J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2011年10月号

企業事例4 本人・上司・人事が気づき成長する 昇格時のアセスメント

昇進・昇格の際に活用されることが多いアセスメントセンター法。しかし、その結果を単に人事データとしてとどめてしまっては単なる評価指標というだけで終わってしまう。ローソンでは、アセスメント結果を人事・本人・上司の三者がそれぞれ検討、分析し、それぞれの気づきとその後の学びへと結びつけている。将来的にはアセスメント結果をベースに、個人の力を最大限に活かすタレント・マネジメントを実現したいという同社。その取り組みを取材した。

山上 賢一 ローソン ヒューマンリソースステーション 人事管理 マネジャー

ローソン
1975年ダイエーローソン設立。1979年ローソンジャパンに、1996年ローソンに社名変更。全国でコンビニエンスストアのフランチャイズチェーンを展開。地域の顧客ニーズに合わせた店舗づくりによって、「マチのほっとステーション」をめざす。2011年2月末現在の総店舗数は9853店(国内のみ)。
資本金:585億664万4000円、全店舗売上高:1兆6828億円、社員数:5703名(いずれも2011年2月末現在)

取材・文・写真/石原 野恵

昇格審査の客観性を高めるアセスメント

ローソンの店舗運営の特徴は、地域の顧客ニーズを踏まえた店づくりにある。同社ではこれを実現するため、ここ約10年で数々の改革を実行してきた。2003年より採用している支社制もその一環であり、全国7つの支社に対し一定の決裁権を与え、地域の特色、顧客ニーズに合わせた店舗開発・運営を促進している。人材登用においても同様で、一般職からマネジャー職への昇格に当たっては、支社がそのポストに適切だと考える人材を推薦し、人事と候補者の部門長で面談を行い判断する方法で昇格審査を実施してきた。ところがこの内部評価だけでは、判断基準が明確ではない、公平性に欠けるといった問題が生じてしまっていたという。そこで2010年から導入したのが、管理職としての適性を判断するアセスメント手法、アセスメントセンターである。同社の人事管理マネジャー山上賢一氏は、導入の目的を次のように説明する。「1つめの目的は、評価の客観性を高めることです。上司や人事による内部評価は、どうしても本人と普段接する中で受ける印象が影響してしまう。そこで外部評価を入れることで“世間との目線合わせ”をすべきだと考えました。我々内部の視点からでは見えない点を客観的評価によって明らかにするために、また世間一般の水準から見て、候補者がマネジメントレベルに達しているかを公正に判断するために、アセスメントという外部評価が必要不可欠だと考えたのです」(山上氏、以下同)

事業戦略に沿った人材登用に向けて

アセスメント導入の背景にはもう1点、定期的なアセスメントでマネジャーとしての一定水準を満たした人材をプールし、そこから課長職・部長職に就く人材を登用したいという狙いがある。「実は従来の昇格制度は、基本的にポストありきでした。そのため、候補者は『ポストが空くからそろそろ彼・彼女はどうだろう』といって現場から推薦されてきます。その場合確かに経験や普段の仕事ぶりは良かったとしても、マネジャーとしてのスキルについては十分に評価しきれないというのが実態だったのです」そこでアセスメントによる評価項目に基づいて、マネジャーとしての要件を満たす人材をある程度プールすることができれば、ポストありきではなく、より戦略的な人材配置――すなわち、個人の特性を活かしたタレント・マネジメントが可能になるというのが同社の考えである。「たとえば事業戦略上“マネジメントができる人材”が求められている場合、現場実績だけでは根拠として説得力に欠けます。ですが、アセスメント結果があれば、プール人材の中から、強み・弱み、潜在能力やスキルを事業のどこにどう活かせるのかを、誰の目から見ても明らかな形で示し登用できると考えます」

内外からの評価で実現する高い納得性と人事の評価眼育成

このような狙いをもって導入されたアセスメントだが、「外部の評価者が自社のことをどれだけわかるのか」という社内の声も少なからずあった。一般的にも、ただアセスメントを導入しただけでは現場との乖離が起こりやすい。そこで同社では、外部アセスメントによる評価に加え、ローソンの内部評価を組み合わせて昇格審査を行うこととした。そのプロセスを見てみよう(図表1)。まず、支社からの推薦を受けた昇格候補者は、全員がマネジメントに関するテーマのeラーニングを受講する。当日までに受講修了していなければ、アセスメントの結果にかかわらず審査に通ることはできない。一般職からマネジャー職という、これまでとは異なる立場へ移行するにあたって、学習せざるを得ない環境をつくり、学んでもらうためだ。アセスメント当日には、課題解決スキルを測る個人演習と、対人能力スキルを測るプレゼンテーション、ディスカッションが行われる(図表2)。その過程において、アセスメントの評価を行う専門家である外部アセッサーが、対象者の答案や行動を観察し、評価する。この時、対人演習については外部アセッサーだけではなくローソンの人事も独自の視点で対象者の行動観察をし、スキルを評価する。外部評価と内部評価を同時に行うのである。アセスメントが終了したら、まずは人事が内部評価をつけ、その後アセッサーによる外部評価と比較し、加点・減点を行って総合点を出し合否を判定する。「前述の通り、評価の公平性や世間水準との比較のために、外部評価は非常に重要です。ただその評価結果を単にデータとして受講者に伝えるだけでは十分ではない。本人が深い気づきを得て、成長につなげていくためには、私たちが“ローソンの人事”としての視点をもって評価に関与し、自分たちの言葉で、社員の強みや弱みを伝えられることが大切だと考えています」外部評価と内部評価を組み合わせることによって、昇格審査結果にローソンとしての意思が加わる。社員本人にとっても、周囲にとっても、納得性を高めることができるのだ。さらには、人事担当者にとって自分たちの評価の視点を見直すことにつながるという副次的なメリットが生まれていると山上氏は話す。「当社の人事がつけた評点と、外部アセッサーの評点に差が生じていた場合は、その理由を分析します。外部の専門家の人を見る視点を知ることで、我々の自社社員に対する思い込みを外すこともありますし、気づきと学びの機会になります。だからこそ、私たち見る側も真剣。アセスメントは人事の“人を見る目”を見直す場でもあるのです」

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