J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2011年10月号

企業事例2 自らの現在位置を知り、 自己成長へつなぐアセスメント

東急リバブルでは、階層別教育の一環として、新任の部長職とリーダー層に対してアセスメントを実施している。同社においてアセスメントは、客観的に自分の現在位置を認識し、求められる役割に向けて成長を促すためのツールとして位置づけられる。どのようにアセスメントを活用し、組織の中核を担うマネジャークラスの自己成長を支援しているのだろうか。

今野 一男 経営管理本部 人材開発部長
中川 吉男 経営管理本部 人材開発部 部長 兼 能力開発課長

東急リバブル
1972年設立。地域密着型の「売買仲介」、事業用・投資用不動産の売買仲介を行う「不動産ソリューション」、賃貸関連事業を総合的に扱う「賃貸」、東急グループ各社をはじめ不動産関連企業の物件の受託販売を行う「販売受託」の4つを柱とし、多彩な不動産流通ビジネスを展開する。
資本金:13億9630万円、売上高:557億円(連結、2011年3月期)、従業員数:2275名(連結2442名)(2011年3月末現在)

取材・文・写真/石原 野恵

マネジャーの課題解決力と対人能力を客観的に測る

不動産流通ビジネスを展開する東急リバブル。同社では、新任部長職と新任リーダー職(同社の職能資格制度でいうPM1級)の社員に対して、アセスメントを実施している。同社がこの層を対象としてアセスメントを本格的に研修に取り入れたのは2006年のこと。当時は部長職のみを対象としてアセスメントプログラムを導入した。「アセスメントの特徴は、世間一般の水準と自社の人材スキルを公正に比較できるところにあります。そこで当社でも、部長職の課題解決能力や対人能力が現在どの水準にあるのかを棚卸しておきたいという考えが根底にあり、アセスメントを導入しました。さらに、部長職という新たな役割を付与されるにあたって、今後期待される遂行能力と現時点の自分の能力とが、どの程度一致または乖離しているかを客観的に把握して、自己課題を明確にしてほしいという当時の経営陣の想いもありました」(人材開発部長今野 一男 氏)同社で取り入れているアセスメント手法は、アセスメントセンター方式のものと、個人特性を測る適性テストの2種類。2日間にわたる研修に組み込まれている(図表1)。アセスメントセンター方式とは、マネジメント層に必要な実務能力を評価する手法の1つ。主にシミュレーションを用いて、管理職に求められるコンセプチュアルスキルやヒューマンスキルを測り、管理職適性を診断するものだ。一方、適性テストは、一人ひとりに備わった固有の「持ち味」と、その行動への表れ方を左右する「メンタルヘルス」の両側面から個人の特性を把握するためのもの。同社ではかねてからこの適性テストを採用に活用してきたが、その実績から信頼性が持てるとし、管理職のアセスメントにも導入した。単なる性格診断と異なり、各人の持ち味が長所として表れた場合は“強み”として、短所として表れた場合は“弱み”として客観的に把握することができるのが特徴である。

アセスメントは気づきと自己成長のための“材料”

一般的にアセスメントというと、人事評価のためのツールとしての側面が着目されるが、同社では、アセスメントをあくまで自己評価と自己啓発のきっかけと位置づけている。「アセスメントでは部長としての能力や適性を客観的に評価することができますが、それを昇格の要件とはせず、あくまでも気づきと自己成長のための“材料”としています。というのも、現場で発揮される能力と、アセスメントの場で発見される能力は、一致する部分とそうでない部分があるためです。アセスメントを通して自分の現状や実務の中で気づかなかったような側面に気づいてもらい、それを日々の成長に結びつけていってほしいというのが人材開発部の願いです」(人材開発部 部長兼能力開発課長 中川 吉男 氏)特に導入当初、同社がアセスメント受講の対象を部長職とした理由の1つは、管理職こそ自ら学ぶことが重要だと考えたためだ。現場の状況を把握し、かつ経営的な視点を持って働く“組織の要”である部長職こそが、自らの立ち位置に自覚的になってほしいという狙いがあった。「部長職として成長していくためには、まず自分が今どのポジションにいるのかを認識しなくてはいけません。自分の弱み・強みを知って、次はどこに向かうか、組織にどう貢献していくかを自分で計画することがマネジャー層には要求されます。アセスメントは、自分の現在位置を知るためのものなんです」(中川氏)その際ポイントとなるのが、いかにその気づきを実際の学びと成長へとつなげていくかだ。そこで同社では、アセスメント後に受講者(部長職)に自己成長計画を立ててもらっている。アセスメントの結果のフィードバック後、本人が今後の目標と自己成長計画を策定し、半年後に振り返ってレポートを人材開発部宛に提出するという仕組みである。自己成長計画を立てるためには、アセスメントの結果で指摘された強みや弱みについて、なぜそうなのかを掘り下げて考えるプロセスが必要になる。そして、今後目標とするマネジャー像を描き、それと現在の自分とのギャップを埋めるための具体的な方法を考えていくことになる。また、半年後にレポートを提出してもらうということは、“やらざるを得ない”環境をつくることだ。普段職場に戻ると、どうしても研修での気づきや改善点を忘れて、日々の仕事に忙殺されてしまう。しかし、レポート提出があると、成長のための取り組みをしっかり続けなければならなくなるだろう。このプロセスがあることで、自分の能力開発課題が明らかになる。アセスメントを受けて得た気づきがその場限りに終わらず、職場での成長に結びつくという効果があるのだ。 「自らの気づきを日々の成長につなげていくことができる社員というのは、いろいろな意味で周囲に好影響を与えますし、その姿勢が結果として会社からの評価にもつながっていくと考えています」(今野氏)

仕事の基本・PDCAの重要性に気づく

部長職対象のアセスメントを実施する中で、ある提案が受講者本人たちから上がってくるようになったという。それが、「もっと早い段階でアセスメントを受けたかった」「もっと若い時に気づくことができればよかった」という声だ。これに対して人材開発部は検討を重ね、2010年度から若手の新任リーダークラス(PM1級)に対しても、アセスメントを導入した。

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