J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2011年10月号

中原 淳の学びは現場にあり! 第11回 社員500人がボランティアで被災地を支援 炊き出しを通して知る“食の原点”

甚大な被害をもたらした東日本大震災。被災地支援は義捐金の寄付に留まらず、被災地へ社員ボランティアを送り込んでいる企業も多い。社員によるボランティア活動は、企業、そして社員にどんな学びを残すのだろうか。すかいらーくグループによる被災地での社員ボランティアの現場を訪ねた。


中原 淳(Nakahara Jun)
東京大学 大学総合教育研究センター准教授。「大人の学びを科学する」をテーマに研究を行う。共著に『リフレクティブ・マネジャー』(光文社)など多数。
Blog:http://www.nakahara-lab.net/blog/ TwitterID:nakaharajun

取材・文/井上 佐保子 写真/井上 健 イラスト/カワチレン

避難所で安全な食を

「豆腐ハンバーグです。あんをかけてくださいね」「今日は汁物はないので、お椀はいりませんよ」東日本大震災により甚大な津波被害を受けた宮城県気仙沼市。猛暑の続く7月中旬、市内最大の避難所となっている気仙沼市総合体育館で、お盆を手に集まってきた被災者の方々に声をかけながら、おかずを盛り付けているのは、ガストやバーミヤンなど外食チェーンを展開するすかいらーくグループの現役社員たちです。被災者の方々が寝泊まりをする体育館の入口付近の一角に並べられたこの日の献立は「ごはん、豆腐ハンバーグみぞれあん、鮭の塩焼き、カットレタスのサラダ、なすの揚げ浸し、筍土佐煮、松葉漬・梅干し・葉唐辛子など漬物5種、デザートのフルーチェ」。バランスもよく、高齢者にも食べやすいメニューです。仮設住宅の建設が進められてはいるものの、震災から4カ月が経った7月中旬の段階で、避難所に暮らす被災者の数は気仙沼市内で2000名以上。総合体育館では、200名以上が避難所生活を送っています。すかいらーくグループが、この避難所で夕食の炊き出しを始めたのは3月21日のこと。4月11日からは女川町総合運動公園の避難所でも、同様の夕食炊き出しを開始。以来、欠かさず社員ボランティアを送りこみ、支援を続けています。市内に系列店舗は1店もない、という気仙沼、女川で、迅速に体制を整え、社員ボランティアによる継続的な支援ができたのはなぜなのでしょうか。まずは、この支援活動が始まった経緯について、総合企画室の内田智氏にお話を伺いました。

原点である食で社会貢献を

3月11日、内田氏は、仙台工場での生産物流体制の見直し中に、震災に遭遇。幸いなことに、大衡村にある仙台工場の被害は軽微だったうえに、コジェネシステム(自家発電)等を備えていたことで、インフラも確保でき、直後から生産、物流体制に問題はありませんでした。内田氏らは、工場内に緊急対策本部を設置。最初の1週間は、大衡村で炊き出しを行いました。大衡村が落ち着きを取り戻した後、県の対策本部へ出向き、支援を申し出ると、気仙沼での支援の依頼を受けました。早速、気仙沼へ赴き、市役所と打ち合わせ、気仙沼市総合体育館での炊き出しが始まったのが3月21日のことでした。その後、4月11日からは女川での炊き出しボランティアも始まりました。3月中は内田氏らと、仙台工場勤務の10名ほどで支援活動を行っていましたが、4月に入ると、工場も通常稼働を始め、炊き出しボランティアを工場スタッフに頼れなくなってしまいました。そんな時、「我々は食が原点。食を通じて社会貢献できるボランティア活動を行うことは、社員にとって、原点に戻ることができるいい機会となるのではないか」という谷真社長からの発案で、新人研修の一環として新入社員をボランティアに参加させること、社員からもボランティアを募集すること、ボランティア支援の専任スタッフを仙台に送りこむことが決まりました。

被災地を自分の目で知る

参加条件は20歳以上のすかいらーくグループ社員・準社員(パート・アルバイト)であること。有給・公休を使っての参加で、ボランティア保険には入りますが、基本的には自己責任というスタンス。交通費、宿泊費、食費、ボランティア保険などの費用は全て会社支給です。社内にボランティア募集を呼びかけると、すぐに、多数の応募がありました。社員ボランティアは1クール5日間、15名ほどで気仙沼、女川への支援活動を行います。第1クールが出発したのが4月10日。それから37クール(8月17日現在)、約500名の社員が参加しました。体一つで参加できるという気軽さもあってか、リピーターも多いそうです。このように、社員が気軽に参加できる体制を早期に整備できたのは、工場のある大衡村の協力があってのことでした。廃園となった保育園を借り受け、宿泊施設を確保することができたのです。5日間のスケジュールのうち、初日と最終日はすかいらーく本部のある東京都武蔵野市・仙台間の移動と、被災現場を訪れて現状を認識。2~4日目の3日間は、午前中は工場で避難所へ持ち込む食材を調理。午後、被災現場を回って、避難所へ向かい、夕方に配食する、という流れ。早朝から深夜までかなりハードなプログラムです。4月入社の新入社員110名は、数名ずつまとまっての参加でしたが、その他の参加者は年齢も20代から50代まで幅広く、職種や勤務地域も異なる見ず知らずの社員が集まっての共同作業。ですが、「皆さん、『被災地のために何かしたい』という気持ちを強く持っている方たちばかりですので、協力し合って一生懸命やってくれます。寝食を共にし、移動も一緒、調理から被災地の見学、配食を共に経験することで、各班、強い絆ができるようです」(丸氏)気仙沼、女川とも被災現場の見学を入れていることについて、現地で支援活動を統括している丸昭夫氏は、「その惨状を知らなくては、被災者の方々の気持ちに寄り添うことができないからです。皆さん、『テレビでは見ていたが、現実はそれ以上だ』とショックを受けるようです」と、話します。ボランティア参加者の一人は「最近では、被災地に関するニュースも減り、『撤去が進んでいます』と、きれいになったところばかりが報道されているので、『もう大丈夫なのかな』などと思っていました。でも実際に行ってみると、まだまだがれきは残っているし、大変な問題が山積みで、これからお金や人手をかけてやらなくてはならないことがいっぱいあるんだ、ということを肌で感じましたね」と話していました。

被災者のための特別メニュー

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