職場や組織の問題を解決することだけではない」とレニール氏は語る。

「リフレクション・ラウンドテーブル」は、当初、マネジャー教育が目的で始まったが、次第にそれ以上の意味を持つようになったという。マネジャー同士が、経験を語り合う場を何度も持つことで、状況を変える唯一の方法は自分を変えることであり、他の誰かが変えてくれるものではない、と実感するようになる。すると、変えるべきは、自分自身の考え方や心構えといったマインドセットに他ならない、ということに気づく。実は、これこそがマネジャー育成において重要なポイントなのだという。

単に職場や組織の課題を解決するだけではなく、マネジャー自らが気づきを得て変わろうとし、行動を起こす。このようにマネジャー自身が自己実現のために動き出すプロセスこそが、「リフレクション・ラウンドテーブル」の重要な成果であるとレニール氏は強調する。

異文化間でのコミュニティー構築も可能

今では、多くのグローバル企業がこのプログラムを活用している。

また、異文化間での展開事例もある。キャセイパシフィック航空では、それぞれ異なった文化を持つ6つの地域本部から集められたマネジャー同士でセッションを行ったところ、地域本部間の関係が良好になったという。互いの経験を共有し学び合う中で、マネジャーのコミュニティーが構築され、それにより組織内のコミュニケーションの活性化にもつながるというわけだ。

「とはいえ、自らの経験を同じ組織で働くマネジャー相手に話すのは難しいのでは、と思われる方もいると思います。以前、黙って一言も口を利かないマネジャーがいました。ところが、4、5回目のセッションで突然、『イノベーションが足りないんだ』と、率直な意見を述べるようになったのです。彼は『本音を話せば、辞めさせられないかと思い、怖かった』と話していました。マネジャーの多くは一人称で語るのが苦手です。しかし、同じ空間、時間を共有することで、少しずつ自分の言葉で話すことができるようになるのです」(レニール氏)

レニール氏は「我々のビジョンは、世界中のできる限り多くのマネジャーたちを支援することです」と語り、講演を締めくくった。

【パネルディスカッション】

内田 光彦氏
日産自動車 企画人事部 V-Expert シニアスタッフ
飯島 健太郎氏
富士通ビジネスシステム 執行役員常務
フィル・レニール氏
■司会

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